初恋ガチ勢 if設定編 こんな出会いもまた一興

あおみなみ

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カフェオレボウル【千弦と聡二】

別れと出会い【聡二】

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未知の年長の男を「おじさま」と呼ぶのは、ちよつとよろしく、しかし男の子は少なくとも「さま」でなく「さん」にしてもらいたい。

大下宇陀児『擬似新年』

◇◇◇

今回の設定

佐倉さくら千弦ちづる 15歳
英明大附属高1年
学校近くの「カフェhinoki」でいつもカフェオレを注文


ひのき聡二そうじ 34歳 
カフェhinokiオーナー 離婚歴あり
杉村すぎむられん」というペンネームで活動する小説家でもある

聡二は千弦の名前の音だけを知っていて、どんな漢字を書くのかが少しだけ気になっており、千弦は聡二の名前は知らず、「心の中だけでも名前を呼びたい」と思っています。つまり、まだそういう段階です。

◇◇◇

「お前はなろうと思えば何にでもなれたはずなのに、どうしてそうなった?」
 
 実際にこんなぶしつけな質問を俺にするやつはいないが、俺は勝手に周囲からそんな声を拾いながら生きてきた。
 名門私立6年制一貫校から、官僚を嫌というほど輩出している大学に入学。そこで千聖ちさとと知り合った。

 俺は大学在学中に、ある文学新人賞で佳作入選した。
 もちろん、それですぐにどうこうできるほど世の中甘くはないが、当時からやっていた家庭教師のバイトと文筆の仕事でそこそこ何とかなりそうと計算し、あとは嫌らしいが実家が裕福なこともあり、就職は考えていなかった。
 というよりも、「作家である」という大義名分を得たことで、就職しなくてもいいと周囲に思わせればいいだろうというのが本音だった。
 特段怠けたいわけではないが、しんどい生き方をしたくなかった。

 対する千聖は、いわゆるキャリア志向だった。
 となると、俺が家事をしながら仕事を続ければ、千聖を支えていけるだろうと気楽に考えてプロポーズし、大学卒業後にすぐ結婚した。
 俺たちは甘い恋人たちというよりも、最も仲のいい友人同士だった。
 息の長い付き合いができるだろう――と信じていた。

◇◇◇

 6月4日。
 俺の28歳の誕生日は5年目の結婚記念日でもあったが、俺はこの日、千聖から「別れたい」と切り出された。

 千聖は、さも俺のためという空気を醸成するように、「あなたはまだ若いから、これからだって何かできると思うわ」と言う。
 わけが分からずおろおろと「どういう意味だ?」と尋ねると、「あなたは私の犠牲になっていたのよね?もう解放してあげる」とも。
 俺は自分で好きこのんでそのときの境遇に身を置いていたつもりだったのだが、千聖にはそれが根本的に理解できていなかったようだ。
 大学や会社の同期、のエリートの皆々様から、俺の立ち位置的なものについて、何か言われたのかもしれない。

「君がそうしたいなら…」

 快諾はしかねるものの、千聖が俺と別れたいと言うなら、その意志を尊重すべきだろうと思い、そう答えた。
 千聖が「別れたいと思うほどの男」と暮らしていくのは地獄だろうが、俺の方は「最初から千聖がいない人生だったんだ」と思い込めばいい。

「あなたっていつもそうね!もういいわ」

 俺は固辞したが、千聖は慰謝料100万円を押し付けるようにして、俺のもとを去った。

◇◇◇

 何のことはない、俺以外に好きな男ができたのだなと知ったのは、その日から2年ほど経った頃、「千聖はアメリカ人の男と再婚し、ハワイで子育て中だ」という話を大学時代の友人から聞いたからだ。というより、どうやら口が滑ったらしい。

「離婚してから、2年も経っているんだ。もうただのよその女だろう?」
「ああ、別に気にしてはいないよ」

 正直言って、本当にと思ってそう答えた。
 別れて2年、一度も会っていないが、そうそう急展開でアメリカ人と知り合い、結婚して子供を産んで…とも考えにくい。
 俺との別れ以前に、その男と何らかの出会いがあったのだろう。お互いあまり干渉しなかったのでよく覚えていないが、そういえば英会話を習いたいだか習うだか言っていたような気もする。
 点と点がつながった気がして、なぜか可笑しくなった。

 俺は30歳になったことだし、少し気分転換したいし…というノリで、カフェを開くことにした。
 実家で幾つか持っている物件の一つを借り、住居もそこに移した。
 マリンスポーツの趣味はないが、海を日常的に見ながらの生活も悪くない。
 本業を圧迫しない程度の働き方なので、営業時間も短く、休みも安定はしないが、コーヒーの評判は悪くない。
 アレンジメニューも幾つか出すようにしたら、近くの英明大学やその附属校の女の子たちもぼちぼち来るようになった。

 そして34歳のとき、たまたま店を訪れた「チヅル」という少女に一目ぼれした。

 単に美少女というだけでなく、何というか、感受性の豊かさがにじみ出ているような、存在自体が初恋の思い出のような、キュンとさせる何かを持っている。目が離せないだと思った。
(そんな形容しかできないとか、お前は本当に作家か?というツッコミはナシでお願いしたい。本気でときめくとと、語彙力が追いつかなくなると俺自身が学んだ)

  しかし相手は英明大の高等部の制服に身を包んでいるから、最年長でも18歳。少なく見積もっても16歳は年齢差があることは明白である。

 恋してしまったから、墓まで持っていく勢いで隠さなければいけない気持ちというのも、残念ながらあるのだ。
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