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玉成編【メグと大輔】
思い切って【メグ】
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実は大倉大輔君は、入学したときからちょっと気になる存在だったんだけど、ラッキーなことに、2学期最初の席替えで隣の席になれた。
ちょっと目つきは悪いんだけど、すっきりとした整った顔立ちで、私と違って数学がよくできて、私と違って運動神経がよくて、私と違って…(以下略)。
まあとにかく、自分にないものをいっぱい持っていそうなところに単純に興味を引かれるし、どんなことにも真剣に取り組む姿もいいなと思う。テニス部の部活も頑張っているみたいだ。
家庭科の授業の刺し子だって、最初はあからさまに嫌々やっている感じだったけれど、一生懸命やっているうちに、徐々に手の動きがスムーズになっていった。
(ちらちら盗み見していたこと、バレていないといいけれど)
今日一番うれしかったのは、大倉君がママのお店を知ってくれていたことだ。
思わず「うちに来ない?」なんて誘っちゃった。
お弁当はシブい感じの曲げわっぱに、煮物とか卵焼き(だし巻き?)とかお魚とか詰めてくるし、学食で食べるときも、和定食が多い。
だからコーヒーより日本茶の人じゃないかと踏んで質問したら、案の定だった。
ここまで言って気付いたけど、私、ちょっとストーカーじみてる?
お弁当は隣の席だから目に入っちゃうし、学食は2人ともあまり使わないので、「たまたま2人とも行った日」がレアだから印象に残るだけ。
日本茶のことも、ママのカフェの話から自然に「そういえばコーヒー好き?」って聞いた結果の答えだったし、私にしてはよくやったと自画自賛したいところだ。
さすがに「突然どうした」って言われたちゃったけど、「どうした?」っていう言い方は、いつもの特徴のある意地悪さ(実はそんなところも好き)が薄くて、ちょっとふんわり優しい感じだった。
不意打ちには弱いのかな?
声をかけてくるときは大体、「おい、桜井」ってちょっと高圧的なんだけど、こちらから声をかけたときの反応は、若干挙動不審気味だったり、勢いが弱かったりするから、多分こっちが「素」なんだろうと踏んでいる。
◇◇◇
刺し子の完成品に「A+」の評価が付いて戻ってきた日、大倉君がいつもの調子で「おい、桜井」って話しかけてきた。
「なあに?」
「今日は部活の休息日だ。お前、都合はどうだ?」
「都合?」
「ママさんの店、来いって言ってたろう?お前は部活とかあるのか?」
私は1学期の割と最初の方で手芸部をやめていたし、図書委員の当番でもなかった。
「ううん、帰るだけだけど…」
「じゃ、案内しろ。今日なら行けるから」
「え、来てくれるの?」
「お前から誘ったんだろう?変なやつだな」
「だよね…」
マジか!
こんなにラッキーが続いて、私、近々死んだりしないよね?
◇◇◇
学校から最寄り駅の玉成学園前駅までは、歩いて6、7分ってところだ。
その駅前の小さな雑居ビルの1階でカフェを経営するママと2人で暮らしている。
ビルの2階が私たちの家で、ほかにもお隣のエスニック雑貨屋さんとか、小さな会社とか入っているんだけど、その管理はおじいちゃん(ママのお父さん)がしているから、私はよく分からない。
雑貨屋さんは時々行って、お小遣いでトンボ玉とかココナッツボタンとか買ったりする。
そういう小さなものを買ったときは、象の神様の絵がプリントされた茶色い封筒みたいな袋に入れてくれるんだけど、これもお気に入り。ママが「ガネーシャだね」って教えてくれた。商売繁盛の神様らしい。
「お前は中等部から入ったんだよな?」
「そうだよ。大倉君は初等部からだっけ」
「ああ。中等部からの枠は少ないのに、お前優秀なんだな」
「運がよかっただけだよ。勉強は一応頑張ったけど」
ママのお店まで、大倉君にいろいろ質問されながら行った。
「初等部から受けようとは思わなかったのか?」
「うちパパがいないから、受験でちょっと不利になるかもって」
「…そうか、ごめん」
というよりも、パパが生きていたとしても、小学校から私立という選択肢があったかどうかは分からない。
パパは私が5歳のときに死んだけれど、普通のサラリーマンで、玉成から駅にして3つ離れた街でアパート暮らしをしていた。時々お出かけぐらいは連れていってもらったけれど、当然そんなにお金持ちだった思い出はない。
玉成に入るときは、ママの方のおじいちゃんに協力してもらった。おじいちゃんは結構お金持ちだし、子供はママ1人だから甘やかしてるみたいに思われがちだけど、ママはお店の家賃もちゃんと払ってるし、入学するときにかかったお金とかも、少しずつ返しているんだよ(偉いっ)。
死んだパパのおじいちゃんとおばあちゃんも、私のことをとてもかわいがってくれるので、何か申し出てくれたらしいけど、さすがにこれはママは断った。「お父さん(おじいちゃん)と違って、返せって言わなそうだから」という理由だけど。
それはさておき。
大倉君が急に黙り込んでしまったので、私は少し慌てた。
「あ、死んだのはもう8年も前だし、ママと2人で楽しくやってるから」
ん?こんなこと言う必要あったか?
「そうか。お前は見かけによらず強いんだな」
何となく会話がちぐはぐな気もするけれど、まあいいや。
ちょっと目つきは悪いんだけど、すっきりとした整った顔立ちで、私と違って数学がよくできて、私と違って運動神経がよくて、私と違って…(以下略)。
まあとにかく、自分にないものをいっぱい持っていそうなところに単純に興味を引かれるし、どんなことにも真剣に取り組む姿もいいなと思う。テニス部の部活も頑張っているみたいだ。
家庭科の授業の刺し子だって、最初はあからさまに嫌々やっている感じだったけれど、一生懸命やっているうちに、徐々に手の動きがスムーズになっていった。
(ちらちら盗み見していたこと、バレていないといいけれど)
今日一番うれしかったのは、大倉君がママのお店を知ってくれていたことだ。
思わず「うちに来ない?」なんて誘っちゃった。
お弁当はシブい感じの曲げわっぱに、煮物とか卵焼き(だし巻き?)とかお魚とか詰めてくるし、学食で食べるときも、和定食が多い。
だからコーヒーより日本茶の人じゃないかと踏んで質問したら、案の定だった。
ここまで言って気付いたけど、私、ちょっとストーカーじみてる?
お弁当は隣の席だから目に入っちゃうし、学食は2人ともあまり使わないので、「たまたま2人とも行った日」がレアだから印象に残るだけ。
日本茶のことも、ママのカフェの話から自然に「そういえばコーヒー好き?」って聞いた結果の答えだったし、私にしてはよくやったと自画自賛したいところだ。
さすがに「突然どうした」って言われたちゃったけど、「どうした?」っていう言い方は、いつもの特徴のある意地悪さ(実はそんなところも好き)が薄くて、ちょっとふんわり優しい感じだった。
不意打ちには弱いのかな?
声をかけてくるときは大体、「おい、桜井」ってちょっと高圧的なんだけど、こちらから声をかけたときの反応は、若干挙動不審気味だったり、勢いが弱かったりするから、多分こっちが「素」なんだろうと踏んでいる。
◇◇◇
刺し子の完成品に「A+」の評価が付いて戻ってきた日、大倉君がいつもの調子で「おい、桜井」って話しかけてきた。
「なあに?」
「今日は部活の休息日だ。お前、都合はどうだ?」
「都合?」
「ママさんの店、来いって言ってたろう?お前は部活とかあるのか?」
私は1学期の割と最初の方で手芸部をやめていたし、図書委員の当番でもなかった。
「ううん、帰るだけだけど…」
「じゃ、案内しろ。今日なら行けるから」
「え、来てくれるの?」
「お前から誘ったんだろう?変なやつだな」
「だよね…」
マジか!
こんなにラッキーが続いて、私、近々死んだりしないよね?
◇◇◇
学校から最寄り駅の玉成学園前駅までは、歩いて6、7分ってところだ。
その駅前の小さな雑居ビルの1階でカフェを経営するママと2人で暮らしている。
ビルの2階が私たちの家で、ほかにもお隣のエスニック雑貨屋さんとか、小さな会社とか入っているんだけど、その管理はおじいちゃん(ママのお父さん)がしているから、私はよく分からない。
雑貨屋さんは時々行って、お小遣いでトンボ玉とかココナッツボタンとか買ったりする。
そういう小さなものを買ったときは、象の神様の絵がプリントされた茶色い封筒みたいな袋に入れてくれるんだけど、これもお気に入り。ママが「ガネーシャだね」って教えてくれた。商売繁盛の神様らしい。
「お前は中等部から入ったんだよな?」
「そうだよ。大倉君は初等部からだっけ」
「ああ。中等部からの枠は少ないのに、お前優秀なんだな」
「運がよかっただけだよ。勉強は一応頑張ったけど」
ママのお店まで、大倉君にいろいろ質問されながら行った。
「初等部から受けようとは思わなかったのか?」
「うちパパがいないから、受験でちょっと不利になるかもって」
「…そうか、ごめん」
というよりも、パパが生きていたとしても、小学校から私立という選択肢があったかどうかは分からない。
パパは私が5歳のときに死んだけれど、普通のサラリーマンで、玉成から駅にして3つ離れた街でアパート暮らしをしていた。時々お出かけぐらいは連れていってもらったけれど、当然そんなにお金持ちだった思い出はない。
玉成に入るときは、ママの方のおじいちゃんに協力してもらった。おじいちゃんは結構お金持ちだし、子供はママ1人だから甘やかしてるみたいに思われがちだけど、ママはお店の家賃もちゃんと払ってるし、入学するときにかかったお金とかも、少しずつ返しているんだよ(偉いっ)。
死んだパパのおじいちゃんとおばあちゃんも、私のことをとてもかわいがってくれるので、何か申し出てくれたらしいけど、さすがにこれはママは断った。「お父さん(おじいちゃん)と違って、返せって言わなそうだから」という理由だけど。
それはさておき。
大倉君が急に黙り込んでしまったので、私は少し慌てた。
「あ、死んだのはもう8年も前だし、ママと2人で楽しくやってるから」
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