初恋ガチ勢 if設定編 こんな出会いもまた一興

あおみなみ

文字の大きさ
24 / 28
玉成編【メグと大輔】

気になる女子【大輔】

しおりを挟む
また料理とか裁縫とかいふものも、たゞ家庭をもつに必要な技術としてだけでなく、趣味としてむかへば無限のたのしさが生じるやうに考へられます。

岸田國士『生活のうるほひ』

◇◇◇

 メグが玉成ぎょくせい学園で大輔の同級生(中等部1年)。お互い苗字呼びです。
 いわゆる両片思い状態です。
『千弦と聡二』の主人公である檜聡二が、メグの母の隠れ恋人として少しだけ登場します。

◇◇◇

 両親の話によると、昔の中学生は、女子は基本的に家庭科、男子は技術科が必修で、イレギュラーな形で女子が電子工作をしたり、男子が料理をしたりという授業があった程度だという。
 俺は正直言うと、その頃の中学生に生まれたかった。その方が面倒がなさそうだ。
 いわゆるジェンダーの観点で問題があるのかもしれないが、あれはあれで俺にはよく理解できないので、黙っておく。

 家庭科でも、座学はそんなに嫌いではない。意外と奥が深いものだと感心してしまうような知識も得られる。
 調理実習はまだいい。そもそも料理というのは覚えておいて損はないので、真面目にやろうという気になる(こともある)し、具体的な調理の作業をしなくても、後片付けやら何やらでお茶を濁せる部分もある。
 しかし、エプロンを縫う、手芸作品を作るといった授業が何のためにあるのか、全く分からない。
 ボタンを付けたり、簡単な繕いものをしたりというのはスキルとしてできた方がいいかもしれないが、既製品が安く安定的に手に入る時代だ。大抵の人間にとっては、生活に必要な技術ではなく、ただの趣味になるのではないか。

 ――などと考えつつ、同じ班の桜井芽久美が鮮やかな手つきで針を運んでいる姿をついつい見てしまう。
 かなり童顔なんだが、伏し目になって口をぎゅっと閉じ、真剣に刺し子をしている姿は、いつもより大人っぽくに見える。
「大倉君、どうかした?」
 俺の視線に気づいたのか、偶然かは分からないが、桜井が目を上げて尋ねてきた。
「あ、いや。器用なもんだなと思って」
「丁寧にやれば難しくないよ。大倉君のだって…うん、上手上手。
 糸もよれてないし、まっすぐだし、性格出てる感じだね」
「そんなもんか?」
 手先が器用で家庭科が得意な(ついでに地味に男子の人気が高い)桜井のお墨付きをもらったということで、同じ班のほかの連中も、「あ、本当だ。うまいわ」と覗き込んできた。
 こういう作業は家庭科室ではなく普通教室で、同じ班同士、机をくっつけて「島」を作って行われる。
 こうすると、進度が遅かったりうまくいっていなかったりする者に対して、進みの早い者が助言や手助けが簡単にできるのだ。
 刺し子の作業はそう難しいものではないが、太くて長い針の扱いに難儀したり、それなりに困る者もいる。
 そんなとき桜井はさりげなくやって見せたり、「頭の脂をちょっとつけると、針の動きがよくなるかも」などと言いながら、頭皮に針の先端をこすりつけたりした。
「メグちゃん、おばあちゃんみたい」と笑われると、「どれどれ、黒飴でもなめるかい?」とおどけていた。

◇◇◇

 そういう授業というのは、具体的に何かのスキルを身につけるというより、情操教育としての色合いが濃いのかもしれない。
 実際「こんなことに何の意味が」と思っていた俺も、完成が近くなると楽しくなってきた。
 何より、桜井の真剣に作業する表情を、正面から盗み見られるのがいい。

 紺地の分厚い布にプリントされた図案を、好みの色でたどるように塗っていくのだが、俺は白い糸で麻の葉模様を縫っていた。
 複雑そうに見えて、実は多くの直線から成り立っているので、案外縫いやすい。
 確かに少し根気は要るが難しいわけではない。
 桜井が縫っているのは青海波せいがいはだ。やはり紺の地が引き立つような白い糸を使っている。
 曲線で構成されているので、傍目にも難しそうだが、布のひきつれもよれもなく、器用に縫いこなしている。

 出来上がるとテーブルセンターになるというが、俺は自分で使うことはないだろう。
 母親に、玄関先の花瓶の下敷きにでも使ってもらえればいい方かな。
 机を直すとき、「桜井は完成したら、自分で使うのか?」と聞いたら、「上手にできたら、ママのお店で使ってもらうかも」と言った。
「ママの――ああ、駅前でカフェをやっているんだったな?」
「え、知ってたの?」

 ちょっとオシャレな雰囲気で、男子中学生がすっと入れる店ではないが、高等部や大学部の女子学生に人気があると聞いたことがある。

◇◇◇

「そういえば大倉君、コーヒー好き?」
 今度は桜井の方から質問してきたが、随分飛躍したな。
「突然どうした。そうだな――コーヒーより日本茶の方が好きだな」
「じゃないかと思った。ね、部活がお休みの日にでもうちに来ない?」
うち?」
「あ、ママの店の方ね」
「…ああ、そっちか。でも、何でだ?」
「うちのママ、コーヒーより日本茶を淹れる方が得意なの」
「は…」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妹の仇 兄の復讐

MisakiNonagase
青春
神奈川県の海に近い住宅街。夏の終わりが、夕焼けに溶けていく季節だった。 僕、孝之は高校三年生、十七歳。妹の茜は十五歳、高校一年生。父と母との四人暮らし。ごく普通の家庭で、僕と茜は、ブラコンやシスコンと騒がれるほどではないが、それなりに仲の良い兄妹だった。茜は少し内気で、真面目な顔をしているが、家族の前ではよく笑う。特に、幼馴染で僕の交際相手でもある佑香が来ると、姉のように慕って明るくなる。 その平穏が、ほんの些細な噂によって、静かに、しかし深く切り裂かれようとは、その時はまだ知らなかった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

処理中です...