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玉成編【メグと大輔】
桜井のママさんとカレシ【大輔】
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「いらっしゃいませ、大倉君。
芽久美がお友達を連れてきたということは――アレかな?」
「うん。「今日のお茶」を2つちょうだい」
「かしこまりました。今日のお茶請けは、手作りのきんつばよ」
「やった!あれ大好き」
桜井のママさんは、授業参観で見かけたことがある。
20年後ぐらいには、桜井もこういうふうになるのかなと思った。
優しそうできれいなお母さんだということで、男子も女子も少しうわさしていたが、男子の一部には、「あんだけ似てるってことは、桜井とケッコンすると、おばさんになってもかわいいままだってことだよな…」とぼそっと言ったやつがおり、謎の緊張が走ったりした。
別に赤の他人でもかわいいことに違いはないだろうが、「ケッコン」なんて言葉出されると、「お、お前。ケ、ケッコンとか言うなよ」と、変に意識してしまう。
「お前、よく学校のやつ連れてくるのか?」
(まさか男子じゃないだろうな…)
「ううん、実はこれが初めてなんだ」
「え?」
「ママ、裏メニューとして日本茶出してるから、
好きそうな人がいたら連れておいでって言われてたの」
「そうなのか…」
そういえば、店のメニューにある緑茶っぽいメニューといえば、「抹茶ラテ」「抹茶ケーキ」くらいで、「日本茶」も「緑茶」もない。裏メニューだったのか。
ママさんは、お茶専門店をのぞいたり取り寄せたりして、いろいろな産地の日本茶を試しているらしい。
「利き茶できるほどではないけど、淹れるのは上手だと思うよ」
というので、楽しみに待った。
そして運ばれてきた、水色が鮮やかな薫り高いお茶と、香ばしいきんつば。
自慢のお茶は言うに及ばないが、きんつばもうまかった。
自家製で焼いたもので、俺が想定してたよりもカリッとしていて、甘さは控えめだ。菓子はあまり得意ではないが、これならもう1個くらい食べられそうだ。
――と、顔に出てしまったのか、「お代わり、お茶もきんつばも大丈夫ですよ」と、カウンターの向こうから話しかけられた。笑顔も桜井に似ている。
◇◇◇
俺たちがお茶を飲みながら話していると、1人の男が店に入ってきて、桜井に目を留め、挨拶してきた。
「やあ、芽久美ちゃん。そちらは彼氏君かな?」
「檜さん、いらっしゃい。ただのクラスメートですよ」
“檜さん”は「千弦さん、こんにちは。日本茶ください」と言いながら、カウンターについた。
「あの人は誰だ?」
と、小さ目の声で聞くと、
「近所に住んでいる大学生の檜さんだよ。ママとお付き合いしているの」
「は?」
「といっても、本人たちはあれで隠してるつもりらしいから、
知らんぷりしているけどね」
目を細め、鼻にしわを寄せ、ちょっと不細工ないたずらっぽい表情を浮かべてそう言った。
こういう顔も新鮮で悪くないな。
それにしても、大学生の男と付き合っている(かなり年上の)女性と、あんなにオトナのゆとりがある女性と付き合っている大学生の男、どっち側から見ても普通ではない。
「なんかすごいな、2人とも」
「そうそう。檜さんって高校まではテニス部だったらしいよ。神奈川の英明大附属で」
「なんだと。強豪じゃないか」
「そうなんだ。知らなかった」
大学生だから〇歳ぐらいか…とざっくりと年齢から計算して、スマホでいろいろ調べてみたら、英明大附属中が全国大会3連覇したときのメンバーに「檜聡二」という名前があったから、多分この人だろう。
「なんか、すごい人みたいだな」
「大学も国立のH大の政経学部だったかな?すごく難しいところだよね」
「そう、だな。文武両道か」
◇◇◇
ひそひそ話していたつもりだったが、小さな店だということと、檜さんが割と地獄耳系の人だったらしく、
「そこ、聞こえるようなひそひそ話は行儀が悪いぞ」
と、背中を向けたまま注意された。
「ごめんなさい。大倉君もテニス部だから、そこから話題が広がって…」
「テニス部?玉成ということは、兵部君のところだな」
そこで檜さんが振り向いて俺の方を見た。
顔をじっくり見てみると、ぱっと目立つ華やかさはないが、清潔感があるし、いかにも頭がよさそうだ。モテるというより、憧れる女子が多そう。
年はだいぶ離れているだろうが、雰囲気も大人っぽいし、確かにママさんとちょっとお似合いかもしれない。
「あ、はい、そうです」
「彼は今現在でもかなり活躍しているが、もっともっと伸びるだろうな」
「はい。俺、去年兵部部長のプレーを見て憧れて、中学に入ってからテニスを始めたんです」
これは本当だ。
兵部さんはまだ2年生だが、「ヨーロッパのテニスが強い国」からの帰国子女で、入学早々当時のレギュラー全員にポイントを全く取らせず勝ち、結果、そのまま部長におさまってしまったような人だ。
派手好きで行動がいちいち豪快だが、ついていきたくなるようなカリスマ性があるし、見込みのあるやつは学年に関係なく試合にも出す。
「お前は筋がいいな。きっと強くなるぞ」って言われたときは、記念日として残しておきたいほどうれしかった。
うまくなる、じゃなくて「強くなる」って言葉もうれしかった。戦力として期待されている気がしたからだ。
英明3連覇のとき、1年からレギュラーだった(年代から考えてそうだろう)人も知っているくらいだから、やっぱり兵部さんもすごい人なんだな。
芽久美がお友達を連れてきたということは――アレかな?」
「うん。「今日のお茶」を2つちょうだい」
「かしこまりました。今日のお茶請けは、手作りのきんつばよ」
「やった!あれ大好き」
桜井のママさんは、授業参観で見かけたことがある。
20年後ぐらいには、桜井もこういうふうになるのかなと思った。
優しそうできれいなお母さんだということで、男子も女子も少しうわさしていたが、男子の一部には、「あんだけ似てるってことは、桜井とケッコンすると、おばさんになってもかわいいままだってことだよな…」とぼそっと言ったやつがおり、謎の緊張が走ったりした。
別に赤の他人でもかわいいことに違いはないだろうが、「ケッコン」なんて言葉出されると、「お、お前。ケ、ケッコンとか言うなよ」と、変に意識してしまう。
「お前、よく学校のやつ連れてくるのか?」
(まさか男子じゃないだろうな…)
「ううん、実はこれが初めてなんだ」
「え?」
「ママ、裏メニューとして日本茶出してるから、
好きそうな人がいたら連れておいでって言われてたの」
「そうなのか…」
そういえば、店のメニューにある緑茶っぽいメニューといえば、「抹茶ラテ」「抹茶ケーキ」くらいで、「日本茶」も「緑茶」もない。裏メニューだったのか。
ママさんは、お茶専門店をのぞいたり取り寄せたりして、いろいろな産地の日本茶を試しているらしい。
「利き茶できるほどではないけど、淹れるのは上手だと思うよ」
というので、楽しみに待った。
そして運ばれてきた、水色が鮮やかな薫り高いお茶と、香ばしいきんつば。
自慢のお茶は言うに及ばないが、きんつばもうまかった。
自家製で焼いたもので、俺が想定してたよりもカリッとしていて、甘さは控えめだ。菓子はあまり得意ではないが、これならもう1個くらい食べられそうだ。
――と、顔に出てしまったのか、「お代わり、お茶もきんつばも大丈夫ですよ」と、カウンターの向こうから話しかけられた。笑顔も桜井に似ている。
◇◇◇
俺たちがお茶を飲みながら話していると、1人の男が店に入ってきて、桜井に目を留め、挨拶してきた。
「やあ、芽久美ちゃん。そちらは彼氏君かな?」
「檜さん、いらっしゃい。ただのクラスメートですよ」
“檜さん”は「千弦さん、こんにちは。日本茶ください」と言いながら、カウンターについた。
「あの人は誰だ?」
と、小さ目の声で聞くと、
「近所に住んでいる大学生の檜さんだよ。ママとお付き合いしているの」
「は?」
「といっても、本人たちはあれで隠してるつもりらしいから、
知らんぷりしているけどね」
目を細め、鼻にしわを寄せ、ちょっと不細工ないたずらっぽい表情を浮かべてそう言った。
こういう顔も新鮮で悪くないな。
それにしても、大学生の男と付き合っている(かなり年上の)女性と、あんなにオトナのゆとりがある女性と付き合っている大学生の男、どっち側から見ても普通ではない。
「なんかすごいな、2人とも」
「そうそう。檜さんって高校まではテニス部だったらしいよ。神奈川の英明大附属で」
「なんだと。強豪じゃないか」
「そうなんだ。知らなかった」
大学生だから〇歳ぐらいか…とざっくりと年齢から計算して、スマホでいろいろ調べてみたら、英明大附属中が全国大会3連覇したときのメンバーに「檜聡二」という名前があったから、多分この人だろう。
「なんか、すごい人みたいだな」
「大学も国立のH大の政経学部だったかな?すごく難しいところだよね」
「そう、だな。文武両道か」
◇◇◇
ひそひそ話していたつもりだったが、小さな店だということと、檜さんが割と地獄耳系の人だったらしく、
「そこ、聞こえるようなひそひそ話は行儀が悪いぞ」
と、背中を向けたまま注意された。
「ごめんなさい。大倉君もテニス部だから、そこから話題が広がって…」
「テニス部?玉成ということは、兵部君のところだな」
そこで檜さんが振り向いて俺の方を見た。
顔をじっくり見てみると、ぱっと目立つ華やかさはないが、清潔感があるし、いかにも頭がよさそうだ。モテるというより、憧れる女子が多そう。
年はだいぶ離れているだろうが、雰囲気も大人っぽいし、確かにママさんとちょっとお似合いかもしれない。
「あ、はい、そうです」
「彼は今現在でもかなり活躍しているが、もっともっと伸びるだろうな」
「はい。俺、去年兵部部長のプレーを見て憧れて、中学に入ってからテニスを始めたんです」
これは本当だ。
兵部さんはまだ2年生だが、「ヨーロッパのテニスが強い国」からの帰国子女で、入学早々当時のレギュラー全員にポイントを全く取らせず勝ち、結果、そのまま部長におさまってしまったような人だ。
派手好きで行動がいちいち豪快だが、ついていきたくなるようなカリスマ性があるし、見込みのあるやつは学年に関係なく試合にも出す。
「お前は筋がいいな。きっと強くなるぞ」って言われたときは、記念日として残しておきたいほどうれしかった。
うまくなる、じゃなくて「強くなる」って言葉もうれしかった。戦力として期待されている気がしたからだ。
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