一輪と花束

あおみなみ

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「女の子は何見ても『かわいい』って言う」っていうけど、そうでもないよ。

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 私は動物、特に猫が大好きだけど、猫のイラストが嫌い。
 猫は絶対、の方がかわいくてきれいなのに、イラストのはアタマ悪そうだったり、毒々しかったり、子供っぽかったりしてどうもね…。
 やたら写実的に描いてあるやつを見ても、「写真でいいじゃん」とか思っちゃうので、いまいち好きになれない。

 かわいいものが嫌いなわけじゃないけど、世間でカワイイとかキレイって言われているもので、興味の持てるものが少ないんだよね。

 「女の子は何見ても『かわいい』って言う」っていうけど、そうでもないよ。
 自分がいいと思わないものは、人が好きなものであっても、「そんなのかわいくないじゃん」って基準で平気でダメ出しするもの。
「そんなのあんたが決めることじゃないじゃん!何様のつもり?」ってみたいに反論したら、キツいとか意地悪とか言われた。
 まあ確かに言葉はきつかったけど、先に言ってきたのは向こうなのに、向こうの肩を持つ人が多くて、「あー、はいはい」って気持ちだった。

 高校に入ってから、教室に貼られてた自己紹介カードで、むちゃくちゃ好みの猫ちゃんを載せてた子がいたので、誰かと思ったら、同じ中学だった男子だった。
 それで思い切って話しかけたら、ほかにもいろいろ写真を見せてくれて、ちょっと仲良くなったけど、突然「HAPPY EASTER」とか言われても、なあ…。

+++

 彼は中学校のとき、いじめられているってわけでもないけど、何となくいじられやすかった。
 すごーく優しくて、女の子みたいに線が細くて、なよっとしている。「オカマ!」とかっていじられることが多かったみたい。
 何を言われても反論もしないでニコニコしてて、バカなのかなと思ったくらいだ。

 だから、ついつい「きしょ」なんて言っちゃったけど、さすがにあれは悪かったなあ…。

 前に、彼と中学で同じクラスで、私と結構仲のいい女子が教えてくれたことがあった。

「あの子、実はすごく強い子なんじゃないかな?」って。
 私はもちろん「えーっ、どこが?」ってすぐに反応しちゃった。

「あの子は自分が言い返すことで、場の空気を悪くしちゃうんじゃないかって考えて、多少嫌なことを言われても、「まあ、いいか」で流しちゃうんだって」
「そんなの…悪口とか言う方が増長ゾーチョーしちゃうだけじゃん」

 そこで友達はちょっと笑った
 何でかなって思ったら、「私もあんたとほぼ同じこと言ったんだよね」だって。
 これ本当、ルイトモってやつだね。

「みんなそういうのが面白いって思ってて、自分が笑われることで仲よしでいられるなら、それでいいってさ」
「仲よしって…」
「からかうやつも、みんないいところがあって、友達だって思ってるみたい」
「アルジャーノンじゃあるまいし」
「正確にはチャーリイ・ゴードンでしょ?」

 そうだった。
 『アルジャーノンに花束を』を貸してくれたのはこの子だったっけ。
 主人公(人間)はチャーリイで、アルジャーノンは白ネズミの名前だった。

 すごく面白いからって押し付けられて、本というか物語は苦手だったけど、読み始めたら止まらなくて(読んでるうちに自分のIQも一時的に上がったみたいに勘違いしながら)一気に読んだんだった。

 よく考えたら、あの子なら『アルジャーノン…』とか読んでそうだ。根拠ないけど、ああいう世界観、好きそうっていうか。
 今度聞いてみようか。
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