3 / 4
FAIRY TALE
しおりを挟む
FAIRY TALE
◇◇◇
ちょっと嫌なことを思い出したので、ここで吐き出しておこう。
私が今までお付き合いしてきた人たちに、破局前に言われた言葉はいつも一緒だった。
「お前はいったい何を考えているか分からなくて、一緒にいて不安になる」
主な原因は分かっている。
突然、「なんで今その話したの?」と思うようなことを言うせいだと思う。
好きな男性と2人でいても、脈絡なく「ほうせきひめ」という童話について思い出して、「知ってる?」と尋ねたりしたこともあった。
それは、美しい心を持った少女の口からは、言葉が宝石になって零れ落ち、醜い心の姉たち(?)の言葉は、ヘビとかカエルとかトカゲとかになって飛び出すという話だった。
今思い出しても変な話だ。
宝石は何でも素晴らしく、見た目のグロい生き物は無価値とか醜悪とかって価値観も納得いかない。
爬虫類モチーフのアクセサリーだってあるっていうのにね。
本当に何が言いたかったんだろう。
小さい頃は言語化ができなかったけれど、少し大人になった今なら印象をこんなふうに話せる。
でも大人になると、そういう話をただ黙って聞いてくれる人というのがあまりいない。
あからさまに興味なさそうにするか、2人でいるときに、何でそんなふざけたことを考えているんだって怒り出すかだ。
「脈絡なく」とは言ったけれど、自分の中では連想ゲームみたいにいろいろつながって、その過程をすっ飛ばして話しただけなんだけど、それを一から説明しろと言う人ほど、「話が長い」「くどい」と言って、まともに聞いてくれない。
それはその人が悪いわけではなく、自分とは合わないだけなんだけど、その基準で考えて、そもそも自分と合う人なんているのかな?と思い始めた頃、和志と知り合った。
◇◇◇
また脈絡なく変な話するけど、『食わず女房』という昔話がある(**下記注意)。
ざっくり言うと、「ある男が、飯は食わないがよく働く女をめとったら、その正体は、頭頂部に大きな口があり、そこから大量の飯を食う化け物でした~」という話だけど、それを知ったのは、女房が飯食わないはずなのに米の減りが早いことを不審に思った男が、仕事に出るふりをして見張っていたためだ。
冷静に考えて、いろいろ変じゃない?
そもそも「ご飯食べないことを条件に結婚したはずなのに、米が減るのはなぜ?」ってのがおかしい。
こんなの別に普通の人間だって「言うだけタダ」で済む話で、世間にごろごろしているじゃん、「結婚する前はこう言ったのに!うそばっかり!」って。
飯食わず働けという経済DV宣言をカマすような男のくせに、よくその化け物嫁を信用したもんだと思う。
化け物嫁も化け物嫁で、人が見ていないのに、わざわざ頭頂部から食べなくたっていいじゃん。化け物っぽさの演出なんだろうけど、人の見ていないところなら、口から食べようが鼻から食べようが頭から食べようが、何の差があるのだろう。
私はそんな話を、和志にしたことがあった。
今までの経験もあり、これを聞いて引く人とは早晩駄目になるだろうという冷めた気持ちがあったが、彼の反応は、今までにないものだった。
「ああ…言われてみると確かに変だ。面白いね」
最初のうちはそういう話について、面白いとかユニークで素敵だとか言う人も、今まで全くいないわけではなかったけれど、何度そういう話をしても、毎回淡々とひょうひょうと「その発想はなかったな」とか、時には「俺が思うに…」と私見を付け加えることもあるのは、和志だけだった。
だから私たちの間では、淡々と延々とそんな会話が続くし、会話をしていないときでも、特に不安になることはなかった。
2人でいて無言状態のとき、「ねえ、今何考えてるの?」って聞かれて、正直に答えても、「別に」って答えても、引かれもしないし、それ以上詮索されることもないんだもん。
こんなに楽で、そして手の内を見せやすい人はほかにはいない。
**
筆者はこの話を祖母から聞き、そのときの記憶でぼんやりと取り上げました。
最近になって気付いたのですが、これ「妖怪・二口女」の話を、なぜかかなりアレンジされて語られていただけなのでは…と推定されます。
◇◇◇
ちょっと嫌なことを思い出したので、ここで吐き出しておこう。
私が今までお付き合いしてきた人たちに、破局前に言われた言葉はいつも一緒だった。
「お前はいったい何を考えているか分からなくて、一緒にいて不安になる」
主な原因は分かっている。
突然、「なんで今その話したの?」と思うようなことを言うせいだと思う。
好きな男性と2人でいても、脈絡なく「ほうせきひめ」という童話について思い出して、「知ってる?」と尋ねたりしたこともあった。
それは、美しい心を持った少女の口からは、言葉が宝石になって零れ落ち、醜い心の姉たち(?)の言葉は、ヘビとかカエルとかトカゲとかになって飛び出すという話だった。
今思い出しても変な話だ。
宝石は何でも素晴らしく、見た目のグロい生き物は無価値とか醜悪とかって価値観も納得いかない。
爬虫類モチーフのアクセサリーだってあるっていうのにね。
本当に何が言いたかったんだろう。
小さい頃は言語化ができなかったけれど、少し大人になった今なら印象をこんなふうに話せる。
でも大人になると、そういう話をただ黙って聞いてくれる人というのがあまりいない。
あからさまに興味なさそうにするか、2人でいるときに、何でそんなふざけたことを考えているんだって怒り出すかだ。
「脈絡なく」とは言ったけれど、自分の中では連想ゲームみたいにいろいろつながって、その過程をすっ飛ばして話しただけなんだけど、それを一から説明しろと言う人ほど、「話が長い」「くどい」と言って、まともに聞いてくれない。
それはその人が悪いわけではなく、自分とは合わないだけなんだけど、その基準で考えて、そもそも自分と合う人なんているのかな?と思い始めた頃、和志と知り合った。
◇◇◇
また脈絡なく変な話するけど、『食わず女房』という昔話がある(**下記注意)。
ざっくり言うと、「ある男が、飯は食わないがよく働く女をめとったら、その正体は、頭頂部に大きな口があり、そこから大量の飯を食う化け物でした~」という話だけど、それを知ったのは、女房が飯食わないはずなのに米の減りが早いことを不審に思った男が、仕事に出るふりをして見張っていたためだ。
冷静に考えて、いろいろ変じゃない?
そもそも「ご飯食べないことを条件に結婚したはずなのに、米が減るのはなぜ?」ってのがおかしい。
こんなの別に普通の人間だって「言うだけタダ」で済む話で、世間にごろごろしているじゃん、「結婚する前はこう言ったのに!うそばっかり!」って。
飯食わず働けという経済DV宣言をカマすような男のくせに、よくその化け物嫁を信用したもんだと思う。
化け物嫁も化け物嫁で、人が見ていないのに、わざわざ頭頂部から食べなくたっていいじゃん。化け物っぽさの演出なんだろうけど、人の見ていないところなら、口から食べようが鼻から食べようが頭から食べようが、何の差があるのだろう。
私はそんな話を、和志にしたことがあった。
今までの経験もあり、これを聞いて引く人とは早晩駄目になるだろうという冷めた気持ちがあったが、彼の反応は、今までにないものだった。
「ああ…言われてみると確かに変だ。面白いね」
最初のうちはそういう話について、面白いとかユニークで素敵だとか言う人も、今まで全くいないわけではなかったけれど、何度そういう話をしても、毎回淡々とひょうひょうと「その発想はなかったな」とか、時には「俺が思うに…」と私見を付け加えることもあるのは、和志だけだった。
だから私たちの間では、淡々と延々とそんな会話が続くし、会話をしていないときでも、特に不安になることはなかった。
2人でいて無言状態のとき、「ねえ、今何考えてるの?」って聞かれて、正直に答えても、「別に」って答えても、引かれもしないし、それ以上詮索されることもないんだもん。
こんなに楽で、そして手の内を見せやすい人はほかにはいない。
**
筆者はこの話を祖母から聞き、そのときの記憶でぼんやりと取り上げました。
最近になって気付いたのですが、これ「妖怪・二口女」の話を、なぜかかなりアレンジされて語られていただけなのでは…と推定されます。
1
あなたにおすすめの小説
〖完結〗終着駅のパッセージ
苺迷音
恋愛
分厚い眼鏡と、ひっつめた髪を毛糸帽で覆う女性・カレン。
彼女はとある想いを胸に北へ向かう蒸気機関車に乗っていた。
王都から離れてゆく車窓を眺めながら、カレンは振り返る。
夫と婚姻してから三年という長い時間。
その間に夫が帰宅したのは数えるほどだった。
※ご覧いただけましたらとても嬉しいです。よろしくお願いいたします。
離れて後悔するのは、あなたの方
翠月るるな
恋愛
順風満帆だったはずの凛子の人生。それがいつしか狂い始める──緩やかに、転がるように。
岡本財閥が経営する会社グループのひとつに、 医療に長けた会社があった。その中の遺伝子調査部門でコウノトリプロジェクトが始まる。
財閥の跡取り息子である岡本省吾は、いち早くそのプロジェクトを利用し、もっとも遺伝的に相性の良いとされた日和凛子を妻とした。
だが、その結婚は彼女にとって良い選択ではなかった。
結婚してから粗雑な扱いを受ける凛子。夫の省吾に見え隠れする女の気配……相手が分かっていながら、我慢する日々。
しかしそれは、一つの計画の為だった。
そう。彼女が残した最後の贈り物(プレゼント)、それを知った省吾の後悔とは──とあるプロジェクトに翻弄された人々のストーリー。
least common multiple
優未
恋愛
高校卒業から10年を記念した同窓会に参加した詩織。一緒に参加予定だった友人の欠席により1人で過ごしていると、高校時代の人気者である久田に声をかけられて―――。マイペースな頑固者と本命には及び腰の人気者のお話。
うっかり結婚を承諾したら……。
翠月るるな
恋愛
「結婚しようよ」
なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。
相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。
白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。
実際は思った感じではなくて──?
雪の日に
藤谷 郁
恋愛
私には許嫁がいる。
親同士の約束で、生まれる前から決まっていた結婚相手。
大学卒業を控えた冬。
私は彼に会うため、雪の金沢へと旅立つ――
※作品の初出は2014年(平成26年)。鉄道・駅などの描写は当時のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる