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サブバッグ
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緑と黄色のマドラスチェックがすっごくかわいい。
横長で、たっぷりマチがあって、ファスナーが大きく開くから、物が出し入れしやすい。
黄色い合成皮革の長目の取っ手が「H」の字についていて、表面にはポケットがついてるけど、ここはあんま物が入らない。でも、もし私がバス通学とかだったら、定期券を入れていたと思う。
こういう感じのバッグを、高校に入学するときに買ってもらった。サブバッグとして使うといいよってことらしい。
時々行く洋服屋さんで1,000円だったから、お母さんはひとえにその値段につられたんだと思う。
「これ、ホモサピエンスの商品とかと同じ工場でつくられたものなんですよ」
今思い出しても、お店の人のこの言葉は意味が分からない。
通称“ホモサピ”は10代に人気のカジュアルブランドで、うちのお姉ちゃんも高校生の頃、洋服とか小物とか持っていた。
大学に入ってからは、「子供っぽいからもういいや」って、状態のいいものは私にくれたりするようになったけど。
確かにゴトーイツカドーとかテイオーとかで安く売っている服よりはおしゃれで値段もそこそこ高いけど、別にそこまで高級品ってわけでもない。
それに、前に縫製工場の仕事をテレビで紹介してるの見たことあるけど、ああいうところっていろんな有名な人気DCブランドはもちろん、いろんな会社から仕事を請けているんだって言ってた。
ブランドものでも何でもないそのバッグだって、「同じ工場で」つくられていてもおかしくない。
賃金の安い外国じゃなくて、国内工場でつくられたものだから高級品ですよってこと?よく分かんない。
よく分かんないけど、そのバッグがかわいくて物がいっぱい入ることは間違いない。しかも1,000円だよ。
◇◇◇
サブバッグを肩に掛けて、学生カバンを手に持って――というスタイルで、私の高校生活がスタートした。
それにしても、この学生カバンってやつ、本当に必要なのかな。
私が買ってもらったのは本革ではないからまだマシだけど、でも中に何も入れなくてもけっこう重い。
ノート、教科書、副教材、いろいろ入れたらもうパンパンだ。
教室とかに教科書類を置いて帰る、いわゆる「置き勉」はいちおう禁止されてるけど、バカ正直に持ち歩こうと思ったら、入り切らないことさえある。
教科書とかでパツパツになっているカバンは、「ブタ」とか言ってバカにされるから、ぺっしゃんこにつぶして、空っぽのまま小脇に抱えているだけの人さえいるんだもん。
規則だから一応持っているって感じだけど、そういうバッグは当然、生徒指導の先生にめちゃくちゃ叱られる。
とにかく。サブバッグの方がよほど物が入るし、こんな無駄なものはしないと思う。
と言いつつ――小学校のランドセル、中学校のズック布でできたショルダーバッグ(たすき掛けにするから、胸と胸の間に食い込む(**)のがちょっと嫌)と違い、いかにも「コーコーセー!」って感じがする学生カバンには、実は憧れていた(実際に持つまではね)。
基本的に優等生というか、校則や約束事に自分なりのアレンジを加えて解釈するのがメンドウくさいタイプの私は、重い学生カバンに重い教科書をたっぷり詰め、お気に入りのサブバッグに「その他いろいろ」を入れて高校生活を続け、気付けば3年生になった。
**
この当時は、いわゆるπ/という言葉がまだありませんでした。
概念があったかどうかは不明です。
**
横長で、たっぷりマチがあって、ファスナーが大きく開くから、物が出し入れしやすい。
黄色い合成皮革の長目の取っ手が「H」の字についていて、表面にはポケットがついてるけど、ここはあんま物が入らない。でも、もし私がバス通学とかだったら、定期券を入れていたと思う。
こういう感じのバッグを、高校に入学するときに買ってもらった。サブバッグとして使うといいよってことらしい。
時々行く洋服屋さんで1,000円だったから、お母さんはひとえにその値段につられたんだと思う。
「これ、ホモサピエンスの商品とかと同じ工場でつくられたものなんですよ」
今思い出しても、お店の人のこの言葉は意味が分からない。
通称“ホモサピ”は10代に人気のカジュアルブランドで、うちのお姉ちゃんも高校生の頃、洋服とか小物とか持っていた。
大学に入ってからは、「子供っぽいからもういいや」って、状態のいいものは私にくれたりするようになったけど。
確かにゴトーイツカドーとかテイオーとかで安く売っている服よりはおしゃれで値段もそこそこ高いけど、別にそこまで高級品ってわけでもない。
それに、前に縫製工場の仕事をテレビで紹介してるの見たことあるけど、ああいうところっていろんな有名な人気DCブランドはもちろん、いろんな会社から仕事を請けているんだって言ってた。
ブランドものでも何でもないそのバッグだって、「同じ工場で」つくられていてもおかしくない。
賃金の安い外国じゃなくて、国内工場でつくられたものだから高級品ですよってこと?よく分かんない。
よく分かんないけど、そのバッグがかわいくて物がいっぱい入ることは間違いない。しかも1,000円だよ。
◇◇◇
サブバッグを肩に掛けて、学生カバンを手に持って――というスタイルで、私の高校生活がスタートした。
それにしても、この学生カバンってやつ、本当に必要なのかな。
私が買ってもらったのは本革ではないからまだマシだけど、でも中に何も入れなくてもけっこう重い。
ノート、教科書、副教材、いろいろ入れたらもうパンパンだ。
教室とかに教科書類を置いて帰る、いわゆる「置き勉」はいちおう禁止されてるけど、バカ正直に持ち歩こうと思ったら、入り切らないことさえある。
教科書とかでパツパツになっているカバンは、「ブタ」とか言ってバカにされるから、ぺっしゃんこにつぶして、空っぽのまま小脇に抱えているだけの人さえいるんだもん。
規則だから一応持っているって感じだけど、そういうバッグは当然、生徒指導の先生にめちゃくちゃ叱られる。
とにかく。サブバッグの方がよほど物が入るし、こんな無駄なものはしないと思う。
と言いつつ――小学校のランドセル、中学校のズック布でできたショルダーバッグ(たすき掛けにするから、胸と胸の間に食い込む(**)のがちょっと嫌)と違い、いかにも「コーコーセー!」って感じがする学生カバンには、実は憧れていた(実際に持つまではね)。
基本的に優等生というか、校則や約束事に自分なりのアレンジを加えて解釈するのがメンドウくさいタイプの私は、重い学生カバンに重い教科書をたっぷり詰め、お気に入りのサブバッグに「その他いろいろ」を入れて高校生活を続け、気付けば3年生になった。
**
この当時は、いわゆるπ/という言葉がまだありませんでした。
概念があったかどうかは不明です。
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