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ピンクのコスモス
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私は「彼」と別れた実感がまるで湧かないまま、無気力に、だけど粛々と日々を過ごしていた。
ちゃんと仕事にも行っているし、そのためには身ぎれいにしなきゃいけないし、ごはんも食べなきゃ力が入らないから、いつものように炊事もする。
合いカギを返されたあの日から1週間目、お腹が空いて目が覚めた。
朝ごはんになりそうなものの用意が何もない。
もそもそ起きて、洗顔と着替えだけして、コンビニに買いにいくことにした。
***
少し暑さが残っていた9月のあの日、白いコスモスが咲いていたあの場所――からは少しずれていたけれど、薄紅色のコスモスが、ひとりで咲いていた。
放射冷却のせいで寒々とした朝、少し震えているように見える。
一輪挿しの周りに落ちた花びらたちを思い出し、今度はやり過ごした。
食パンとゆで卵を買って折り返したとき、気になってもう一度コスモスの前に立ち、上からじっくり見た。
「かわいくて、きれいで、けなげな姿に感動する自分」に、少しだけ安心した。
ああ、私にはまだ、人の心的なものが残っていたらしい。
「彼」とお別れしてから初めての涙がこみ上げてきた。
小学生の集団登校が通りかかったとき、心なしかじろじろ見られた気がして、ちょっと恥ずかしい。
でも、ぴんと背筋を伸ばして立っているためには、そんな自意識も大事だったりするのだ。
【了】
ちゃんと仕事にも行っているし、そのためには身ぎれいにしなきゃいけないし、ごはんも食べなきゃ力が入らないから、いつものように炊事もする。
合いカギを返されたあの日から1週間目、お腹が空いて目が覚めた。
朝ごはんになりそうなものの用意が何もない。
もそもそ起きて、洗顔と着替えだけして、コンビニに買いにいくことにした。
***
少し暑さが残っていた9月のあの日、白いコスモスが咲いていたあの場所――からは少しずれていたけれど、薄紅色のコスモスが、ひとりで咲いていた。
放射冷却のせいで寒々とした朝、少し震えているように見える。
一輪挿しの周りに落ちた花びらたちを思い出し、今度はやり過ごした。
食パンとゆで卵を買って折り返したとき、気になってもう一度コスモスの前に立ち、上からじっくり見た。
「かわいくて、きれいで、けなげな姿に感動する自分」に、少しだけ安心した。
ああ、私にはまだ、人の心的なものが残っていたらしい。
「彼」とお別れしてから初めての涙がこみ上げてきた。
小学生の集団登校が通りかかったとき、心なしかじろじろ見られた気がして、ちょっと恥ずかしい。
でも、ぴんと背筋を伸ばして立っているためには、そんな自意識も大事だったりするのだ。
【了】
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