町のユキコと田舎のユキコ

あおみなみ

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告白【1】

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 若い者が集まって酒を飲めば、他愛もない話でもそこそこ盛り上がる。

 授業のこと、サークルやバイト先の先輩のこと、一人暮らしや寮生活の悩み、自宅生なら「親がうるさくて」的な、ちょっとした粋がりを含んだ愚痴など、話題はいくらでもある。

 インターネットもスマホもない時代だが、テレビがまだ元気だったので、ドラマやバラエティ、時にはちょっと癖の強いニュースキャスターの物まねなどを交え、げらげら笑いながら元気に飲み食いした。

***

 ある日の二次会が、学校のすぐ近くに住んでいる英輔えいすけの家で行われた。
 7.5畳のフローリングの部屋で、ベッドと机は別の3畳のスぺースに置かれているとのことで、6人集まってもまあまあのゆとりがあった。

「けっこう広くていい部屋だねえ」
「うん。割と古いんだけど、いい感じだよ」

 ポテトチップスやナッツなどの乾きモノを肴に、おのおのがビールや缶チューハイを傾けながら、ひとしきり自分の住居事情を話した後、会話が途切れたスキを突くように、映画好きのさとしがこんなことを言った。

「あ、そういえばさ。こないだ深夜番組で見たアメリカ映画の中でさ、
自分の今までの人生の中で一番の秘密を打ち明け合うってシーンが出てきたんだよ」

「あー、そういうのあるよね。私も見た。たしか……」

 こういうとき、人の話に真っ先に相槌をうつ可南美かなみが真っ先に食いついたが、具体的な映画のタイトルも言っていたので、調子を合わせただけではないようだ。

 由樹子にはピンと来ない話だったので、「ふうん?」と聞きながら、(面白そうだけど、秘密、ねえ……)と、自分自身が告白するイメージは一つも湧かなかった。

 居酒屋と違って、周囲にほかの客はいない。いわばだけの空間だ。
 そんな気楽さも手伝って、慧が、くだんのゲームをやってみないかと提案した。

 「え、秘密って――しゃべっちゃったら秘密じゃなくなるじゃん」と、佐恵がもっともなことを言った。

「だから、ここだけの話、ってことだよ、なあ?」

 文也ふみやが助け船を出すように、慧に尋ねた。

「そういうこと。俺たち以外の誰かに言いふらさなきゃいいだろ?」

 映画好きの慧も、ファンタジー好きの可南美も、この十数年後の大ヒット映画(※下記注)で「秘密というのは、みんなが知っていること」という名台詞が飛び出そうとは、知る由もなかった。



『ハリー・ポッターと賢者の石』
映画は2001年公開。

「地下室でクィレル教授と君の間に起きた出来事は秘密じゃ。
つまり、秘密ということは、皆が知っとる。」
What happened down in the dungeons between you and professor Quirrell is a complete secret.
So, naturally, the whole school knows.

という、ダンブルドア校長のセリフ


***

 さて、秘密といっても、何か複雑な生い立ちだとか、身体的な特徴とか、実はある食べ物が(アレルギー以外の理由で)どうしても食べられないが隠しているとか、重大なものから比較的軽いものまでさまざまだ。
 当然誰も「絶対に知られたくないトップシークレット」は話すはずもない。

「俺実は、小学生のときに軽いノリで万引きして、近所の駄菓子屋つぶしたことあるんだけど……そういう話?」

 英輔が酔っぱらっていたのか、唐突にそんなことを言いだした。

「それはさすがにダメじゃん!どんだけったのよ!」

 驚いた佐恵が絶叫に近い声を出したので、周囲がさすがに「しーっ」というしぐさをした。

「いや、俺が万引きしたのはせいぜい1回か2回だったんだけどさ」
「それじゃ倒産まではいかないんじゃない?」
「うん。だから間接的にっつうかね、同じクラスとか学年とかの連中に、何時ごろがねらい目とか、この商品は盗りやすいとかって情報出したわけよ。俺そこのばあちゃんと仲良しで、買い物しなくてもよく行っていたから」

 そして面白半分というか冗談半分で、仲のいい友達にいろいろ教えていたら、本当に万引きをする小学生が増え、結果的に経営が立ち行かなくなってしまった、ということらしい。

「もちろん、子供心にも、取り返しのつかないことしちゃったなあって思ったけど、ばあちゃん体の調子崩してたから、どのみち店たたもうかって考えてたみたいだし――って、精一杯自己正当化してきた感じ」

 英輔はそう言うと、うつむいて、「ばあちゃん……ごめんな……」と、少しあやしい呂律ろれつでつぶやいた。
 いい話ふうに持っていくには罪深い話だが、なぜかその場の空気はしんみりとしたものだった。

 そこで佐恵が手を挙げた。

「じゃ次、私いいかな?」
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