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第34章 「自分がいいと思うこと」を提案した【メグと大輔】
カレシらしく【大輔】
しおりを挟む去年までのバレンタインデーは、チョコレートを断るのに一苦労だった。
好きでもない女から軽々に受け取れないし、甘いものも好きじゃない。
俺が女だったら、最初に断られたら次の年からは贈ろうとも思わないが、初等部の高学年あたりから毎年渡そうとしてくる女子が若干名いて、少々参っている。
しかし今年はちょうど当日に、メグとの約束を取りつけた。
「私のほうから行きます」と言われたので、学校の最寄り駅を指定した。
ここなら駅舎の規模がそう大きくない上、メグの家からは乗り換え1回で来られるからだ。
一度はメグから「もう会えない」と言われた苦い思い出のあるエリアだが、今はこちらで会うときは大体ここに来てもらっている。
嫌な記憶は楽しいコトで上書きするに限る。
メグはいつものようにかわいいワンピースと暖かそうな長いカーディガンを着て、ショートブーツを履き、首元にはちまっとマフラーを巻いていた。
女の服装はよく分からないが、最近、似たような格好をしているほかの女に目が行き、「あれだったらメグの方がずっと似合うな…」などと考えてしまう。
「待ったか?」
「いえ、今来たところです」
このやりとりもいつも通り。
メグは多分、15分前には着いていたろう。かくいう俺も10分早く着いたのだが。
◇◇◇
「今日はどうしような。結構時間あるから、映画でも見るか?」
「それなんですけど…」
「ん?」
「私、大輔さんに何をプレゼントしたらいいか分からなくて……。あ、サブレは焼いたんですけど」
そう言いながら、犬の写真がプリントされたモノクロのパッケージを渡しながら、とんでもないことを言い出した。
「だから、体で払おうかと」
「あ゛!?お前はいったい何言い出すんだ?」
「あの………今日は大輔さんのしたいこと、何でも付き合います。遊園地の絶叫マシンとかでも……まあ何とか」
そんなヒラッヒラの服着てきて、びくびくしながら、本当に何を言い出すんだ。
危なっかしいが、本当に本当に本当に、かわいいやつだな。
◇◇◇
「そうか。じゃ、本当に文句言うなよ?」
「え――あ、はい」
顔つきが変わったな。何を言われると思っているんだろう?
ちょっと意地悪したい気もするが、まあそこは抑えて。
「まず、少し早いが昼飯だ。店が混む前に大通りのファミレスで和定食を食おう」
「あ、いいですね」
「その後、デパートの美術館に行こう。エッシャーの展覧会をやっている」
「やっぱり。大輔さんなら見たいって言うと思っていました」
「で、どこかで茶を飲もう。今日は天気はいいが所詮は2月だ。公園とかじゃなくカフェでな」
「はい」
メグは神妙な顔で聞きながら、なぜか指を折っている。何を数えているんだ?
「あとはそうだな…スポーツショップでも付き合ってもらうか。靴やグリップテープを見たい」
「はい。靴は今日は無理だと思いますけど……。グリップテープって幾らぐらいするんですか?」
「ん?1,000円するかしないかだ。それより靴は無理ってどういう意味だ?」
「そのぉ、やっぱり高そうだから。今日はちょっと持ち合わせが……」
「え?ああ――そういうことか」
俺はおかしくなって、はばからずに大声で笑った。
「最初に言うべきことを忘れていた。今日は“割り勘禁止”だ。文句言わずに全部俺に出させること」
「そんな…それじゃプレゼントになりません」
「お前が俺に何を渡してこようと、俺は多分喜んで受け取ったし、今日はプレゼント関係なく、最初からそうするつもりだった。バレンタインデーぐらい、カレシらしいことさせてくれよ
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