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第36章 二度目の告白【千弦と聡二 交際編】
accept【千弦】
しおりを挟む11時2分に家の呼び鈴が鳴った。
「いらっしゃい、聡二君。改めて、合格おめでとう」
「…ありがとうございます。お邪魔します」
いつもよりも聡二君が気を張っているのが分かる。
背の高い彼は、私と接するとき、いつも顔を下に向ける格好になるが、その目線が私の顔から微妙にずれていた。
◇◇◇
リビングでお茶を出すと、一口すすり、聡二君は言った。
「俺は千弦さんのことが好きです。付き合ってください」
こういうセリフは今までにも言われたことがないわけではない。
でも、それを受け入れるのは初めてのことだ。
ストレートに響いてくる。
「ありがとう。私も聡二君のことが好きです。私でよければ…こちらこそ、お願いします」
私としては精いっぱい誠実に答えたつもりなんだけれど、答えを聞いて、なぜか聡二君は怒ったような顔をした。
席を立ち、私の座っている長いソファの方に歩み寄ると、ぎゅっと抱き締められ、そのまま押し倒された。
「俺の言う「好き」は、恋人同士になりたいという意味です。お分かりですよね?」
遠い昔、ほぼ同じようなことを義兄にされたことを思い出した。
(おいおい、こんなときにそれ思い出しちゃダメでしょ!)
聡二君のまなざしが熱っぽく、少し怖いくらいだ。
「もちろんよ。無駄に年は取っていないから…」
言いかけると、聡二君の薄い唇が私の唇に重なった。
「こんなときまで俺は子供だって自覚させたいんですか?千弦さんは意地悪ですね」
「そんなつもりじゃ…」
「この先は、俺があなたに意地悪する番です」
◇◇◇
「ずっと君とこうしたかった」
大昔見た映画(**下記注)で、友達関係から発展し、好きだった女性とベッドを共にした男性が、そんなセリフを言っていた。
当時の私は今は亡き夫に片思い中だったけれど、初体験がこんなだったらなと憧れていた。
肝心の初体験は、そう思ったようにはならなかったけれど、彼に直接触れられただけで、とても満たされた気持ちになった。
今、一糸まとわぬ姿で目の前にいる聡二君は、とても子供扱いできるような雰囲気ではない。
細いが幹のしっかりしたしなやかな胴体と、むき出しになった長い手足で、私をくるっと包んでしまう。
適度な熱と、清潔な香り。大人びた子供ではなく、若い大人の男なのだ。
私はいい年をして、彼の色気にくらくらしてしまった。
「私も、なんだか夢がかなったみたい」
**
このセリフは結構いろいろな映画で聞く(字幕で目にする)と思うのですが、想定した映画は1994年制作のラブコメディ『リアリティ・バイツ』です。ウィノナ・ライダー、イーサン・ホークという、当時の青春映画の定番のような人気キャスト――の割に、そんなに話題にならなかった記憶もあります。
この映画でウィノナの友人を演じたジャニーン・ガラファローが好きなんですが、彼女が主演のラブコメ『好きと言えなくて The Truth About Cats & Dogs』(1996)もお勧めです。
2000年にフジテレビで制作されたドラマ『天気予報の恋人』が、この映画とプロットが酷似していたようですが、下敷きになっているとかリメイクである的な公式アナウンスがあったかどうかは不明。
(今は分かりませんが)当時のいわゆるトレンディドラマって、そもそもそういうの多かったですけどね。
その映画(ドラマ)のトピックスになる事件について、大勢の人間が全く同じ紙の新聞を読んで情報を共有しているみたいなシーンとか。←この書き方で「あーっ!」とピンと来た方は、当時私と同じモヤモヤを抱えていたはず!と信じています。
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