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第42章 愚者の贈り物【千弦と聡二 交際編】
千弦の思いつき
しおりを挟むたしか芽久美がまだ小学生に上がる前だったと思うが、友人の引っ越しパーティー的なものに招かれ、ビンゴ大会でミシンを当てたことがある。
要するに不用品を体よく押し付けられただけだったが、手芸は好きでも裁縫はさほどでもなかった私は、正直持て余すなあと思っていた。
しかし、人からもらったものほど使い倒さないと気が済まない貧乏性がいい方に作用したようで、適当な布をはぎ合わせて風呂敷的なものを作ってみたら、意外と悪くなかった。スペインの某カジュアルブランドのごときポップさである(自画自賛しすぎ)。
たたんでバッグに入れておけば、不意のときには端を結んで買い物袋としても使える。スーパーで買い物をしていたとき、「それかわいい!どこで買ったんですか?」と、近所のうどん屋さんのアルバイトの女の子が声をかけてきたので、もう1枚似たようなのを作ってプレゼントしたこともあった。
そんな私が、たまたまネットで黒蝶貝のシャツボタン、なんてものを見つけてしまった。
そんでもって「まぶしい白いシャツにひときわ映える」うんぬんかんぬんという惹句に踊らされてしまった。
先日の聡二君の誕生日には、食事会を開いた。本当は芽久美と大倉君も招いてみんなで…と思ったのだが、「ママ、バッカじゃないの?付き合い始めて最初の誕生日に何言ってんの?」とばっさり斬られ、「私、22時までは絶対に帰らないから!」と高らかに宣言されてしまった。
おかげで2人だけで過ごせたけれど、料理のメニューを考え過ぎ、プレゼントを買うという発想が全くなくなってしまった。
「こんなにおいしいものと、2人きりの時間だけで十分ですよ」と言ってくれたし、うそでもないだろうけど、今からでもやっぱり何かプレゼントしたい。
これからの季節、しじら織りのシャツなんかどうだろう。
襟はマオカラーにして、長袖で(なぜか聡二君には半袖のイメージがない)、そこに輝く黒蝶貝のボタン…と、次々にイメージが湧いて、久々に「型紙から縫う」というのをやってみたい欲に駆られてしまった。
本当は寸法をきちんと取りたいけれど、聡二君にそのためだけにご足労願うわけにもいかないし、できれば早く作業を始めたい。
背は高いが、極端にイレギュラーな体型ではない。
既製品でそれっぽいサイズのものを使えば何とかなるだろうと思い、型紙、140センチ幅の布2メートル、ボタン10個をほぼ勢いで注文してしまった。
◇◇◇
幸か不幸か6月は結局月末近くまで聡二君と会うことができなかったので、毎日少しずつちまちまと作業をし、何とかシャツを完成させた。
「実は千弦さんに渡したいものがあります」
「偶然ね。私もよ」
「交換会ですね。楽しみにしています」
そんな感じで約束をし、家に来てもらうことになった。
芽久美は17歳の誕生祝い(6月30日)ということで、大倉君に「いいごはん」をごちそうになるという。
家でのお祝いの方は、「近いうちに和風ハンバーグ(大葉と大根おろしポン酢ソース)作ってくれたら満足」だといわれた。
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