上 下
41 / 101
第12章 伏兵

通じ合う

しおりを挟む


 みゆきは門扉の向こうでくるっと振り向いて、私に向かって元気よくサムアップしてくれた。

 正直嫌いだった。
 というより、自分を嫌っている人に良い感情は持ちようがなかった。
 そんな彼女の親指の頼もしさに、何だか不安になるほどうれしさがこみ上げてくる。

「ねえ、ゆきちゃん。みゆきお姉ちゃん、ママの友達になってくれるのかな?」
 腕の中の幸奈に笑いかけたら、一瞬きょとんとした後、キャッキャと声をたてて笑った。
 赤ん坊というのは感性の固まりだ。表情を読む達人なのだ。
 たとえ大人の話が分からなくても、話している人が機嫌がよさそうなら笑うし、そうでないなら不安げな顔を浮かべる。表情と会話している感じ。
しおりを挟む

処理中です...