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あとがき

メイキング的な何か

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 『いつかは さようなら』にお付き合いいただき、まことにありがとうございます。

 拙作のひとつである『ごきげんよう』という短編がこの話の原点でした。あの話のヒロインは完全に被害者でしたが、今回のヒロイン・真奈美については、最初は決して好意的に書いていないことは、読めばお分かりになると思います。


 しかし、彼女の人物像をさらに突っ込んで考えたとき、他人に無関心で視野が狭かっただけで、変な話、「同性に嫌われやすい(誤解されやすい)女性の」というか、「傍観者でいることに慣れている人間の利点」というか、そういう面もあるんじゃないかなと想像した結果、最終的にはああいう形になりました。はばかりながら私自身も含む、身近にいたことのある何人かの人物の要素を少しずつ抽出して、人格的なものを形成しました。

 また、「彼」の被害者である3人の少年像を描いた時点で、後々このうちの一人は絶対に真奈美に深く関わらせたいと考えていたのですが、最初は誰にするかまでは決めておりませんでした。
 塞翁が馬という言葉どおり、何がどう転んで幸いにつながるかは分かりません。「神谷順一」以外の2人の少年、「西野君」と「村上君」も、何らかの形で幸せをつかんでいたらいいなと思います。

 神谷君の場合、それなりに頑張ってはいるし、まあまあ楽しく生きているもものの、根がお人よしなのが災いし、知人もしくは近親者に無心されて「何で貸しちゃうかな、自分」と思っているというような設定を作りました。
 真奈美との仲も、最終的にどうなるかはあまり考えておりませんが、いっそ初恋の痛みや甘酸っぱさからやり直すような2人というのもほほえましいのではと考えて、ああいうオチにしました。

 書くのが苦痛だったわけではないのですが、書きぶりが最も精神状態に左右された小説でもあります。
 今だから言えるのですが、実はこの話、最後まで書けるとは全く思っていませんでした。
 それこそ素人小説のいいところでもあるのですが、絶対途中で「なかったことにする」だろうな、などという無責任極まりない気持ちでした。10話あたりからでしょうか、妹「みゆき」にああいうふうに登場してもらってから、少しモチベーションが上がってきました。「彼」の性格を考えると、絶対妹のことも無意識に傷つけているに違いないと思って組み立てた人物像です。

 それから余談中の余談です。
 声優さんに詳しい方はピンと来たかもしれませんが、神谷順一という名前は、「神谷浩史さん」と「諏訪部順一さん」から勝手にいただいて命名しました。ちょうどお二人が共演なさっていたアニメ『夏目友人帳』を、スマホでBGM代わりに再生しながら書いていたので、何となくふらーっという感じでした。

 重ねてになりますが、お立ち寄りいただき、本当に感謝いたします。
 お気軽に感想など寄せていただけますと幸いです。
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