forget-me-not メグと大輔 かわいいベイビー

あおみなみ

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次の家族たち

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 智也さんが亡くなって8年後、檜聡二そうじ君という得難い人に出会い、さらに何年も経って彼が大人になったとき、私たちは結婚した。
 彼は、私が今も続けているカフェ「さくら」の近くの英明大附属中学校に通っていたが、それとは無関係に、全く別な場所で偶然出会い、そして英明関連の3校合同で開催される「はなぶさ祭」という学園祭で、これまた偶然に再会した。

***

 当時既に30代だった私が、20代と見まごう雰囲気のまだ中学生の彼を、控え目に「随分若いけれどすてきな人」と思っただけなのに対し、彼の方は、自分より10歳年上と若く見積もってくれたようで、いろいろとサーチした。

 ライターとしてWeb記事を載せるときはあまり顔を出さないが、たまたまお店を紹介してもらったときのインタビュー記事に写真があったので、顔の照合はあっさりできてしまったようだ。
 学校の後輩に当たる芽久美が、「先輩そういうのすごく得意だから。うちの学校のテニス部が強いのは、先輩が作戦参謀だからっていうのもあるよ」なんて言っていたっけ。
 そして実態は「自分より2歳年下の子供を持つ中年女」だと知ってもなお、彼は私を追ってきた。

 若さは強さだ。
 私も中学生のとき5歳年上の人に恋をし、かなり積極的に動いたからわかる。
 年の差のある二人の場合、年長者が及び腰で、年少者が果敢なのが世の常なのだ。

 駅から英明までのメインの通学路は、ずっと海岸に沿っているので、中高の生徒や大学生たちは、海を見ながら通学するのが普通だが、聡二君は高校生になると、途中で裏道に入り、私の家の前を必ず通ってくれたので、「海を見る時間」がほかの子たちの半分になったという。

「そのとき見られなかった分を、あなたと一緒に見ながら生活したい。
 愛しています。俺と結婚してください。毎朝、海岸を散歩しましょう」

 それが彼のプロポーズの言葉だった。
 そのときの言葉どおり、毎朝とはいかないものの、私たちは暇を見てはよく海岸を散歩する。他愛ない雑談にも、ちょっと真剣なお話にも向くシチュエーションだ。というよりも、プロポーズがそもそも晴れた早朝の海岸だった。

「まるで『日曜はダメよNever On Sunday』みたいだね」
「それって、あの映画の?」
「そう。メリナ・メルクーリが映画の中で、日曜日はを休んで男たちを集めて、よく適当な物語を聞かせるんだけど、最後オチは必ず「みんなで海岸に行きました」なのよ」
「俺はタイトルは知っているけど見たことないんです。見てみたいな」
「じゃ、今度DVD借りてきましょうか」
「いいですね」

***

 (主に私の年齢の問題で)私たちが新たに父と母になることは多分ない。
 若い聡二君には申し訳ないけれど、「芽久美ちゃんという立派な子供がいるのに、今さらこだわりません」と言ってくれていた。
 その芽久美もまた、大倉おおくら大輔だいすけ君という素晴らしい男性に嫁いだ。
 2人は大学在学中に既に婚約はしていたが、それに刺激されて聡二君が私に正式にプロポーズしたのではという裏話を、後に大倉君の方から聞かされた。

「俺たちに後れを取るのが嫌だったんでしょうね。あの人らしいですよ。負けず嫌いだから、お義母かあさんのことを誰より幸せにしなきゃって思っているんでしょうが、メグとのことに関しては、俺も負けていません」

 大倉君は憎まれ口をたたきながらも、檜聡二という人物には一目置いているふしがあった。
 4人の間での呼び方は、婚約後に大倉君が私を「お義母さん」と呼ぶようになった以外、全く変わっていない。
 でも、「妊娠しました。6週目に入ったそうです」という嬉し恥ずかしの連絡を、この間もらったばかりだ。
 次世代誕生で、その辺にも変動があるかもしれない。
 聡二君は「20代にしておじいちゃんか。それも悪くないな」などと、満更でもなさそうだ。
 そういえば、「俺は30代の魅力的な女性を「おばあちゃん」と呼んでいた興味深い男(※)を知っているんです」という意味深なことも持っていたんだけれど、詳細については含み笑いでごまかされてしまった。


***

 さて、何はともあれ、それから8カ月ほど後、芽久美が無事女の子を出産した。母子ともに健康との知らせを聞き、ひとまず安心する。産後すぐ病院に顔だけ見にいった。

 細っこくて小さなあの子が産んだのは、3300グラム超の、少し大きめの子だった。
 一大事業の後だけに疲れは見えたものの、笑顔が幸せそうで、気分的にも安定しているようだ。

 名前は「紫」と書いて「ゆかり」とつけられた。
 大倉のお母さまが、女の子を授かったらつけたかった名前だが、芽久美が「私たちがいただいてもいいですか?」と申し出て、めでたく命名の運びとなった。エレガントで響きもいい、美しい名前だと私も思う。

 新婚の大倉君と芽久美は夫婦だけで暮らしていたが、出産後、いわゆる床上げまでは、大倉の家でお世話になるという。
 我が家に帰ってくることも勧めたが、「ママも檜先輩もお仕事あるでしょ?それに「うちに甘えるのも親孝行のうちだ」って、大輔さんが言ってくれたから、お言葉に甘えることにしたの」と言う。
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