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俺の妻は身長は普通だが華奢で、顔も小さいせいか、至近距離だと本当に小柄に見える。
ただ、引きで見ると、何ていうのかな、「しゅっ」としてるんだ。
結婚前までは、パンツルックできびきび働いていた。
腰の位置が高いこともあり、脚が長くてかっこいいといって、男より女に支持されているタイプだった。
性格が温厚だし、仕事も要領よくこなしていたから、ふつうに周囲とうまくやってたけどね。
で、そろそろちょっとした役付きになりそう――というタイミングで俺と結婚することになり、すぱっと仕事を辞めてしまった。
「仕事続けたらいいのに」と、俺は賛成でも反対でもない、ぼんやりとした自分の意見を言ったが、「責任が重くなってから妊娠したら、いろいろ面倒だし、申しわけないから」とのこと。
ちなみにその時点までは、子作りについて具体的に話したことはなかった。
彼女も俺も子供は嫌いじゃなかったし、結婚したらすぐとまで考えていたわけではないが、幸せオプション程度には捉えていた。
結婚して満2年を過ぎた今も「お知らせ」すら来ないが、授かりものなので、のんびり待っているところだ。
◇◇◇
ところで、妻は結婚後、ワンピースばかり着るようになった。
ワードローブは下着に近いような薄手のものからよそゆきまで、見事にワンピースだらけになっている。
花柄や無地もあるが、チェック柄が好きなのか、そういうのが多い。ギンガムチェックっていうの? あのシンプルなやつがやっぱり一番似合っていると思う。
「ワンピースばっかり着ているね」と言ったら、「楽だしかわいいから、もともと好きなのよ」と言われた。
そう言われて、結婚前のデートのときの服装を思い出すが、そういえばワンピースばかりだったような、そうでもないような……?
そういえばよく覚えていない。
たまたま「今日の服、いいね」くらいは言ったことがあるかもしれないが、正直どんな服だったかも覚えていない。
パンツスーツは就職前にスーツを作りにいったときに勧められ、周りからも似合うと好評だったので、あくまで仕事用として着ていただけらしい。
必要がなくなったらそれらは、体型の似ている彼女の妹に譲ったようだ。
もし再度就職するなど、また必要になったら、「体型も変わっているかもしれないし、そのとき考えればいいよ」とのこと。
◇◇◇
俺たちの住むアパートの近くには、かなり大き目の100円ショップがある。
品揃えが豊富なので、特に必要なものがなくても、ぶらぶら見て歩くのが楽しく、俺たちも散歩を兼ねて、テーマパーク感覚で訪れることがある。
とある日曜日、妻は「洗剤と柔軟剤のストックなくなったから、買ってくるね!」と、水色のギンガムチェックのワンピースを着て、小さなトートバッグを持って、玄関から声を張った。
リビングで転がっていた俺は少し慌て、「車出そうか?」と言いながら玄関口に出たが、妻は「今日はきっと混んでるよ。いいよ」と、薄く笑って出ていった。
何しろ歩いて5、6分の場所なので、2人で行くときすら徒歩が多いのだが、不意打ちだったせいか、口を突いて出たのが「車出そうか?」だったのだ。
スウェットでごろごろしていた俺も一緒に出掛けるとなると、「ひげをそる、最低限の着替えをする」で、地味に時間がかかる。
もちろん「俺も一緒に行きたい」と言えば待ってはくれるだろうが、買うものも決まっているようだし、多分すぐ帰ってくるのだろう。
「そか。気をつけて……な」と言って送り出すことにした。
ただ、引きで見ると、何ていうのかな、「しゅっ」としてるんだ。
結婚前までは、パンツルックできびきび働いていた。
腰の位置が高いこともあり、脚が長くてかっこいいといって、男より女に支持されているタイプだった。
性格が温厚だし、仕事も要領よくこなしていたから、ふつうに周囲とうまくやってたけどね。
で、そろそろちょっとした役付きになりそう――というタイミングで俺と結婚することになり、すぱっと仕事を辞めてしまった。
「仕事続けたらいいのに」と、俺は賛成でも反対でもない、ぼんやりとした自分の意見を言ったが、「責任が重くなってから妊娠したら、いろいろ面倒だし、申しわけないから」とのこと。
ちなみにその時点までは、子作りについて具体的に話したことはなかった。
彼女も俺も子供は嫌いじゃなかったし、結婚したらすぐとまで考えていたわけではないが、幸せオプション程度には捉えていた。
結婚して満2年を過ぎた今も「お知らせ」すら来ないが、授かりものなので、のんびり待っているところだ。
◇◇◇
ところで、妻は結婚後、ワンピースばかり着るようになった。
ワードローブは下着に近いような薄手のものからよそゆきまで、見事にワンピースだらけになっている。
花柄や無地もあるが、チェック柄が好きなのか、そういうのが多い。ギンガムチェックっていうの? あのシンプルなやつがやっぱり一番似合っていると思う。
「ワンピースばっかり着ているね」と言ったら、「楽だしかわいいから、もともと好きなのよ」と言われた。
そう言われて、結婚前のデートのときの服装を思い出すが、そういえばワンピースばかりだったような、そうでもないような……?
そういえばよく覚えていない。
たまたま「今日の服、いいね」くらいは言ったことがあるかもしれないが、正直どんな服だったかも覚えていない。
パンツスーツは就職前にスーツを作りにいったときに勧められ、周りからも似合うと好評だったので、あくまで仕事用として着ていただけらしい。
必要がなくなったらそれらは、体型の似ている彼女の妹に譲ったようだ。
もし再度就職するなど、また必要になったら、「体型も変わっているかもしれないし、そのとき考えればいいよ」とのこと。
◇◇◇
俺たちの住むアパートの近くには、かなり大き目の100円ショップがある。
品揃えが豊富なので、特に必要なものがなくても、ぶらぶら見て歩くのが楽しく、俺たちも散歩を兼ねて、テーマパーク感覚で訪れることがある。
とある日曜日、妻は「洗剤と柔軟剤のストックなくなったから、買ってくるね!」と、水色のギンガムチェックのワンピースを着て、小さなトートバッグを持って、玄関から声を張った。
リビングで転がっていた俺は少し慌て、「車出そうか?」と言いながら玄関口に出たが、妻は「今日はきっと混んでるよ。いいよ」と、薄く笑って出ていった。
何しろ歩いて5、6分の場所なので、2人で行くときすら徒歩が多いのだが、不意打ちだったせいか、口を突いて出たのが「車出そうか?」だったのだ。
スウェットでごろごろしていた俺も一緒に出掛けるとなると、「ひげをそる、最低限の着替えをする」で、地味に時間がかかる。
もちろん「俺も一緒に行きたい」と言えば待ってはくれるだろうが、買うものも決まっているようだし、多分すぐ帰ってくるのだろう。
「そか。気をつけて……な」と言って送り出すことにした。
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