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ベルとナル
食・住
しおりを挟むベルとナルは、花に囲まれた白い家で暮らしていました。
そこはそれほど田舎ではありません。
しかし、比較的街場で、なおかつ住宅街が近くにありながら、不思議な形で孤立していました。
ベルは16歳くらいに見えます。
ナルは30歳くらいでしょうか。190センチ近い長身で、細身ですが筋肉質です。
豊かな黒髪を後ろで束ねた、温かみのある優しそうな表情が似合う美青年です。
そして、着せ替え人形のようなベルとは対照的に、いつも同じような白い服を着ていましたが、上等な仕立てで清潔感があり、よく似合っていました。
親子というには年が近く、兄妹というには離れている――2人が一緒のところを見ると、そんな感想を持つ人が多いでしょう。
しかし、2人がそろって人前に出ることは絶対にないので、並んでいるところを見る人も、「どういう関係なんだろう?」と勘繰る人もいません。
***
ナルは時々、食料品や生活財の調達のために、日中外に出ることもありましたが、ベルはずっと家の中にいました。
大抵はナルが、ベルがそのとき一番食べたいと言ったケーキを焼いて、ベルお気に入りの紅茶と一緒に出すと、「ベル、私はこれから出かけてくるけれど、いい子にしているんだよ?」と言ってから出かけます。
ベルは「わかった」とうなずいて、最初のうちは本を読んだり、リリアン編みやビーズ遊びをしていますが、気付くとその場で居眠りをしていました。
そして、用を済ませて1時間ほどで帰ってきたナルが苦笑いしながら「しようのない子だね」と抱きかかえ、ベッドに連れていって、目が覚めるまでそのまま眠らせておきます。
ナルはベルのために、2カ所のベッドを用意していました。
一つは昼寝や体の具合が悪いとき、1人でゆっくり眠るためのベッド。
もう一つは、2人が「愛し合う」ための大きなベッドです。
ナルの場合、体は至って丈夫ですし、昼寝もベルと一緒でなければしません。
朝は必ずベルよりも早く起き、手の込んだ朝食でベルの目覚めを待って、「かわいいお寝坊さん、おはよう」と、ダイニングで彼女に目覚めのキスをしました。
軽くトーストしたパンと野菜スープ、牛乳のかかったシリアル、チーズオムレツといったあたりが定番ですが、時々は和食仕立てになります。
「今日のベルは、ご飯に味噌汁って気分なんじゃないかと思ってね」とナルに言われれば、ベルは自分のもともとの意思や欲求とは無関係に、そんな気になります。
自分が起きて活動している間、ナルは、くつろいだ表情を見せ、体を休めるることはあっても、目を閉じて横になることはありません。
だからベルは、ナルの寝顔を見たことがありませんが、「見てみたい」などと考えたこともありません。
なぜならば、ベルはナルが興味を持つように仕向けるもの以外、何の関心も示さないからです。
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