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ベルとナル
情報
しおりを挟むベルはテレビも新聞も雑誌も見たことがありません。
インターネットというものがこの世にあることも知りません。
というよりも、ナル以外の人間と口を利いたこともありませんでした。
それがいつ頃からだったか…時々「記憶のかけら」のようなものを思い出すのですが、すぐに脳の奥深いところに沈んでいきます。
そんなときは、いつもひどい頭痛に悩まされ、「ナル、わたし頭が割れそう…」と涙ながらに訴えます。
ナルはそれに応じて優しい味のお茶を淹れて、1人用の寝台にベルを横たわらせ、落ち着くまでそばにいてくれました。
目が覚めた頃には、ベルは自分がなぜそうしていたのか忘れてしまうほど、頭も心も晴れ晴れとしていました。
***
ベルは学校には行かず、必要な学問は全てナルに教わっていました。
勉強以外の娯楽として読んでいる本の作者名は全て同じ、「井奈田那留」という人物でした。SFやファンタジーが得意な小説家のようです。
一度だけ、「この本を書いたのは、どんな人?」とナルに尋ねたことがありました。
ナルは静かに微笑んで、「君や私と同じ、美しくて、何一つ不自由していない、心の安定した人間だよ」と教えてくれました。
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