短編集「めおと」

あおみなみ

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その名は「ぴあの」

片づけ物

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 かすみはそのとき、片づけ物――というより探し物をしていた。
 だから一番西側の4畳半、予備室として使っている部屋に、3時間以上はいたはずである。

 かすみは3歳年上の夫と2人、古い一戸建ての借家に住んでいた。
 家自体は古いが風呂やトイレは新しくしてもらったし、家賃が安い。バス停まで歩いて2分というロケ―ションも、ペーパードライバーで自分用の車を持つ気すらないかすみには好都合だし、仮に車を買ったとしても、駐車場代は2,000円程度の上乗せで済みそうだ。
 つまり、かなり便利にゆったりと暮らしていたので、あまり不満はなかった。

 探し物をした片付けが必要になったというシチュエーションで、つまりかなり散らかってしまってはいたが、いっそ不用品を思い切り処分してもいいし、仕事バイトも、ほかに追われているような用事もない。
 ま、のんびりやろう…という感じで、たまに懐かしいアルバムを眺めたり、スマホでLINEメッセージを確かめるついでにパズルゲームをやったり、本を枕に仮眠を取ってしまったりと、実にのんびりしたものだった。
 夏だが気温が控え目で、南と西の窓を開放すれば、快い風が入ってきたことも大きかった。

◇◇◇

 12、3分居眠りしたところで、家の前でミャアミャア鳴いている声で目が覚めた。
 何事かと南側の窓の下を見ると、ハチワレでまん丸い目をした猫が、ロープでぐるぐる巻きにされていた。

「ひどい!誰がこんなこと…」

 とっさに思ったものの、居眠り明けのぼんやり頭で考えても、状況が正しく理解できない。
 猫が絡まっているロープは、明るいブルーのかなり派手なもので、先端に太目のS字フックのようなものがついている。よくよく見ると、それは洗濯ロープだった。
 その時点でもなお、「誰が…」という犯人捜し発想からは逃れられていなかったが、徐々に覚めた頭で冷静に考えてみた。

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