8 / 32
その名は「ぴあの」
その名は「ぴあの」
しおりを挟む「というわけで、アナタのおつまみ失敬しちゃったんだけど」
もともと猫好きのかすみの夫は、別にそれに文句を言うでもなく聞き、思い出したように言った。
「それって俺の知ってる猫と同じかな?だったら結構近所のほかの家でもエサもらってるはずだよ」
「そうなんだ。じゃ、また来るかもね」
すると、なぜか得意げな顔で続けて言った
「それにここの大家さん、結構ペットに寛容らしいよ?」
「え、そうなの?」
夫は社交的なので、休日や夜間の町内会の集まりにはよくいき、情報を仕入れてくる。
「ほら、ここと似たような造りの借家、県道の向こうにも建ってるじゃん?」
「ああ、そういえば」
「そういうトコで、結構犬小屋のある家多いんだよね」
「…言われてみれば、そうだね」
「猫は室内飼いだから事情違うけど、ネズミよけとか言って飼ってるお年寄りも多いらしい」
「へえ…」
かすみも猫は好きだが、飼うまでのことを考えていたわけではない。
しかしこの分なら、夫も猫を飼うことには割と積極的なようだ。
いざ飼うとなったら、今日見かけたハチワレちゃんをそのまま、というわけにもいかないだろうが、例えばもしあの子に名前をつけるなら何がいいだろう。
夫によると、「2軒隣の川森のおばあちゃん」は、「みー」と呼んでいたらしい。
自分なら白と黒の毛色にちなんだ名前をつけたい。
白と黒――鯨幕、パトカー…ピアノ、そうだ「ぴあの」がいい。
ぴあのちゃんのために、おやつのジャーキーでも買っておこうか。
また来てくれるとうれしいな。
いやいや、やっぱりそれはダメか。
飼うなら飼うで、ちゃんとしなきゃ。
市でやっている譲渡会の情報とか、集めようかな。
かすみのイマジネーションは、際限なく広がっていった。
【『その名は「ぴあの」』】
2
あなたにおすすめの小説
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる