クロスロード

つよけん

文字の大きさ
90 / 93
第一部ルート6「終焉」~それぞれの道~

終焉11 ~アリルの飛翔~ 【前編】

しおりを挟む
故人達が渦巻く広い場所。
暗い大地が徐々に明るさを取り戻しつつあった。
日の出の時が近い中、私はスヤスヤと眠る仲間達を横目に一人起きていた。

「本当に長かった…。」

養殖場襲撃から今までの時間が1年分…それ以上の時間が経った気分がする。
自分の翼を優しく撫でながら、今流れている刻をしっかりと心に留める。

「あっ、ちょっと焦げてる…。」

あれだけの高熱地帯に侵入したのだから、無理もないであろう。
半年もすれば元の綺麗な羽に生え変わるので、心配はそれ程なかった。
ただ一つ気になった事は、翼を縫い合わせて貰った根元である。
目立たない様に配慮はされているが、よく見ると一生キズとして残りそうな跡が生々しく見えた。
時間が経てば消えるのかもしれないが、どうなるかはまだ不明である。

そんなこんなを考えていると、森の中からアサトが歩いて来た。
アサトは今まで寝ないで行動していたのだろうか…。

「…おはよ~。」

私は眠そうに挨拶をしていた。
自分が思っている程、一夜漬けの反動が大きかったようだ。

「おはよう。朝早いね。」

それに比べてアサトはハキハキとこちらに挨拶をしてくる。
 
「色々と考えてたら眠れ無くなっちゃって、ずっと起きてたのよ…。」

私は眠気を押し殺すように、背伸びをじっくりと伸ばす。

「大丈夫?」

アサトは心配するように、私の側まで歩み寄ってくる。
これはチャンスじゃないかと、自分の想いを一歩前に踏み出してみた。
 
「ねぇ、アサト。」

私はアサトに必要以上に近づいた。
訳も分からなそうなアサトは、首を傾げている。

「私と一緒に天人の街に来ない?私の婿として一生幸せにしてあげるわよ。」

アサトとの距離は更に近づき、お互いの吐息が重なり合う…。
私は心音を感じながらこのまま食べてしまいそうな勢いで、アサトをじっと見つめる。
少し考えた後にアサトが回答をだした。

「少し魅力的ではあるけど、僕は僕の道を進みたいと思ってるんだ。」

強い想いのキリッとした顔が凛々しく、登ってくる太陽と同じような輝いた目をしている。
これは私がどうこう言って、連れて帰る事が出来るような意思では無いと悟った。
想いを断ち切るように軽く目を閉じ、ゆっくりと目を開けた。
私は静かにアサトの唇に自分の唇を重ねる。

「むぐっ。」

突然の事で戸惑うアサトだったが、すぐに理解してくれたのか身を委ねてくれた。
しかし…強引に奪った唇は、なんだか悲しい味がした…。
ずっとしていたい気持ちを抑えて、唇をゆっくりと離れさせた。

「もう…いいの?」
「アサトはもっとしたい訳?」

あどけない顔でこちらを見つめられる。
知識はあるのだろうけど誘い文句にしては、まだまだ幼さが混じっている気がした。
何故だか私の頬には、一筋の温かい雫が溢れ落ちる。
アサトは自分が間違った対応をしたのかと焦り出す。

「ご、ごめん…気分を害した?」
「別にそんなんじゃないわよ…。」

やっぱり深くは考えていないみたいだ。
私は自分から誘っといてお門違いな気もするが、アサトをからかうように言葉を投げかける。

「本当にもう一度キスがしたいと思うなら、今度は奪いにきなさい!」

よさげな雰囲気を自らの手で、断ち切った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

別れし夫婦の御定書(おさだめがき)

佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★ 嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。 離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。 月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。 おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。 されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて—— ※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...