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第二章(改正版)
週末 ※
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十二月、日曜日。
久場は、由人の部屋のローテーブルで塾の教材を黙々と解いていく。由人も自分の机に向かって通信教材を解いている。
こうやって由人の部屋で勉強をするのは二人の交際が始まってから二度目だ。
久場は白いインナーの上に黒のニットポロシャツ、ゆったり目のジーンズを履いている。
由人は白いパーカーにグレーのスエットパンツを着ている。
久場が好きなアーティストの音楽が流れる中、由人のスマホのタイマーが鳴る。
一時間半、集中して勉強をし、休憩をとりながらまた勉強を始めるのが由人の勉強方法だからだ。
シャープペンシルをテーブルに置いて久場は背伸びをしながら首をこきこき鳴らす。由人は椅子に座ったままパーカーの袖を弄っている。
「おいで」
胡座を崩して久場が由人の方に体を向け、長い両腕を広げた。
由人が動き久場の前に立つけれど、目は合わせられない。
久場は由人の萌え袖ごと両手首を掴み引き寄せて、倒れる由人を横抱きに受け止める。
久場の腕の中で、由人は落ち着かない様子で前髪をかき集めて瞳を隠そうとするがもう短いので隠れない。
久場と付き合っている自覚はあるが、どの角度から見ても非の打ち所がない憧れの久場に抱きしめられるとどうしても萎縮してしまう。
けれど嫌がっている訳ではない。むしろこうやって久場に抱きしめられるのを待っている。
ただ待って、可愛がられるのを期待している。
逞しい体にすっぽりと抱かれているひ弱で可愛らしい恋人の耳元で久場は囁く。
「まだ恥ずかしい?」
由人が耳たぶを赤らめながらこくんと頷く。
俯いた顔の顎に指を添えて上を向かせる。長いまつ毛をぱちぱちさせて目を逸らす。
そんな仕草も堪らない。
久場は可愛らしい唇に軽いキスを何度もして、その柔らかさを堪能する。
今日は由人の家族も家にいる。由人の部屋には鍵が付いてない。
久場は耳を澄ます。
学校を神聖な場所と思っている由人は、校舎での濃厚なキスを許してくれない。久場もその方がいいと思っている。
朝の校舎での限られた時間に、ディープキスなんかしたらお互い昂るだけ昂って、由人は唇を濡らして肌をピンクに染めてしまう。
卒業まで耐えるのは辛いが、抱かないという誓いとけじめを久場は守りたい。
内川たちに信用して欲しいし、由人にも大事に思っている事を伝えたい。。
それでもやはり、気持ちよさには少しずつ慣れて欲しい……
「少しだけ舌を入れてもいい?」
久場の甘えた声が嬉しくて、由人は瞼を閉じ、腕の中で体の力を抜く。
律儀に許可を求める久場が可愛いとも思う。
「いいよ」
微かな声で許すと、久場の舌が伸びて由人の唇をぺろぺろと舐める。
キスだけは何度もしていて、啄むキスも、唇の感触を確かめる舌先も、時折甘噛みをする歯も、由人の唇の感度を少しずつ変化させていく。
「ふぁ、ぅ……」
久場が息を吐く由人の唇に舌を入れ、ほんの少しだけ絡め、優しく抱きしめる。
由人は怖がりだからゆっくり、優しく大事にして……そしていつか、もっと甘く蕩けさせたい。
「はいおしまい、これ以上は危険」
久場は自制心を働かせて約束を守る。
「久場くん……大丈夫?」
「ん、何が?」
「だって、ずっと我慢してる……」腕の中でか細く言う由人の髪を撫でる。
「これは俺たちにとって必要な我慢だから……あ、それとも由人が我慢出来なくなった? もっと触って欲しかったりする?」
「違う!」由人が真っ赤な顔をして否定する。
「ごめんごめん、でも本当に大丈夫だから心配しないでいいよ、あー、でも今度の模試も頑張るからさ、成績上がったら褒めてよ」
「うん……久場くんずっと頑張ってるからまたいい評価でるよ」
「俺のやる気は全部、由人のご褒美欲しさだけどな、由人も、もうA判定出てるんだろう、志望校ランク上げてもいいんじゃないか、由人なら法学部でもいけるだろう」
「……先生もそう言うけど、僕の性格は情報学部が向いてると思うんだ」
「そうか、由人は堅実だからな」
「……久場くん」
「ん?」
「あの……覚えてる? クリスマスデートの事」
「水族館デートだろう、覚えてるよ……俺から言い出したことなんだけどさ、別の日にしないか?」
「え?」
由人が驚いた顔をする。
「いや、よく考えたらイブの二十四日は終業式だし、冬休みに入るからどこも人多いだろ、それに、ほらインフルエンザとかめちゃくちゃ気をつけないといけない時期だろう、俺たちは」
「あ……」落胆した声を出して俯く由人の真正面に久場が座り直す。
「だから、二十四日はさ、俺がさ、またここに来ちゃだめかな?」
「え?」顔を上げた由人の瞳はもう輝いている。
「由人の部屋でゆっくり映画でも見よう、由人のお母さんが許してくれたらだけど、水族館デートは……卒業してからゆっくり行こう、いつでも行けるしね」
「あ……凄く嬉しいけど、二十四日は毎年お母さんがご馳走を買ってくるんだ……」
「そうか……」
「うん」
「それって、夜ご飯?」
「うん」
「じゃあ、俺は夜ご飯前に帰るよ、それだったらどうかな?」
「分かった、お母さんに伝えておくね」
嬉しそうに笑う由人が可愛いらしくて、久場の心がほっこりと温かくなる。
そして二人はまた休憩を挟みながら夕方まで勉強に集中をした。
久場は、由人の部屋のローテーブルで塾の教材を黙々と解いていく。由人も自分の机に向かって通信教材を解いている。
こうやって由人の部屋で勉強をするのは二人の交際が始まってから二度目だ。
久場は白いインナーの上に黒のニットポロシャツ、ゆったり目のジーンズを履いている。
由人は白いパーカーにグレーのスエットパンツを着ている。
久場が好きなアーティストの音楽が流れる中、由人のスマホのタイマーが鳴る。
一時間半、集中して勉強をし、休憩をとりながらまた勉強を始めるのが由人の勉強方法だからだ。
シャープペンシルをテーブルに置いて久場は背伸びをしながら首をこきこき鳴らす。由人は椅子に座ったままパーカーの袖を弄っている。
「おいで」
胡座を崩して久場が由人の方に体を向け、長い両腕を広げた。
由人が動き久場の前に立つけれど、目は合わせられない。
久場は由人の萌え袖ごと両手首を掴み引き寄せて、倒れる由人を横抱きに受け止める。
久場の腕の中で、由人は落ち着かない様子で前髪をかき集めて瞳を隠そうとするがもう短いので隠れない。
久場と付き合っている自覚はあるが、どの角度から見ても非の打ち所がない憧れの久場に抱きしめられるとどうしても萎縮してしまう。
けれど嫌がっている訳ではない。むしろこうやって久場に抱きしめられるのを待っている。
ただ待って、可愛がられるのを期待している。
逞しい体にすっぽりと抱かれているひ弱で可愛らしい恋人の耳元で久場は囁く。
「まだ恥ずかしい?」
由人が耳たぶを赤らめながらこくんと頷く。
俯いた顔の顎に指を添えて上を向かせる。長いまつ毛をぱちぱちさせて目を逸らす。
そんな仕草も堪らない。
久場は可愛らしい唇に軽いキスを何度もして、その柔らかさを堪能する。
今日は由人の家族も家にいる。由人の部屋には鍵が付いてない。
久場は耳を澄ます。
学校を神聖な場所と思っている由人は、校舎での濃厚なキスを許してくれない。久場もその方がいいと思っている。
朝の校舎での限られた時間に、ディープキスなんかしたらお互い昂るだけ昂って、由人は唇を濡らして肌をピンクに染めてしまう。
卒業まで耐えるのは辛いが、抱かないという誓いとけじめを久場は守りたい。
内川たちに信用して欲しいし、由人にも大事に思っている事を伝えたい。。
それでもやはり、気持ちよさには少しずつ慣れて欲しい……
「少しだけ舌を入れてもいい?」
久場の甘えた声が嬉しくて、由人は瞼を閉じ、腕の中で体の力を抜く。
律儀に許可を求める久場が可愛いとも思う。
「いいよ」
微かな声で許すと、久場の舌が伸びて由人の唇をぺろぺろと舐める。
キスだけは何度もしていて、啄むキスも、唇の感触を確かめる舌先も、時折甘噛みをする歯も、由人の唇の感度を少しずつ変化させていく。
「ふぁ、ぅ……」
久場が息を吐く由人の唇に舌を入れ、ほんの少しだけ絡め、優しく抱きしめる。
由人は怖がりだからゆっくり、優しく大事にして……そしていつか、もっと甘く蕩けさせたい。
「はいおしまい、これ以上は危険」
久場は自制心を働かせて約束を守る。
「久場くん……大丈夫?」
「ん、何が?」
「だって、ずっと我慢してる……」腕の中でか細く言う由人の髪を撫でる。
「これは俺たちにとって必要な我慢だから……あ、それとも由人が我慢出来なくなった? もっと触って欲しかったりする?」
「違う!」由人が真っ赤な顔をして否定する。
「ごめんごめん、でも本当に大丈夫だから心配しないでいいよ、あー、でも今度の模試も頑張るからさ、成績上がったら褒めてよ」
「うん……久場くんずっと頑張ってるからまたいい評価でるよ」
「俺のやる気は全部、由人のご褒美欲しさだけどな、由人も、もうA判定出てるんだろう、志望校ランク上げてもいいんじゃないか、由人なら法学部でもいけるだろう」
「……先生もそう言うけど、僕の性格は情報学部が向いてると思うんだ」
「そうか、由人は堅実だからな」
「……久場くん」
「ん?」
「あの……覚えてる? クリスマスデートの事」
「水族館デートだろう、覚えてるよ……俺から言い出したことなんだけどさ、別の日にしないか?」
「え?」
由人が驚いた顔をする。
「いや、よく考えたらイブの二十四日は終業式だし、冬休みに入るからどこも人多いだろ、それに、ほらインフルエンザとかめちゃくちゃ気をつけないといけない時期だろう、俺たちは」
「あ……」落胆した声を出して俯く由人の真正面に久場が座り直す。
「だから、二十四日はさ、俺がさ、またここに来ちゃだめかな?」
「え?」顔を上げた由人の瞳はもう輝いている。
「由人の部屋でゆっくり映画でも見よう、由人のお母さんが許してくれたらだけど、水族館デートは……卒業してからゆっくり行こう、いつでも行けるしね」
「あ……凄く嬉しいけど、二十四日は毎年お母さんがご馳走を買ってくるんだ……」
「そうか……」
「うん」
「それって、夜ご飯?」
「うん」
「じゃあ、俺は夜ご飯前に帰るよ、それだったらどうかな?」
「分かった、お母さんに伝えておくね」
嬉しそうに笑う由人が可愛いらしくて、久場の心がほっこりと温かくなる。
そして二人はまた休憩を挟みながら夕方まで勉強に集中をした。
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