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第二章(改正版)
卒業旅行 ※
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ある程度、腹を満たして久場がトイレに立ち、戻って来ると映画の再生を止めて待っていた由人の肩を掴み自分の方へ引き寄せた。
久場は膝に由人の頭を置いて膝枕をすると、映画を再生させた。リビングに音声が流れる。
由人は少し驚いたが、久場の右手が髪をサラサラと撫で、左手は由人の肩から腕のラインを撫でパジャマの生地の感触を楽しんでいる。
「このパジャマ、手触りがいいね」
「うん、あったかいし気に入ってる」
少しくすぐったいが久場にされる事は何でも嬉しい。
顔を上に向けて、下からのアングルで顎のラインを見てみたい。自分と違って久場はもうヒゲが生えてきている。
清潔に剃ってはいるけれど、微かに残る毛の断面に男らしさと色気のようなものを感じていた。
由人は手を伸ばして久場の顎にある短いヒゲの剃り跡を指でツンと触ってみる。
「何?」久場は映画の画面から目を離さないまま、優しく言う。
「ヒゲ、触ってみたかったんだ……僕には生えてこないから」
「ふーん、昨日剃ったばっかりだからまだ短いだろう」
由人は返事をせずに、指先で精悍な顎を何度も触る。
「こら、くすぐったいよ」
少し顔を揺らして久場が言うので、由人は素直に手を引っ込める。
二人はしばらく黙って映画を見ていると久場が由人の肩を軽く叩いた。
「ん?」由人が身を起こして首を傾げる。
「由人、聞いて欲しいことがあるんだけどいいかな?」
「何? あ、映画止める?」
「ううん、そのままでいいよ、あのね卒業の後の話なんだけど」
「……うん」
「由人に予定がないなら卒業旅行行かない?」
「卒業旅行……」
「うん、どうかな? もちろん由人のお母さんがいいって言ったらなんだけど」
「行く……行きたい、絶対行く」
由人が上半身を起こし久場に抱きついた。
映画は再生され続け、ストーリーも終盤になってきたがもう二人の耳には入ってきてはない。
「由人からハグしてくるの珍しいね、よしよし……それで、まだ話しておきたい事があるんだけど」
由人は久場の白いシャツに耳を当て鼓動を聞く。
鼓動の音が段々と早くなっていく。
「そこで何日か、由人と2人きりでいたいと……と思っている」
久場が逞しい両腕で由人を力強く抱きしめる。
サッカーで鍛えられたはずの久場の屈強な心臓が、どっどっどと由人の鼓膜を揺らす。
「ずっと、2人……」
痛いくらいに抱きしめられながら由人がぽつりと聞く。
「そうだ、俺はきっと……由人をすごく触ると思う……」
「あ、うん……久場くんがずっと我慢してくれてるの、分かってるから……恥ずかしいけど触るくらいなら……」
「由人……俺の言いたい事が伝わってない気がする、えーと、分かってる? 俺がしたいこと?」
ソファの上で抱きしめていた由人を離して久場は神妙な顔をする。
「……触りっこするんだよね?」
「んー、やっぱり分かってないな……」
「だから、触ったり、キス……いっぱいしたりするんでしょ」
「それもそうなんだけど、俺が言いたいのは」
久場は、困った様に頭をかいた。
「卒業旅行だし、二人きりだから……そのー、手も握るしキスもするけど、それ以上のことも俺はきっとするだろうとか……ああ、俺は何言ってるんだろう」
ソファに座ったまま首を項垂れる久場の耳がどんどん赤くなっていく。
その様子を隣で見ながら、久場を困らせているのは自分の鈍さなんだろうなと、由人は察する。
でも、キスと触りっこ以外にすることってなんだろう?
過保護で純粋培養な生活を甘んじて受けていたけれど、これが男女なら……もっとすごいことをするということは僕だってなんとなく分かっている。
でも男同士はどうするのだろう、何か他に愛の確かめ方があるのだろうか?
項垂れ困っている久場を、由人も口をムッと結び難しい顔をして眺めていた。
「こんなんじゃだめだ、くそ、また意気地なしになってた……」
久場が顔を上げ由人に向き直り、両腕を広げる。
耳はまだ赤く、白いシャツの胸元もせわしなく上下している。
今の久場の心臓は、初めてキスをしたあの時の様に早鐘を打ち、頭の中はきっと僕のことでいっぱいで泣きたくなるくらいに不安なんだろうな。
由人はそう思いながら、久場の開かれた胸に近づき、大きな体に腕をまわしそっと抱きかえす。
ソファに座ったままの久場が由人の体をぐいっと持ち上げ、向き合うように膝の上に乗せた。
自然と足を大きく開いて久場の太ももを跨ぐ格好になってしまった由人は、体を硬くして戸惑う。
「ごめんね、今から話すことはもしかしたら由人を驚かせるかもしれない……けど、俺の正直な気持ちを話しておきたい……」
硬直している由人の上半身が、久場の逞しい胸元に抱き寄せられ、パジャマの上から背中を撫でられる。
広い胸にもたれると、ドキドキとせわしない久場の心音が聞こえた。
久場は膝に由人の頭を置いて膝枕をすると、映画を再生させた。リビングに音声が流れる。
由人は少し驚いたが、久場の右手が髪をサラサラと撫で、左手は由人の肩から腕のラインを撫でパジャマの生地の感触を楽しんでいる。
「このパジャマ、手触りがいいね」
「うん、あったかいし気に入ってる」
少しくすぐったいが久場にされる事は何でも嬉しい。
顔を上に向けて、下からのアングルで顎のラインを見てみたい。自分と違って久場はもうヒゲが生えてきている。
清潔に剃ってはいるけれど、微かに残る毛の断面に男らしさと色気のようなものを感じていた。
由人は手を伸ばして久場の顎にある短いヒゲの剃り跡を指でツンと触ってみる。
「何?」久場は映画の画面から目を離さないまま、優しく言う。
「ヒゲ、触ってみたかったんだ……僕には生えてこないから」
「ふーん、昨日剃ったばっかりだからまだ短いだろう」
由人は返事をせずに、指先で精悍な顎を何度も触る。
「こら、くすぐったいよ」
少し顔を揺らして久場が言うので、由人は素直に手を引っ込める。
二人はしばらく黙って映画を見ていると久場が由人の肩を軽く叩いた。
「ん?」由人が身を起こして首を傾げる。
「由人、聞いて欲しいことがあるんだけどいいかな?」
「何? あ、映画止める?」
「ううん、そのままでいいよ、あのね卒業の後の話なんだけど」
「……うん」
「由人に予定がないなら卒業旅行行かない?」
「卒業旅行……」
「うん、どうかな? もちろん由人のお母さんがいいって言ったらなんだけど」
「行く……行きたい、絶対行く」
由人が上半身を起こし久場に抱きついた。
映画は再生され続け、ストーリーも終盤になってきたがもう二人の耳には入ってきてはない。
「由人からハグしてくるの珍しいね、よしよし……それで、まだ話しておきたい事があるんだけど」
由人は久場の白いシャツに耳を当て鼓動を聞く。
鼓動の音が段々と早くなっていく。
「そこで何日か、由人と2人きりでいたいと……と思っている」
久場が逞しい両腕で由人を力強く抱きしめる。
サッカーで鍛えられたはずの久場の屈強な心臓が、どっどっどと由人の鼓膜を揺らす。
「ずっと、2人……」
痛いくらいに抱きしめられながら由人がぽつりと聞く。
「そうだ、俺はきっと……由人をすごく触ると思う……」
「あ、うん……久場くんがずっと我慢してくれてるの、分かってるから……恥ずかしいけど触るくらいなら……」
「由人……俺の言いたい事が伝わってない気がする、えーと、分かってる? 俺がしたいこと?」
ソファの上で抱きしめていた由人を離して久場は神妙な顔をする。
「……触りっこするんだよね?」
「んー、やっぱり分かってないな……」
「だから、触ったり、キス……いっぱいしたりするんでしょ」
「それもそうなんだけど、俺が言いたいのは」
久場は、困った様に頭をかいた。
「卒業旅行だし、二人きりだから……そのー、手も握るしキスもするけど、それ以上のことも俺はきっとするだろうとか……ああ、俺は何言ってるんだろう」
ソファに座ったまま首を項垂れる久場の耳がどんどん赤くなっていく。
その様子を隣で見ながら、久場を困らせているのは自分の鈍さなんだろうなと、由人は察する。
でも、キスと触りっこ以外にすることってなんだろう?
過保護で純粋培養な生活を甘んじて受けていたけれど、これが男女なら……もっとすごいことをするということは僕だってなんとなく分かっている。
でも男同士はどうするのだろう、何か他に愛の確かめ方があるのだろうか?
項垂れ困っている久場を、由人も口をムッと結び難しい顔をして眺めていた。
「こんなんじゃだめだ、くそ、また意気地なしになってた……」
久場が顔を上げ由人に向き直り、両腕を広げる。
耳はまだ赤く、白いシャツの胸元もせわしなく上下している。
今の久場の心臓は、初めてキスをしたあの時の様に早鐘を打ち、頭の中はきっと僕のことでいっぱいで泣きたくなるくらいに不安なんだろうな。
由人はそう思いながら、久場の開かれた胸に近づき、大きな体に腕をまわしそっと抱きかえす。
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自然と足を大きく開いて久場の太ももを跨ぐ格好になってしまった由人は、体を硬くして戸惑う。
「ごめんね、今から話すことはもしかしたら由人を驚かせるかもしれない……けど、俺の正直な気持ちを話しておきたい……」
硬直している由人の上半身が、久場の逞しい胸元に抱き寄せられ、パジャマの上から背中を撫でられる。
広い胸にもたれると、ドキドキとせわしない久場の心音が聞こえた。
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