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第1話 別れて欲しい

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 桜の花が舞い散るキャンパスのベンチに座り、俺、名雲友は彼女、岩浪亜美と向き合っていた。彼女の目は遠くを見つめ、彼女の言葉は俺の心を凍らせた。

「友、ごめんね。別れて欲しいの。」

「どうして……?」

俺の声は震えていた。信じられない。まさか、ここで終わりなんて。

 亜美は少し視線を落として、「気持ちが冷めちゃったの。他に好きな人ができて……」

彼女の言葉は、俺の心を刺し貫いた。

 その瞬間、背後から足音が聞こえた。振り返ると、そこには見知らぬ男が立っていた。彼は風間隼人。彼女は彼に向かって微笑み、彼は彼女に近づき、二人は目の前で熱いキスを交わした。

 俺の心は壊れた。全身が震え、吐き気がした。亜美が俺と別れたのは、この男のためだったのか。彼女との思い出が、一瞬で虚無に変わった。

「ごめんね、友。でも、彼とは体の相性もいいし、本当に好きになっちゃったの」

風間は俺を一瞥し、「悪いと思ってるけど、仕方ないよね」と軽く言った。彼の態度は軽薄で、俺をさらに傷つけた。

「信じられない……」

俺は呟いた。この瞬間まで、俺は彼女を信じていた。彼女の言葉は、俺の心を裏切り、打ち砕いた。

 亜美と風間は手をつなぎ、去っていった。俺はその場に取り残され、空虚感と絶望に満ちた。愛していた彼女が、こんなにも簡単に俺を捨てたのか。

 俺はふらふらとキャンパスを歩いた。亜美との日々が頭をよぎる。全てが虚しく思えた。

「どうして、俺じゃダメだったんだろう……」

俺は自問自答しながら、足を引きずるように歩いた。学生たちの笑い声や話し声が遠くから聞こえてきたが、それらが俺の心には届かなかった。

 俺たちが初めて出会った場所、初めて手をつないだ場所、初めてキスをした場所。それらが目の前に現れるたびに、心が一層痛んだ。もう二度と、彼女とここを歩くことはない。

 空は徐々に暗くなり、キャンパスのライトが一つ一つ灯り始めた。俺は一人、ベンチに座り込んだ。涙が頬を伝い落ちた。誰もが幸せそうに見える中、俺はただ一人、絶望の中にいた。

「亜美……」

彼女の名を呼ぶと、胸が締め付けられた。彼女の笑顔、彼女の声、彼女の温もり。それらがもう二度と感じられないと思うと、耐えがたい悲しみが襲ってきた。

 突然、携帯が震えた。画面を見ると、亜美からのメッセージが。でも、開く勇気がなかった。もう何もかもが遅い。俺は携帯をポケットに戻し、深いため息をついた。

 部屋に戻ると、壁にかかった写真が目に入った。亜美との思い出が詰まった写真。海辺での笑顔、誕生日のサプライズ、一緒に過ごしたクリスマス。それらが今は、遠い夢のように感じられた。

 俺は写真を手に取り、しばらくその場に立ち尽くした。亜美との幸せだった日々。あの頃は、ずっと一緒にいられると思っていた。でも、それは幻だった。

「なんで、亜美は俺を裏切ったんだろう……」

俺の心は疑問と悲しみでいっぱいだった。彼女の笑顔、あの優しい目、温かい手。全てが今は、遠い記憶になってしまった。

 俺は写真を机の上に置き、荷物をまとめ続けた。部屋中には亜美との思い出が溢れていた。それらを一つ一つ手放していくのは、心が引き裂かれるようだった。

「もう忘れよう……」

俺はぼそりと呟いた。一緒にいる未来を夢見て、同じ大学に行くために必死に勉強した日々。それらが今は、全て無駄に思えた。

「はは、これからどうしよう……」

俺は苦笑いした。何もかもが変わってしまった。亜美との思い出は、もう苦しいだけだ。

「もういいや、亜美とは会いたくない。だから違う大学に行こう。遠い遠いところに」

俺は決意した。新しい環境、新しい出会い。そこで、新しい自分を見つける。

 荷物をまとめながら、俺はこれまでの人生を振り返った。亜美との出会い、一緒に過ごした時間、そして別れ。全てが俺を成長させた。

 荷造りを終えると、俺は深く息を吐き出した。明日からの新しい人生に向けて、心を整理した。過去は過去。これからは前を向いて歩いていく。

 そして、新しい大学での生活が始まった。全く知らない街、知らない人々。そこで俺は……。
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