フラれた彼女のことを忘れようとしたのに、彼女の妹は全て知っていた

ワールド

文字の大きさ
21 / 22

第21話 先輩との出会い

しおりを挟む
 私、絵里は、いつもお姉ちゃんの影の中だった。お姉ちゃんは完璧だった―勉強も運動もできて、容姿も優れていて、落ち着いていて、周りの空気も読める。まるで何でもできるかのように。

 一方で私は、優秀な姉とは正反対。よく比べられたものだ。

「あなたの姉はできるのに、なぜあなたはできないの?」

 そんな言葉を耳にするたび、私の心は少しずつ折れていった。

 私は姉とは違って、勉強もそこそこ、運動も普通、容姿も平凡。何をしても姉の陰に隠れて、見過ごされる存在だった。

「絵里も少しは姉を見習いなさい」

 言われても、私には無理な話だった。姉が光り輝く中で、私はいつも暗い影の中にいた。

 それが私のコンプレックスの源だった。いつも比べられ、いつも足りないと言われ続けた。そのせいで、自分に自信を持つことができなかった。

 そんな私にとって、先輩は特別な存在だった。先輩は私を見てくれた。ただのお姉ちゃんの妹ではなく、一人の人間として。だから、先輩が他の誰かに取られるのは耐えられなかった。

 私は自分の影から抜け出すために、先輩を手に入れることに固執していた。それが私の逃れられない運命だと思っていた。


 姉が輝いている中で、どれだけ自分が頑張っても、いつも影に隠れていた。自分の努力が報われない苦しさを、何度も感じてきた。

「私だって頑張っているのに……」

 そう思っても、どんなに頑張っても姉には敵わない。いつも二番手、いつも見過ごされる私。その現実が、私を苦しめていた。

 私は一人で部屋に閉じこもり、泣くことも何度もあった。誰にも相談できないこの孤独感。周りには理解されない私の苦しみ。姉の影から抜け出すことができない自分の無力さ。

 自分の感情をどこにぶつけていいのか分からず、ただひたすらに泣いた。私の心は、誰にも理解されない痛みでいっぱいだった。

 だから、先輩が私に注目してくれた時、それは私にとって大きな希望だった。やっと自分が認められる場所を見つけたと思った。先輩こそが、私が待ち望んでいた光だった。

 でも、その光も私から奪われようとしている。それが耐えられなかった。だから、どんなことをしてでも先輩を手に入れたいと思う。それが私の唯一の救いであり、逃げ場だった。


 そんな時、お姉ちゃんが彼氏を家に連れてきた。彼らはリビングで笑いながら会話している。私は隅に座って、それを見ていた。

「ああ、いいなあ……」

 私は心の中で思った。根暗で何にもできない私には、そんな幸せなシーンはありえない。お姉ちゃんは何でもできるから、彼氏も当然素晴らしい人なんだろう。

 私はそんな彼らを羨ましく思いながら、自分の孤独を噛みしめていた。

「だから……」と私はぼんやりと考えていた。その時、やさしい声が聞こえてきた。

「あれ? こんなところでどうしたの?」

 その声はとても優しく、暖かかった。私はその声に反応して、顔を上げた。声の主はお姉ちゃんの彼氏だった。彼は私に向かって微笑んでいた。

 その瞬間、私の心は少し動揺した。私はいつもお姉ちゃんの影に隠れていたけど、彼は私に気づいてくれた。そのやさしい声と笑顔は、私にとって新鮮で、どこか憧れを感じさせた。

 私の心は複雑な感情で満たされていた。お姉ちゃんに対する羨望、自分の孤独、そして彼に対する新たな感情。それは、私の心に新しい波をもたらした。

 お姉ちゃんの彼氏、つまり先輩との出会い。彼のやさしい声と暖かい笑顔が、私の心に深く刻まれた。

 先輩はお姉ちゃんとは違う、私を一人の人間として見てくれるような存在だった。彼の一挙一動が、私の心を捉えて離さなかった。



 私は先輩に恋をした。それはただの好意を超えたもので、先輩への深い愛情と執着へと変わっていった。先輩が私の心の中で、唯一の光となったのだ。


 お姉ちゃんの影から抜け出すことができなかった私にとって、先輩は救いのような存在だった。私は彼に溺れ、彼を手に入れるためなら何でもする覚悟を決めた。


 先輩への想いは日に日に強くなり、彼が他の誰かと一緒にいることが耐えられなくなった。先輩を私だけのものにしたい、そう切に願った。


 それが、私が先輩に恋をして、溺れていった瞬間だった。私の心は先輩でいっぱいになり、彼を手に入れるための行動を起こす決意を固めたのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

ふたりの愛は「真実」らしいので、心の声が聞こえる魔道具をプレゼントしました

もるだ
恋愛
伯爵夫人になるために魔術の道を諦め厳しい教育を受けていたエリーゼに告げられたのは婚約破棄でした。「アシュリーと僕は真実の愛で結ばれてるんだ」というので、元婚約者たちには、心の声が聞こえる魔道具をプレゼントしてあげます。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

シリアス
恋愛
冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

処理中です...