上 下
1 / 19

第1話 信じられない

しおりを挟む
 華やかな舞踏会の会場で、イザベラ・フォン・エーデルヴァインは、婚約者のフレデリック・フォン・アルテンブルクとの幸せな未来を夢見ていた。しかし、その夢は突然、悪夢へと変わる。

「イザベラ、僕たちの婚約を破棄させてほしい」
 フレデリックが静かに告げた。その言葉はイザベラの心に鋭い痛みを与えた。
 彼女の目は、フレデリックと親しげに話すクララ・フォン・リリエンフェルトに向けられる。

「なぜですの、フレデリック?」

 イザベラの声は震えていた。

「あなたはわたくしを愛していなかったのですか?」

 フレデリックは避けるように目を逸らす。

「ごめんなさい、イザベラ。君には何の落ち度もない。ただ、僕の気持ちが変わっただけだ」

 会場にいる全員の視線が、イザベラに注がれる中、彼女は恥ずかしさと怒りで顔を赤らめた。彼女は涙を堪えながら、堂々とした態度で会場を後にする。

 一人になったイザベラは、涙を流しながら自分の部屋に戻る。彼女の心は、フレデリックの言葉と裏切りによって深く傷ついていた。鏡に映る自分の姿を見つめ、彼女は自分自身に問いかける。

「どうして……どうして私じゃないの?」

 夜が更けるにつれ、イザベラの心は復讐の炎で燃え始める。

「彼らに見せてやるわ。わたくしがどれだけ強いかを! フレデリック、クララ、あなたたちが私にしたことを、絶対に忘れませんわ」


 戻ると、クララ・フォン・リリエンフェルトは、舞踏会の会場で自信に満ちた笑顔を浮かべている。
 彼女は、イザベラがフレデリックに捨てられたことを知り、内心で満足していた。

「イザベラ、あなたの婚約が破棄されたって本当?」

 クララは甘い声で尋ねる。

「とてもショックでしょうけど、フレデリックの気持ちもわかるわ。あなたにはちょっと重すぎたのかもしれないわね」

 イザベラはクララの言葉に耳を貸さず、怒りを胸に秘める。彼女はクララの嘲笑の中で、自分の復讐の計画をより一層固める。

 クララはイザベラを見下すように続ける。

「でも、フレデリックも幸せになる権利があるのよ。彼には、もっと柔らかくて、優しい女性が必要だったのね」

 この言葉に、イザベラの心はさらに炎を燃やす。
 彼女はこの屈辱を決して忘れず、クララとフレデリックに対する復讐の火を燃やし続けるのだった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

職業選択の自由なんてありません

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:2,044pt お気に入り:6

庭師見習いは見た!お屋敷は今日も大変!

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:2,592pt お気に入り:8

【完結】ミックス・ブラッド ~異種族間の混血児は魔力が多め?~

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:397pt お気に入り:65

婚約者は想像と違います

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:83

最強の赤ん坊決定戦

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:1,086pt お気に入り:4

処理中です...