奪われたから、奪い返します

第4話 フレデリックという男

　イザベラはフレデリックに対する復讐計画を練りながら、彼についての思い出を振り返る。一方、フレデリックはクララとの新しい生活を始めていたが、何か満たされない感情を抱えているようだった。イザベラは彼の心の隙間を見つけ、そこを突いて彼を追い詰める方法を考える。


　イザベラは、フレデリックを好きになったきっかけがささいな出来事であったことを思い出していた。
　彼らの出会いは偶然で、フレデリックが彼女に優しく手を差し伸べた一瞬で、イザベラの心は彼に引かれていった。その時の彼の笑顔や温かな言葉が、彼女の心を捉えたのだった。しかし、今となってはその思い出も苦いものとなり、イザベラは自分がなぜあんな男を好きになったのかと自問するのだった。


　イザベラは、一人自分の部屋でフレデリックとの過去の会話を思い返していた。

「イザベラ、君は本当に美しいね」

　フレデリックが言った時、彼女の心は高鳴った。

「ありがとう、フレデリック……でも、外見だけじゃなく、私の中身も見てほしいわ」

　フレデリックは笑う。

「もちろん、君のすべてが好きだよ」

　今、その言葉を思い返すと、イザベラの心は苦しみで満たされる。彼の言葉が本当だったのか、それともただの嘘だったのか。彼女は、自分の感情を整理しようと苦闘していた。


　イザベラは、今となってはフレデリックの全てが嫌悪感を引き起こすようになっていた。
　彼がクララという憎たらしい女に心を移した軽薄さ、そして自分が奪われたという悔しさ。彼女は自問する。

「私の魅力はそんなになかったのかしら？」

　フレデリックへのかつての愛情が、今では疑問と失望へと変わり、彼女の心は復讐へと向かっていた。

　イザベラは鏡の前に立ち、自分の姿を見つめる。

「うん、私の方が可愛い」

　彼女は何度も自分に言い聞かせる。

「クララよりも優秀よ」

　この言葉は彼女にとって、自信を保つための必要な繰り返しであり、フレデリックとクララに対する復讐への自己暗示だった。


　イザベラは自分の心に誓う。

「この私を裏切ったこと、捨てたこと、絶対に後悔させてやるわ。まずは、あなたの大切なものを奪ってやるわ」

　彼女の目には復讐の火が灯り、その決意は固いものになっていた。フレデリックとクララに対する彼女の計画は、徐々に形を成していくのだった。