友達も一人がいない、ぼっちでも最強になれます! 多分

ワールド

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第10話 二人っきりだからぼっちじゃない?

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 ラヴァゴーレムとの戦いの後、疲労と熱さに押しつぶされそうになりながら、僕は七海さんと一緒に休んでいた。ここはまるで地獄のような火山、マグマクレスト。周囲は灼熱の空気に包まれ、僕たちはただ岩に腰を下ろして、一息ついている。

 「七海さん、水……です」

僕はどもりながら、彼女に水筒を差し出した。彼女はすぐにそれを受け取り、喉を潤す。僕は、彼女が水を飲む姿をじっと見つめていた。そして、何か間違ったことをしてしまったような、変な感覚に襲われた。

 「かっこつけたって……どころじゃない、やっちまった……」

 僕は内心で自己嫌悪に陥る。普段から人とまともに話せない僕が、何をやっているんだろう。こんな状況で、何を伝えたいのかもわからないまま、ただ七海さんと二人、沈黙の中にいる。

 僕は、彼女とどう接すればいいのかわからない。七海さんはいつも明るく、僕とは全く違う。彼女にとって、僕はどんな存在なんだろうか?ただのクラスメイト?それとも……なんて、考えても仕方がない。

 七海さんは、僕に感謝の言葉を伝えてくれた。でも、僕はそれをどう受け止めていいのかわからない。まるで、小さな船が大きな波に翻弄されているような気分だ。彼女の言葉が、僕の心にどんな影響を与えているのかもわからない。

 「うわあ……僕、本当に何やってるんだろう」

 心の中でつぶやきながら、僕は彼女にどう接すればいいのか、ただただ途方に暮れていた。こんなにも緊張して、心がざわついている。彼女といると、いつも以上に自分が不器用で、コミュニケーション障害だってことを痛感する。

 でも、今は七海さんが無事でいてくれることが、何よりも嬉しい。僕は、彼女に近づきたいという気持ちと、距離を置きたいという気持ちが入り混じっている。こんな自分でも、何かを変えられるのだろうか?

 「二人っきりだから……ぼっちじゃない、かな?」


 沈黙が続く。うう、この時間が辛い、辛すぎる。ぼっちで、この場にいるだけで僕も熱中症になりそうだ。何か話さないとと思ったその時、七海さんが笑顔で声をかけてきた。

「本当にありがとう! 君のおかげで助かったよ! 空気くん!」

 彼女の言葉が僕の心に響く。眩しい、彼女の笑顔が相変わらず強すぎて、僕はどう反応していいのかわからない。僕らの住む世界が違いすぎる。七海さんのキラキラしたオーラが、まぶしすぎる。

 しかし、彼女はふと、僕から視線を逸らした。その瞬間、僕の心は何かを感じ取った。彼女も、もしかして何かを隠しているのではないかという疑問が頭をよぎる。彼女の表情が一瞬曇るのを見逃さなかった僕は、内心で悩む。

「彼女に何があったんだろう?なんでそんなに急に表情を変えたんだろう……?」

 不安と好奇心が交錯する中、僕は彼女にそっと声をかけた。

「な、七海さん、ど、どうしたの? 何か悩み事?」

 言葉は震えていたが、彼女に対する僕の心配は本物だ。この時の僕は、もうただのぼっちではなく、彼女に寄り添いたいと心から願っていた。彼女との距離が、少しでも縮まることを願いながら。


 いや、そんなこと言われたら、僕はどうしたらいいんだ? 七海さんの笑顔に、僕の心はパニックになる。なんてことだ、これじゃまるでラブコメの主人公とヒロインのようじゃないか。でも、七海さんの表情が気になって仕方がない。いつもの彼女はこんな風に曇った顔を見せない。何か悩んでいるのだろうか?

 七海さんは、ぽつりと呟く。

「こんなんじゃ、やっぱり振り向いてくれないよね?」

 その言葉を聞いて、僕はさらに混乱した。彼女が誰かを想っているのだろうか? それとも何か別の悩みがあるのだろうか? 彼女の言葉に隠された意味が、僕には理解できない。ただ、彼女が何かに苦しんでいることは明らかだ。

 僕は、どう反応すればいいのか分からず、言葉を探す。いつものように口ごもりながらも、僕は必死に言葉を絞り出す。

「えっと、七海さん……何か悩んでるの? もしよかったら、話してみても……」

 僕の声は小さくて、緊張で震えていた。こんなにも自分が話すのが苦手だということを痛感しながらも、僕は彼女の悩みを聞きたいと思った。それが、僕にできる唯一の支援だったから。


 振り向いてくれない? その言葉が僕の頭の中でグルグル回る。七海さんが僕を見つめるその瞬間、僕の心は一瞬で沸騰した。まさか、七海さんが僕のことを…!? でも、彼女は少し顔を赤らめて、まるで腹を決めたように言った。

「空気くんなら、いいかなって。実はね、私……東條くんのことが好きなの」

 その言葉を聞いて、僕は一気に現実に引き戻された。東條くん……クラスの人気者で、スポーツも勉強もできる完璧超人。そんな彼を七海さんが好きなのか。僕はただの「空気くん」だった。

「あ、あぁ……そ、そうなんだ…」

 僕は声を絞り出すように答えた。七海さんの気持ちを知って、僕の心は複雑な感情で溢れた。嬉しいような、悲しいような、何とも言えない感じだ。

 七海さんはまた顔を上げ、僕に向かって微笑む。

「でもね、空気くんが今日してくれたこと、本当に感謝してるよ。だから、私の話を聞いてくれてありがとう」

 僕は頷くしかできなかった。少し心が軽くなったような気がした。せめてもの救いは、七海さんが僕の行動を評価してくれたことだ。

「う、うん、七海さんの役に立てて嬉しいよ……」

 そう言いながら、僕は彼女とのこの一時を大切にしようと思った。せっかくの二人きりの時間、何かいい思い出を作れたらいいなと、心の中で願う僕だった。


 しかし、七海さんの東條くんへの想いを聞いた瞬間、僕の心は一瞬で曇り、混乱に陥る。僕の中でふと芽生えていた、七海さんへの小さな期待は、冷たい現実によって突き刺される。

「東條くんに……彼女が好きなのは……」

 僕の内心は複雑な感情で渦巻く。彼女の心が他の人に向けられていることへの失望感、そして一方で、自分に向けられた感謝の言葉に抱く小さな喜び。彼女の笑顔と優しい言葉は、僕の心に甘く切ない響きを残す。

「どうして……僕は、何を期待していたんだろう……?」

 彼女への秘めた想いと、現実とのギャップに、僕は苦しむ。自分でも気づかないうちに、七海さんに対して特別な感情を抱いていたのかもしれない。その想いは、今、痛みとなって胸を締め付ける。

「でも、僕にできるのは……」

 彼女が他の誰かを想っていても、僕が彼女に何かを感じることに変わりはない。彼女の笑顔が僕の心を明るく照らし、彼女の存在が僕の日々に色を加える。だから、彼女が幸せであれば、それでいい。そう思いたい。

「七海さんが幸せなら……それでいいんだ……」

 淡い恋心と現実の間で揺れ動く僕。七海さんに対する感情をどう整理していいのかわからないまま、僕はただ、彼女が笑顔でいられることを心から願う。自分の心の中に秘めた想いは、今は小さな灯火のように、じっと僕の中で燃え続ける。


「いや、まさかそんな……!」

 僕の心は不安と困惑でいっぱいだ。今日が初めてまともに話した日で、僕はもう七海さんに心を奪われてしまったのか? そんなわけない。僕はそんな単純じゃない。ちょっと優しくされただけで、好きになるなんて……。

 僕の心は再び自己対話に陥る。状況の変化についていけず、自分の中で感情が渦巻いている。そんな時、七海さんから意外な提案が。

「ねぇ、よかったら帰るまで私たちと一緒に行動しようよ!」

 その言葉を聞いて、僕はさらに困惑する。いや、それは……ちょっときつい。七海さんが他の人を好きなのを知った後で、彼女と一緒に行動するなんて……。

 でも、七海さんは陽キャオーラ全開で、まるで断ることを許さないかのように、強引に誘ってくる。彼女のその明るさと決断力に、僕はただ圧倒されるばかり。

「あれ……僕の運命、これからどうなるんだろう……」

 心の中でそうつぶやきながら、僕はさらに不安に駆られる。今日一日で感じたこと、経験したことが、僕のこれからをどう変えていくのか。未来は不確かで、だからこそ、不安がつのる。
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