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第一章

ここから出るために 前編

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「ふ、ははははは!死ぬのが怖すぎてぶっ壊れちまったか?」

「坊ちゃん、いくら持ってるの?君、何も持ってないみたいでちゅけど」

2人の兵士が嘲るような笑い声をあげる。

それでいい、油断しろ、こっちに来い。

兵士の一人が檻の方へ近づいてくる。

「君ねえ……もう――」

宇井が鉄格子の隙間から兵士の頭を鷲掴みにする。

「スキルを発動する!」

宇井がそう宣言すると、頭を鷲掴みにされた兵士の顔がどんどん青ざめていく。

「あ、あ、ああああああああぁぁぁ!やめろ!やめ……あ、ぁぁぁ……ぁ」

兵士が発狂しながら泡を吹いて倒れた。
まるで何かに怯えるような、それこそ異形な何かを見るような目で宇井を見ながら。

「お、おい!どうした!」

もう1人の兵士が倒れた兵士に駆け寄る。

「お前……一体何を……」

やがてもう1人の兵士の体も震え始める。

「な、な、何を……」

宇井は兵士を、自分の思い通りに動く見を見つめる。

「鍵、開けて欲しいんだけど」

「わ、わかった……」

兵士がおぼつかない手つきで鍵を開け始める。

「ウ、ウイ……?」

震えた声で名前を呼ばれて、宇井はセドゥの方を振り向く。

「……大丈夫だよ」

    カチ!

宇井達を閉じ込めていた牢屋の鍵が開いた。

「行こう、セドゥ」

「……うん」






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