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36話
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プティの〈リファイン=カレント〉が咆哮する。
光学データ帯が四方八方に拡散し、壊れたドローンユニットが補助アームに接続された異形の姿。それはもはや“支援機”の姿ではない。溢れる熱量とエネルギーは、周囲の空間そのものを狂わせていた。
「どいてええええッ!! どいてよぉおおおお!!!」
暴走したプティの叫びが夜を裂く。地面が爆ぜ、光線が暴風のように襲いかかる。
だが、その一撃を受け止めたのは、しずくの〈オブシディアン=ヴェノム〉だった。
「――梨羽、お願い!」
「任せてっ!」
返答と同時、梨羽の〈スカーレット=アストレア〉が空を舞う。扇状に広がった透過フィンウィングが月光を背負い、戦場に一筋の紅を描いた。
「スカーレット・リーヴ展開……いっけぇぇぇぇっ!!」
赤い花弁状の光翼が弧を描き、プティのドローンビットを薙ぎ払う。空気を焼くような発光が視界を染め、刹那、プティの視界が閃光に奪われた。
「なにッ……!?」
しずくはその隙に距離を詰める。黒煙を纏った漆黒の装甲が接近するその様は、まさに“護るための闇”。
「私は――文哉くんの護衛官だからっ!」
しずくの膝が地を蹴り、腰を沈めてのカウンター肘打ち。プティの胸部装甲に衝撃が走る。
「私が、文哉くんを護るんだぁぁぁ!」
同時に梨羽が側面から滑り込む。ヒール部のブレードが展開され、バチバチと赤い火花を散らしながら、プティの肩部ユニットを切り裂いた。
「しずくちゃん、いっくよーっ!」
「合わせるっ!」
二人の声が重なり、動きが一致する。
〈オブシディアン=ヴェノム〉の背部から展開されたナノブレードウイングと、〈スカーレット=アストレア〉のエナジーフィンウィングが――
ひとつの光弧を描いた。
「《クロス・ガーディアン=ノヴァ》!」
しずくが突き出した両腕のナノブレードと、梨羽が広げた光翼が、螺旋を描いて融合する。
黒と紅のエネルギーが収束し、地を削るほどの圧力が生まれる。
「貴様らぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
プティが咆哮し、全ドローンを自爆モードへ移行。一瞬で過熱した光が閃光と化して襲いかかるが――
その中を、しずくと梨羽が並んで突き進んだ。
「アンタなんかに――!」
「「文哉くんの未来を、絶対に壊させない!」」
叫びとともに放たれたのは、紅蓮の刃と黒煙の槍が交差したような、融合の必殺打。
――直撃。
プティの〈リファイン=カレント〉が閃光に包まれる。
装甲が砕け、ドローンが崩壊し、仮面のようなバイザーが外れる。微かな表情が見えた。
――恐れ。驚き。そして、涙。
「……な、なんで……わたし……ただ……」
そして。
「人間に……なりたかった……だけなのに……」
その声とともに、プティの機体が崩れ落ち、地面に叩きつけられた。
残骸は、音もなく煙を上げ――静かに、燃え尽きていった。
しずくと梨羽は、その場に膝をつく。
「……終わった、の?」
「うん……」
月が、雲間から顔を覗かせていた。
燃えるような戦場に、穏やかな光が差し込む。
しずくは、梨羽の方を見て、微かに笑った。
「ありがと、梨羽ちゃん。……あたし一人じゃ、きっと無理だった」
「ふふーん♪ 当然でしょ。あたし、文哉くんのナンバー1ヒロインだもん!」
そう笑いながら、梨羽の目も潤んでいた。
✿✿✿✿
赤と黒の閃光が交錯し、戦場は地獄のような熱気に包まれていた。
文哉の〈アカツキ=バーンブレイカー:インカーネイトモード〉と、コアーの〈セレスト=ファングレア〉──その二機が衝突するたび、大地がえぐれ、空が悲鳴を上げた。
「ぬるい……ぬるすぎるのよ……男がっ!」
咆哮と共に、黒のギアが爪を振るう。
五本の獣爪が、雷撃のように迫った。
文哉は咄嗟に左肘の防御装甲を跳ね上げ、火花を散らして受け止める。
「くっ……!」
腕がしなる。反動が骨に響いた。だが、止まらない。
文哉の足元から爆発的な推進炎が噴き上がる。宙を舞い、一気に上空へ跳躍──そこから刃を構え、垂直落下の体勢へ。
「はああああああっ!!」
地を裂く一撃が、叩き込まれる。だが──
「遅いッ!!」
コアーはすでに背後に回り込んでいた。
機体の尾部から放たれたワイヤーブレードが、文哉の背部ユニットを薙ぎ払う。
──警報。損傷率、30%を超過。
視界が赤に染まりかける中、文哉は瞬時に回避旋回をかけ、体勢を立て直す。
そこへ飛び込んできたのは、まるで猛獣の咆哮のような咆哮核砲撃。
──ッッ!!
轟音。大地が砕け、衝撃で空間そのものが震えた。
砲撃の余波だけで機体の表層パネルが捲れ上がる。
だが、文哉は歯を食いしばって踏みとどまった。
「なんで、こんな……!守られてるだけの男に……男ごときにこんなに苦戦するなんて」
胸の奥に燃え上がる激情。
ノノとの記憶。泣いていた瞳。砕け散った思い。
それらが、文哉の刃に重なっていく。
〈アカツキ〉の胸部が開き、中心核が赤熱を帯びた。
「いけるか……!」
次の瞬間、コアーの機体が残像を残しながら突進してきた。
右腕の鉤爪が巨大化し、形状が“斧”へと変化する。
それは〈セレスト=ファングレア〉の切り札──「〈猛葬断鎖(フレア・エクスキューション)〉」。
照準は、文哉のコクピット。
「死ねえええええええええええっ!!」
斬撃が閃く。
文哉は咄嗟にギアをクロスさせ、受け止め──砕けた。
両腕の装甲が裂け、圧倒的な質量が胸部を叩き潰す。
「――が、あっ……!」
激突。地面が沈む。全身を衝撃が貫いた。
インカーネイトモードのフィールドがはじけ飛び、ノイズが走る。
それでも、文哉の目は折れていなかった。
「まだ……だ……!」
胸の中心核に、ノノの記憶が輝いていた。
戦いたいと願った彼女の最後の祈り。
それが、ギアの奥底で、確かに鼓動している。
「ノノ……!」
ブースターが再点火する。
黒焔が再び渦を巻き、文哉のギアがもう一度、紅に燃え上がった。
――そして、次の瞬間──
剣と爪が火花を散らし、二人の機体が空を裂く。
〈アカツキ=バーンブレイカー:インカーネイトモード〉と、〈セレスト=ファングレア〉。
互いに一歩も譲らず、超高速の格闘戦が何度もぶつかっては弾け、戦場の地形ごと変えていった。
剣と爪が火花を散らし、二人の機体が空を裂く。
互いに一歩も譲らず、超高速の格闘戦が何度もぶつかっては弾け、戦場の地形ごと変えていった。
紅と黒の閃光が駆け、獣のごとく爪が唸る。
すでに幾度目かわからない衝突。どちらの装甲も傷だらけだった。
「……ハァ、ハァ……どうして……どうして、お前が、まだ立ってるのよ……!」
コアーの叫びが、息苦しく虚空に投げつけられる。
「それは……!」
文哉が声を張り上げるその瞬間──
「――文哉くんっ!!」
激しい咆哮のような声が、空気を切り裂いた。
〈ファム=ヘヴィリオン〉。
半壊した真帆のバイオギアが、煙と火花を撒きながら戦場に舞い降りてきた。
左肩装甲は吹き飛び、脚部フレームも剥き出し。
だが、その姿には、決して折れぬ意思の光が宿っていた。
「……真帆!? ダメだ、今のお前は――!」
「……いいの……! 文哉くんと、戦いたいの……! 一緒に!」
迷いのない声。震えながらも、真っ直ぐな眼差し。
その姿に、文哉は息を呑んだ。そして──
「……ああ、分かった。一緒に、終わらせよう!」
二人が並んだ瞬間。
コアーの目が、初めて見せた色に染まる。
それは、恐怖だった。
「やめろ……! やめてよ……男と女が共に戦うなんて……そんなのは“間違い”なのよ!!」
咆哮が、響く。
赤いエネルギーが〈セレスト=ファングレア〉を包み込み、全方位へ衝撃波を放つ。
だが──文哉と真帆は、それを超えた。
「違う、コアー……!」
「私たちは……支え合って、生きるって……!」
二つの機体が、雷のように駆けた。
「そんなの、ただの理想だ!!」
「それでも、俺たちは信じてるッ!!」
コアーが絶叫し、暴れ狂うように斬撃を放つ。
狂気にも似た力が戦場を蹂躙する。だが、真帆は止まらなかった。
「うぅ……あああああぁっ!!」
全身のエネルギーを集束させ、重火器が最後の煌めきを放つ。
渾身の一撃、〈ヘヴィリオン・ハウル〉が炸裂。
無数の弾頭がコアーを包み、機体に一瞬の“硬直”が生まれた。
「今だよ、文哉くん……!!」
真帆の声が風に乗る。
文哉は全力で跳躍し、黒焔の剣を振りかざす。
「ノノ……! 真帆……みんなの“想い”で……お前を止めるッ!!」
――〈終焉紅蓮閃破(ラスト・バーニング・シンフォニア)〉!
突き出されたブレードが、コアーの胸──〈咆哮核〉を貫いた。
衝撃音。光の爆裂。
咆哮核が脈動しながら、崩壊していく。
「う……ああ……あああああああああああッッッ!!!!!」
絶叫と共に、コアーの機体が光の残滓を残して崩れた。
戦場に、静寂が戻る。
──そのとき。
『ありがとう、文哉』
優しく、懐かしい声が、風のように響いた。
『最後にあなたとたたかえて、私は……幸せだった』
ノノの幻聴。
いや、“幻”ではなかった。
これはきっと、彼女の魂が最後に残した“言葉”。
「ノノ……」
静かに呟いた瞬間、文哉の〈アカツキ=バーンブレイカー〉が再び輝く。
黒いラインがゆらゆらと空気に溶け、赤い装甲は静かに、元の“純白と紅蓮”の姿へと戻っていく。
まるで、役目を終えた魂が“帰る”かのように。
戦いは、終わった。
光学データ帯が四方八方に拡散し、壊れたドローンユニットが補助アームに接続された異形の姿。それはもはや“支援機”の姿ではない。溢れる熱量とエネルギーは、周囲の空間そのものを狂わせていた。
「どいてええええッ!! どいてよぉおおおお!!!」
暴走したプティの叫びが夜を裂く。地面が爆ぜ、光線が暴風のように襲いかかる。
だが、その一撃を受け止めたのは、しずくの〈オブシディアン=ヴェノム〉だった。
「――梨羽、お願い!」
「任せてっ!」
返答と同時、梨羽の〈スカーレット=アストレア〉が空を舞う。扇状に広がった透過フィンウィングが月光を背負い、戦場に一筋の紅を描いた。
「スカーレット・リーヴ展開……いっけぇぇぇぇっ!!」
赤い花弁状の光翼が弧を描き、プティのドローンビットを薙ぎ払う。空気を焼くような発光が視界を染め、刹那、プティの視界が閃光に奪われた。
「なにッ……!?」
しずくはその隙に距離を詰める。黒煙を纏った漆黒の装甲が接近するその様は、まさに“護るための闇”。
「私は――文哉くんの護衛官だからっ!」
しずくの膝が地を蹴り、腰を沈めてのカウンター肘打ち。プティの胸部装甲に衝撃が走る。
「私が、文哉くんを護るんだぁぁぁ!」
同時に梨羽が側面から滑り込む。ヒール部のブレードが展開され、バチバチと赤い火花を散らしながら、プティの肩部ユニットを切り裂いた。
「しずくちゃん、いっくよーっ!」
「合わせるっ!」
二人の声が重なり、動きが一致する。
〈オブシディアン=ヴェノム〉の背部から展開されたナノブレードウイングと、〈スカーレット=アストレア〉のエナジーフィンウィングが――
ひとつの光弧を描いた。
「《クロス・ガーディアン=ノヴァ》!」
しずくが突き出した両腕のナノブレードと、梨羽が広げた光翼が、螺旋を描いて融合する。
黒と紅のエネルギーが収束し、地を削るほどの圧力が生まれる。
「貴様らぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
プティが咆哮し、全ドローンを自爆モードへ移行。一瞬で過熱した光が閃光と化して襲いかかるが――
その中を、しずくと梨羽が並んで突き進んだ。
「アンタなんかに――!」
「「文哉くんの未来を、絶対に壊させない!」」
叫びとともに放たれたのは、紅蓮の刃と黒煙の槍が交差したような、融合の必殺打。
――直撃。
プティの〈リファイン=カレント〉が閃光に包まれる。
装甲が砕け、ドローンが崩壊し、仮面のようなバイザーが外れる。微かな表情が見えた。
――恐れ。驚き。そして、涙。
「……な、なんで……わたし……ただ……」
そして。
「人間に……なりたかった……だけなのに……」
その声とともに、プティの機体が崩れ落ち、地面に叩きつけられた。
残骸は、音もなく煙を上げ――静かに、燃え尽きていった。
しずくと梨羽は、その場に膝をつく。
「……終わった、の?」
「うん……」
月が、雲間から顔を覗かせていた。
燃えるような戦場に、穏やかな光が差し込む。
しずくは、梨羽の方を見て、微かに笑った。
「ありがと、梨羽ちゃん。……あたし一人じゃ、きっと無理だった」
「ふふーん♪ 当然でしょ。あたし、文哉くんのナンバー1ヒロインだもん!」
そう笑いながら、梨羽の目も潤んでいた。
✿✿✿✿
赤と黒の閃光が交錯し、戦場は地獄のような熱気に包まれていた。
文哉の〈アカツキ=バーンブレイカー:インカーネイトモード〉と、コアーの〈セレスト=ファングレア〉──その二機が衝突するたび、大地がえぐれ、空が悲鳴を上げた。
「ぬるい……ぬるすぎるのよ……男がっ!」
咆哮と共に、黒のギアが爪を振るう。
五本の獣爪が、雷撃のように迫った。
文哉は咄嗟に左肘の防御装甲を跳ね上げ、火花を散らして受け止める。
「くっ……!」
腕がしなる。反動が骨に響いた。だが、止まらない。
文哉の足元から爆発的な推進炎が噴き上がる。宙を舞い、一気に上空へ跳躍──そこから刃を構え、垂直落下の体勢へ。
「はああああああっ!!」
地を裂く一撃が、叩き込まれる。だが──
「遅いッ!!」
コアーはすでに背後に回り込んでいた。
機体の尾部から放たれたワイヤーブレードが、文哉の背部ユニットを薙ぎ払う。
──警報。損傷率、30%を超過。
視界が赤に染まりかける中、文哉は瞬時に回避旋回をかけ、体勢を立て直す。
そこへ飛び込んできたのは、まるで猛獣の咆哮のような咆哮核砲撃。
──ッッ!!
轟音。大地が砕け、衝撃で空間そのものが震えた。
砲撃の余波だけで機体の表層パネルが捲れ上がる。
だが、文哉は歯を食いしばって踏みとどまった。
「なんで、こんな……!守られてるだけの男に……男ごときにこんなに苦戦するなんて」
胸の奥に燃え上がる激情。
ノノとの記憶。泣いていた瞳。砕け散った思い。
それらが、文哉の刃に重なっていく。
〈アカツキ〉の胸部が開き、中心核が赤熱を帯びた。
「いけるか……!」
次の瞬間、コアーの機体が残像を残しながら突進してきた。
右腕の鉤爪が巨大化し、形状が“斧”へと変化する。
それは〈セレスト=ファングレア〉の切り札──「〈猛葬断鎖(フレア・エクスキューション)〉」。
照準は、文哉のコクピット。
「死ねえええええええええええっ!!」
斬撃が閃く。
文哉は咄嗟にギアをクロスさせ、受け止め──砕けた。
両腕の装甲が裂け、圧倒的な質量が胸部を叩き潰す。
「――が、あっ……!」
激突。地面が沈む。全身を衝撃が貫いた。
インカーネイトモードのフィールドがはじけ飛び、ノイズが走る。
それでも、文哉の目は折れていなかった。
「まだ……だ……!」
胸の中心核に、ノノの記憶が輝いていた。
戦いたいと願った彼女の最後の祈り。
それが、ギアの奥底で、確かに鼓動している。
「ノノ……!」
ブースターが再点火する。
黒焔が再び渦を巻き、文哉のギアがもう一度、紅に燃え上がった。
――そして、次の瞬間──
剣と爪が火花を散らし、二人の機体が空を裂く。
〈アカツキ=バーンブレイカー:インカーネイトモード〉と、〈セレスト=ファングレア〉。
互いに一歩も譲らず、超高速の格闘戦が何度もぶつかっては弾け、戦場の地形ごと変えていった。
剣と爪が火花を散らし、二人の機体が空を裂く。
互いに一歩も譲らず、超高速の格闘戦が何度もぶつかっては弾け、戦場の地形ごと変えていった。
紅と黒の閃光が駆け、獣のごとく爪が唸る。
すでに幾度目かわからない衝突。どちらの装甲も傷だらけだった。
「……ハァ、ハァ……どうして……どうして、お前が、まだ立ってるのよ……!」
コアーの叫びが、息苦しく虚空に投げつけられる。
「それは……!」
文哉が声を張り上げるその瞬間──
「――文哉くんっ!!」
激しい咆哮のような声が、空気を切り裂いた。
〈ファム=ヘヴィリオン〉。
半壊した真帆のバイオギアが、煙と火花を撒きながら戦場に舞い降りてきた。
左肩装甲は吹き飛び、脚部フレームも剥き出し。
だが、その姿には、決して折れぬ意思の光が宿っていた。
「……真帆!? ダメだ、今のお前は――!」
「……いいの……! 文哉くんと、戦いたいの……! 一緒に!」
迷いのない声。震えながらも、真っ直ぐな眼差し。
その姿に、文哉は息を呑んだ。そして──
「……ああ、分かった。一緒に、終わらせよう!」
二人が並んだ瞬間。
コアーの目が、初めて見せた色に染まる。
それは、恐怖だった。
「やめろ……! やめてよ……男と女が共に戦うなんて……そんなのは“間違い”なのよ!!」
咆哮が、響く。
赤いエネルギーが〈セレスト=ファングレア〉を包み込み、全方位へ衝撃波を放つ。
だが──文哉と真帆は、それを超えた。
「違う、コアー……!」
「私たちは……支え合って、生きるって……!」
二つの機体が、雷のように駆けた。
「そんなの、ただの理想だ!!」
「それでも、俺たちは信じてるッ!!」
コアーが絶叫し、暴れ狂うように斬撃を放つ。
狂気にも似た力が戦場を蹂躙する。だが、真帆は止まらなかった。
「うぅ……あああああぁっ!!」
全身のエネルギーを集束させ、重火器が最後の煌めきを放つ。
渾身の一撃、〈ヘヴィリオン・ハウル〉が炸裂。
無数の弾頭がコアーを包み、機体に一瞬の“硬直”が生まれた。
「今だよ、文哉くん……!!」
真帆の声が風に乗る。
文哉は全力で跳躍し、黒焔の剣を振りかざす。
「ノノ……! 真帆……みんなの“想い”で……お前を止めるッ!!」
――〈終焉紅蓮閃破(ラスト・バーニング・シンフォニア)〉!
突き出されたブレードが、コアーの胸──〈咆哮核〉を貫いた。
衝撃音。光の爆裂。
咆哮核が脈動しながら、崩壊していく。
「う……ああ……あああああああああああッッッ!!!!!」
絶叫と共に、コアーの機体が光の残滓を残して崩れた。
戦場に、静寂が戻る。
──そのとき。
『ありがとう、文哉』
優しく、懐かしい声が、風のように響いた。
『最後にあなたとたたかえて、私は……幸せだった』
ノノの幻聴。
いや、“幻”ではなかった。
これはきっと、彼女の魂が最後に残した“言葉”。
「ノノ……」
静かに呟いた瞬間、文哉の〈アカツキ=バーンブレイカー〉が再び輝く。
黒いラインがゆらゆらと空気に溶け、赤い装甲は静かに、元の“純白と紅蓮”の姿へと戻っていく。
まるで、役目を終えた魂が“帰る”かのように。
戦いは、終わった。
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