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双子の兄の憂鬱
しおりを挟むこの国の王宮で開かれる夜会のうち一年に二回、貴族なら誰でも参加出来る夜会がある。
春と秋に開かれるデビュタントの夜会だ。
デビュタントの夜会は貴族にとって、とても重要だ。
なぜなら この夜会にデビューしないと成人として認められない。
そればかりか起業も出来ないし婚姻も認められない。
毎年この国の公爵家から男爵家の十六歳になる子がいる家は、どんな事があっても夜会でデビューさせ、国王陛下から成人の証のイヤーカフを授与されるのだ。
「あら、婚約もしてないのに婚約解消? 相変わらず頭の中で花を育てているのかしら? アディは王太子殿下の婚約者ですもの。 あぁ、これからは婚約者ごっこに付き合わされなくていいのね。 王妃教育は領地でも出来るわ」
二年前、双子の妹と領地の邸に着いた時の母の言葉だ。
あ、うん。 知ってた。
「それにしても、アディがあの女の子を慕っているですって? 相変わらず旦那様は狸ね」
「「・・・・・・」」
──どうやら、僕達の父上は狸親父らしい。
私はイライジャ・オーニソガラム。
侯爵家の嫡男だ。
あの婚約解消から二年が経ち、今宵はデビュタントの夜会だ。
この夜会でアディは立太子されるジェファーソン第二王子殿下の婚約者として披露される。
私達が産まれる前から始まっていた盛大な茶番は今宵終わる。
両陛下へのデビュタント達からの挨拶が終わり、両陛下のファーストダンスで夜会が始まるはずだったのだが今宵は違う。
「レジナルド・アルストロメリア! ベッキー・デルフィニウム男爵令嬢との婚姻を許そう。三日後にデルフィニウム男爵家へ婿入りを命じる──皆も知っての通りレジナルドは我が庶子と発表していたが・・・・・・手違いであった。我が子でないレジナルドには、当然王位継承権などあるはずもない。世の子だと十七年間偽り続けていた側妃は今朝、毒杯をあおった。だが、何も知らないレジナルドには罪はない。男爵家へ婿入りする事でこの件は終わりとする」
陛下は最大の秘事の様に話すが、上位貴族、いや、王宮に出入りする貴族達にとっては公然の秘事だ。
誰がどう見ても、レジナルド元殿下の顔立ち、髪や目の色は陛下と似ていない。
因みに陛下の最愛の恋人だった側妃にも似ていない。
逆によく十四年間気が付かなかったと陛下の鈍感力に驚いてしまう。
いや、気が付かない様にイキシア公爵達が陛下よりも一枚上手だったのだろう。
「男って馬鹿よね。女は誰の子か解るけれど、殿方は生まれてこなければわからないでしょう?」とは母の言葉だ。
陛下の最愛の恋人だった女が産んだ子は産まれ落ちた時から十四年間、両親に会わせられずに育てられた。
陛下はもちろん、母親である最愛の恋人も自分の子に十四年間も会う事はなかったらしい。
会った事もない息子の為に、うちの妹と婚約させようと動いたり、陛下なりに愛情はあったのだろうが、それも全て二年前の婚約解消騒動の時に知る事になってしまったらしい。
そもそも十四年も自分の子に会わなかっ事が信じられない。
私には関係ないが我が子に会いたいとは思わなかったのだろうか。
今宵、妹が王太子の婚約者だと発表され、ついでに私の婚約も発表される。
私の婚約は貴族達からの反対があるかも知れないが『フィアー嬢には男女関係なく一人世継ぎを産んで欲しい。その子を世の次の王にし、婚約者にオーニソガラム家の嫡男の子を据えたいと思っておる。』との前国王陛下の遺言なのだから認めざる負えないだろう。
フィアー王妃が産んだ、私が産まれる前から決まっていた婚約者。
王妃様が産んだのは男女の双子で、その二ヶ月前にはオーニソガラム家にも男女の双子が誕生していた。『奇跡だ!』と悦ばれた前国王陛下はフィアー王妃の子を何方共婚約させたのだ。
まだ、発表されていないが憂鬱だ。
婚約に不満はない。
私は婚約者を愛しいと思っている。
ただ、王妃の子何方もが同じ家の双子と婚約している事で起こりうる些事が憂鬱なのだ。
私達の双子の片割れが何れ、この国の国王夫妻になるのだ。私は婚姻したら、領地で暮らすつもりだ。
王都には両親が暮らせばいい。
王家の事情で存在を秘匿されていた私の婚約者。
彼女には領地で穏やかに過ごしてほしいから。
今までずっと一緒にいた私の半身これからは別々の人生だ。幸せになるんだよ。
これから婚約発表される妹をジェファーソン殿下の所へエスコートする。
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