血術使いだから今までは倫理的に本気出せなかったけど追放されたしもう好き放題にする。戻って来いって言われてももう遅い。むしろお前の血全部よこせ

ユウ

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3話 お前の血を全部よこせ

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「はぁ……はぁ……」 

「まさか、てめぇごときに二十人もやられるとはな。でも、これで打ち止めだなぁ」 

 辺りは死屍累々。血の吹き溜まり。
 血のストックはもう無くなった。かなり頑張った方だ。だが、それでも敵の数は依然と減らない。むしろ増えてるまである。
 糞、僕一人に何人用意してんだよ。血が足りない。頭もクラクラする。詰みか。

「見るに耐えんな」
 銀髪ゴスロリ幼女メアリーが屋根からふわりと降りてきた。

「何さ。手を貸すのは嫌だったんじゃないの?」

「ふんっ、一つ年長者として助言をしてやろうかと思ってのう。さて、お主いつまで力を使わないつもりじゃ?」

「おいおい、いきなり現れて何のつもりだぁ? ここは託児所じゃねぇぞ?」

「黙ってろ下種が。妾が話している」

「な、何だぁ、てめぇ?」

 怯えたように声音が揺れる暗殺者。幼女にビビるなよ。

「貴様は自分の血しか使ってないじゃろ。今更何に拘る?」

 メアリーは暗殺者など目にも止めず言葉を重ねる。


「……」

「妾には理解出来ないが、貴様が勇者という幻想に固執していたのは知っている。しかしだな、今更そんなもの無価値じゃろうて。その幻想に貴様は何をされた。期待して夢想して自己を押しつぶした先に何が残った!!!」


 自然と拳に奥歯に力が籠る。そうだ。今更何に拘っている。

「良いか。貴様は今まで己が宿命から目を背けていた。悪いとは言わん。それも一つの道じゃ。しかし、これからはーー」

「もう良い。分かった、分かったよ。アンタに焚きつけられるのは癪だけどやってやる。やってやるよ」

 小鹿のように震える足を叱咤してフラフラと立ち上がる。あぁ、そうだ。その通りだ。全くもって一分の隙もないぐらいにその通りだ。

「あぁ、糞。全くもってその通りだよ。今更何に拘る。先に捨てたのはそっちなんだ。なら僕はもう好き勝手にやってやるさ」

 !!
 その言葉を聞くとメアリーは満足そうに頷き、また屋根上へと飛んでいった。


「はっ! 最後の遺言は終わったかよ!! どの道テメェはここで死ぬ運命なんだよぉ!!!」

「うるせぇよ。shot!!」

 血液の弾丸が暗殺者のうち一人の額を貫いた。即死だ。

「馬鹿の一つ覚えかよ。てめぇの血術は確かに強力だが乱発できねぇだろ?」

 暗殺者の言う事は間違っていない。【shot】は血液の弾丸を打ち出す。だから使い続ければ当然血液は失われ、最悪死に至る。

「よく研究しているみたいだね。まぁ概ねその通りだよ。僕ら血術使いは自分の体内にある限られた血液しか使えない。そう聞いているでしょ? でもね、別にそんな事ないんだよ」

「へ?」

「つまりこういう事。Absorb」

「血が吸われている……?」

 幸い派手に戦闘したせいか血はそこら中にある。
 辺りに撒き散らされた血が澱み渦巻きせめぎ合う。そしてそれは川の濁流の如く僕へと駆け込む。
 あぁ、血が自分のものになっていく。今まで支えていた量とは桁違いだ。

「そ。今まで勇者パーティーの一員だったから倫理感を考慮して使ってなかったんだけどね。だけどもうそんな事気にする必要もない。つまり今僕は血術を無制限に使えるんだよ」


「はっ! 何をビビる必要がある! 所詮勇者パーティーを追放された落ちこぼれだろうがっ! 数で押し切ればなんて事ねえ、全員でやっちまえ!!!」


「circle-edge!!」

 ズパンッ!!!!!!!!!

「は?」

「さっきから『は?』としか言ってないじゃん。ひょっとして鳴き声?」

 間抜け面を晒す暗殺者。まぁ、気持ちは分からないでもない。
 先程から使っていた円状に駆ける血刃。同じもには変わりない。ただし、範囲が桁違いだ。先程までのが刃渡り一〇センチだとしたら、今のはざっと三メートル。
 暗殺者集団も一気に一〇以上が斬り伏せられた。


「て、てめぇ……!」


「めんどくさいな。これで一気にかたしてやる。demon‘s arm!!」

 その言葉を起動音に右腕に血が収束していく。そして巨大な腕を形成。それは緋き緋き巨大な腕。威圧感が凄まじく大人の男ですらこの掌でなら握り潰せることだろう。まさに悪魔の腕。


「ば、化け物……」

「あぁ、その通りだよ。だけどそのおかげでテメェらをぶちのめせる」

 一歩足を進めるごとに暗殺者達は怯えたように後ずさる。だけど殺しに来たんだ。ぶっ飛ばされる覚悟はあるはあるはずだ。思いっきりやってやる。

「うらああああああああああああああああああ!!!!!!」


 振われた悪魔の腕はまるで嵐の中吹き飛ばされた大木。受けるものからしたら災害でしかないだろう。
 血で形成された腕は暗殺者達を余すことなく吹き飛ばした。


 ◆

 事は終わった。あれだけいた暗殺者集団は全員床に伏せている。怪我は酷いが命ぐらいは残っているだろう。

「ひ、ひぃぃ!!!!」

 残った暗殺者は頭らしき一人のみ。その一人も尻餅をついて戦意喪失したかのように顔を青ざめさせている。よくよく見ればその股からは湯気が湧き上がっている。

「た、助けてくれ……! し、仕方なかったんだ!!」

 多少同情はするが容赦するつもりもない。もう僕はやりたいようにやるつもりなのだから。

「駄目だ。寄越せ。お前の血を全部寄越せ」



 ◆

「ほぉ、貴様にしては派手にやったのぅ」

「ほとんど殺してないからセーフ」

 メアリーが呆れたように見つめてくる。僕らの後ろにはおびただしい数の暗殺者達が屍のように倒れている。なかなかにエグい図だ。
 まぁ、あれだ色々と鬱憤が溜まってたんだよ。しょうがないね。
 それでも何人かは死んだにせよほとんど命に別状がないぐらい抑えたのだから、むしろ褒めて欲しい。
 あ、もちろん血は死なない程度に吸収させてもらいました。これでまた血術が使い放題だぞぉ。ウヒヒ。

「ククッ……やはり貴様は見込みどおり男だ」

「何さいきなり気色悪い」
 このニタニタと嗤う幼女を見てるいると何故かこう悪寒がする。

「そう言うな。妾は貴様という存在をずっと待っていたのじゃからの」

 あんまりにも真っ愚な言葉を言うものだから、思わずドキリとした。
 そしてその深紅の瞳が放つ眼差しはどこまでも柔らかく暖かい。

「やはり貴様は妾が同胞たる存在だ。ヒトラ・ブラドーー妾の伴侶となれ」 

 どこからか鐘が鳴る。大きい大きい鐘がゴーンゴーンと。
 そして黄昏時に街が染まる中、白銀髪の幼女は微笑みながら僕に手を伸ばしていた。



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