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不穏な世界
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どういうことかな? どういうことなんだろう? 姫がいない? それってどういうこと?
「な、 何か間違いが……」
何かってなにが? なんの間違い? 間違いってなに? なにがどこでいつなんの間違いを起こしているんですか?!
「どういう……」
調査ミス? そんな……陛下直々のご命令と長官が仰られた、それも密命で……間違いなんて、接触すべき姫がいらっしゃらないなんて、そんなあまりにもお粗末な初歩的ミス、有り得るだろうか? 有り得ない。断じて。誰が調査したにしろ、判断される長官にミスなんて有り得ない。だけど、調査報告の何を見て判断されたんだろう?
「……マイリク見たとか?」
僕はもういっぱいいっぱいで周りが見えなくなっていることに、梅先氏から声を掛けられて初めて気が付いた。
マイリク? なんでしたっけ? あぁ! えーと就職活動情報サイトですね。科戸さんに見せてもらったことあります。
「マイリク? マイリクルートですか?」
まさか、調査した人、長官にマイリク情報見せて、それ見て長官もOK出したとか?……いやいやいや。ないです。ないですよ。だけど科戸さん、なんであのときマイリクサイト見ていたのかな?
「えっと会社の写真とかが……」
そう言えば僕がこの世界に慣れるための訓練期間、トレーニング施設として通っていた職業訓練校にはその類の情報誌は置いてなかったですね。閲覧するのはもっぱらハローワークが提供している求人情報ばかりで。卒業の頃には、ハローワークに求人を出されている会社の方や卒業生が直接訓練校まで会社説明にいらっしゃったりもしてましたっけ。
そうですよ。僕、わざわざトレーニング期間、それもこの世界で2年間という時間まで頂いての潜入任務なんです。なかなかの準備期間ですよ。それはもう一大ミッションだと思います。まずは姫に接触し、そして姫に陛下からの……でも、その訓練期間も2年間だったはずが半年になっちゃいましたけどね。あれ? やっぱり当初からおかしいんじゃないですか? そうそう。職業訓練校の無料2年間コースが、もう何年も前にレンホー斬とか言う大技で滅多切りされて半年になってたって。僕、この世界に初めてやって来て、入校手続きのために初めてハローワークに行った時に知ったんです。あれ? やっぱりミスなの? どういうこと? えーっと……そうか! 情報省のミスでなければ、この世界のミス!
「わ、わたし、間違って配属されてませんか?」
「そ、んなことないと思うよ? SE志望でしょ? 総務は募集……してたかな? オペレーターもどうだったかな」
僕が努めて冷静にこの混乱する状況を打破するための第一手は瞬時に潰えた。えっと……。鬼切さん?
「うん。おとこ。ただ若い頃はヒール履いた美人に見えたとかで何度もナンパされたらしいよ」
おとこ……男性……僕は今女性……待って。姫はこの世界ではもしかしたら僕みたいに……びじん……美人!? 陛下のご令嬢、王女でいらっしゃる姫ですからそれはそれはお美しいに決まってます!! 姫はお美しくてそれはそれはお優しい……。え? 梅先氏。今なんておっしゃいましたか?
「ころ……殺されちゃう?」
「うん。気を付けてね」
梅先氏。真面目な顔と声が言葉に真実味を増して恐いです。姫はそんなマルスさんみたいに戦いに明け暮れるようなことは……ないですよ。ないない。だいたい殺されちゃうってこの世界では、大変なことじゃないんですか? 僕、困ります。殺されるなんて絶対にダメです。そんな簡単に大罪を犯してしまうような人間は絶対に姫ではありません。ただの危険人物です。そんな人間には近付かない方がいいですよ。梅先氏も。
「……あまり近付かない方が……」
「うん。ごめんね。鬼切さん、僕らの上司なんだ」
僕の状況打破第二手は打つ前に潰えたが、ようやく意思疎通の出来たとてもまともそうに見える人間、梅先氏をある日目の前で殺されたりはしたくなかったので、控えめに、だがはっきりと危機回避の初歩中の初歩、“危険には近付きません” をお伝えしてみた。だが、梅先氏の柔和な顔から出てきた言葉にその初歩第一歩はすぐさま上げた足の着地点を見失った。
えっと……上司って、その、つまり、所属するグループの長、ですよね。命令を下す人ってことですよね。それってその……死になさいって言われたら切腹したり、殺してきなさいって言われたら暗殺してこなきゃいけないってことでしょうか。……僕、前職は情報省の日陰も日陰、至って温厚平和ななんでもやる課で、主な業務はデスクワーク。時々落し物とか紛失物とか探しに行ったり、次元の綻び調査とか痕跡調査とか地味なフィールドワークしかしたことないんですけど。
「な、 何か間違いが……」
何かってなにが? なんの間違い? 間違いってなに? なにがどこでいつなんの間違いを起こしているんですか?!
「どういう……」
調査ミス? そんな……陛下直々のご命令と長官が仰られた、それも密命で……間違いなんて、接触すべき姫がいらっしゃらないなんて、そんなあまりにもお粗末な初歩的ミス、有り得るだろうか? 有り得ない。断じて。誰が調査したにしろ、判断される長官にミスなんて有り得ない。だけど、調査報告の何を見て判断されたんだろう?
「……マイリク見たとか?」
僕はもういっぱいいっぱいで周りが見えなくなっていることに、梅先氏から声を掛けられて初めて気が付いた。
マイリク? なんでしたっけ? あぁ! えーと就職活動情報サイトですね。科戸さんに見せてもらったことあります。
「マイリク? マイリクルートですか?」
まさか、調査した人、長官にマイリク情報見せて、それ見て長官もOK出したとか?……いやいやいや。ないです。ないですよ。だけど科戸さん、なんであのときマイリクサイト見ていたのかな?
「えっと会社の写真とかが……」
そう言えば僕がこの世界に慣れるための訓練期間、トレーニング施設として通っていた職業訓練校にはその類の情報誌は置いてなかったですね。閲覧するのはもっぱらハローワークが提供している求人情報ばかりで。卒業の頃には、ハローワークに求人を出されている会社の方や卒業生が直接訓練校まで会社説明にいらっしゃったりもしてましたっけ。
そうですよ。僕、わざわざトレーニング期間、それもこの世界で2年間という時間まで頂いての潜入任務なんです。なかなかの準備期間ですよ。それはもう一大ミッションだと思います。まずは姫に接触し、そして姫に陛下からの……でも、その訓練期間も2年間だったはずが半年になっちゃいましたけどね。あれ? やっぱり当初からおかしいんじゃないですか? そうそう。職業訓練校の無料2年間コースが、もう何年も前にレンホー斬とか言う大技で滅多切りされて半年になってたって。僕、この世界に初めてやって来て、入校手続きのために初めてハローワークに行った時に知ったんです。あれ? やっぱりミスなの? どういうこと? えーっと……そうか! 情報省のミスでなければ、この世界のミス!
「わ、わたし、間違って配属されてませんか?」
「そ、んなことないと思うよ? SE志望でしょ? 総務は募集……してたかな? オペレーターもどうだったかな」
僕が努めて冷静にこの混乱する状況を打破するための第一手は瞬時に潰えた。えっと……。鬼切さん?
「うん。おとこ。ただ若い頃はヒール履いた美人に見えたとかで何度もナンパされたらしいよ」
おとこ……男性……僕は今女性……待って。姫はこの世界ではもしかしたら僕みたいに……びじん……美人!? 陛下のご令嬢、王女でいらっしゃる姫ですからそれはそれはお美しいに決まってます!! 姫はお美しくてそれはそれはお優しい……。え? 梅先氏。今なんておっしゃいましたか?
「ころ……殺されちゃう?」
「うん。気を付けてね」
梅先氏。真面目な顔と声が言葉に真実味を増して恐いです。姫はそんなマルスさんみたいに戦いに明け暮れるようなことは……ないですよ。ないない。だいたい殺されちゃうってこの世界では、大変なことじゃないんですか? 僕、困ります。殺されるなんて絶対にダメです。そんな簡単に大罪を犯してしまうような人間は絶対に姫ではありません。ただの危険人物です。そんな人間には近付かない方がいいですよ。梅先氏も。
「……あまり近付かない方が……」
「うん。ごめんね。鬼切さん、僕らの上司なんだ」
僕の状況打破第二手は打つ前に潰えたが、ようやく意思疎通の出来たとてもまともそうに見える人間、梅先氏をある日目の前で殺されたりはしたくなかったので、控えめに、だがはっきりと危機回避の初歩中の初歩、“危険には近付きません” をお伝えしてみた。だが、梅先氏の柔和な顔から出てきた言葉にその初歩第一歩はすぐさま上げた足の着地点を見失った。
えっと……上司って、その、つまり、所属するグループの長、ですよね。命令を下す人ってことですよね。それってその……死になさいって言われたら切腹したり、殺してきなさいって言われたら暗殺してこなきゃいけないってことでしょうか。……僕、前職は情報省の日陰も日陰、至って温厚平和ななんでもやる課で、主な業務はデスクワーク。時々落し物とか紛失物とか探しに行ったり、次元の綻び調査とか痕跡調査とか地味なフィールドワークしかしたことないんですけど。
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