おにぎりレシピ

帽子屋

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はじまっていた世界 12:00PM

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僕は粛々と就業規則に目を通していたが、どこかのサイトから拝借&コピー&ペースト的な手作り感溢れるガイドブックにちょっと退屈してきたのもあってドアの向こう、外界の世界の音に耳を澄ませてみた。結論から言えば、僕は心底後悔した。
ああ。聞かなければ良かった……。

驚きと呆れを通り越した感嘆詞、その次に静かだが空気の流れを凍らせるような確かな怒り、憤懣を露にした声と沈黙。有無を言わさない冷徹な命令に、溜息と命乞いをするような悲痛な呻き、引っ立てられ、引きずられる哀れな声……最後はこの薄氷の緊張感を微塵も感じさせないほんわかとした「あらあら まあまあ」「お願いしますねぇ」「気をつけていってらっしゃい」手でも振って幼児をお使いに出したような声……なんで? 最後はよくわからなかったけど、この小さな閉ざされた部屋の外では恐ろしい出来事が巻き起こっているようだった。そのうち断末魔の叫びとか、引き裂かれた痛みにもだえ苦しみ泣き叫ぶ声とか聞こえてくるんじゃないかしら。それじゃ僕たちの世界、それも帝都でも限定された区域、或いは中央から遠く外れた危険な地域の様相を呈している。
ああ。まさかこの世界がこんなに危険な世界だったなんて。
この星のこの地域のこの国のこの都市って、この世界の中でも比較的平和な地域で人間社会もそれなりに発達してきているって聞いてたのに。全然ですよ。どこが平和なものですか。本当にもう調査不足ですよ。向こうに帰ったらどなたが調査したのか絶対に調べよう。……帰る……無事に帰れるのかな。心底不安になってきた。だって僕、やっぱり殺されちゃうのかもしれない。

“Curiosity killed the cat” 好奇心は猫をも殺す。

うまいこといいますよね。僕は、そばだてた耳をスコティッシュフォールドのように折りたたんで、聞いてしまったすぐそこの阿鼻叫喚の風景に落ち込み首を落とし、ついさっきまで読んでいた就業規則の上におでこをのせてみた。
そう言えばこの就業規則、ハラスメントについては何一つ書かれてなかったな。そんな規定はハナから想定されていないということなんですね。むしろ、力こそ全て、ハラスメント上等みたいな感じなんでしょうか……僕はますます沈鬱な気分になった。泣きそう。
科戸さんがいたら「ちょっと。凹ちゃん(ぺこちゃん)。凹み過ぎるとウットオシイわよ」と地球上のどこかにある夢の国からやってきた永遠の6歳には申しわけない呼称で呼ばれるときのように僕は凹んでいた。そんなこと言われても仕方ないじゃないですか。僕にはなんの力もなく……僕がぶつぶつと呟いていると突然部屋のドアが大きな音を立てて開き、僕は驚きのあまり死ぬとこでした。
僕はそっと折れ耳にして外界の音をシャットアウトしていたために、近付いてきた足音にも全く気付かず、最大に不意をつかれて驚きのあまり変な声が出て心臓が止まるかと思った。ツクリモノの心臓(ハート)だけど、ここで止まったらまずいでしょ。死んじゃうでしょ。
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