おにぎりレシピ

帽子屋

文字の大きさ
43 / 74

13:30

しおりを挟む
何ごと?

目を白黒させた僕を、迅速に席へと連れて行くとテキパキと椅子を引き座らせ、そしてピタリと机に挟んだのは、何をしてきたのか息の上がった梅先氏だった。いったいなにごとかと尋ねようとした僕の視線に、ピタリと目を合わせコクリと頷き返してきたので、何だか全くよくわからなかったけどされるがまま大人しく電源の入っていない真っ暗なディスプレイを見ていることにした。その後ろでは、息を切らすどころか、ゼーゼーと変な呼吸音で喘いでいる、まだまだ寒いこの季節になぜか上着を着てない男性。寒そうな姿のに、顔が赤いのは寒さのせいではないらしい。その証拠に顔に汗まで光ってる。

何やってきたんだろう?

その男性は震える手で大きく向こうの方に向かって、息も絶え絶え声も出せない状態にも関わらず、あっちへ行けと何かに手を振っている。その腕の往来の先には、ほんの数時間前なのに、とても長く遠くに感じる今朝、驚愕の未知との遭遇の前、古津と名乗ってコンビニへ行ってしまった同期であることに気付いた。
その古津さんは、自席だろうか最後の力を振り絞って電源を入れたパソコンの前で潰れたカエルみたいになった男性に、深々と頭を下げている。そのカエルは、なんとなく親指を上げて応えているようだった。随分と中途半端なサムズアップですね。だけど……。

何があったんだろう?

古津さんは随分と今朝の態度とは趣の違う、本当の新入社員みたいになっていた。
何、何、何、なになに???だらけの僕が横を向いた梅先氏と目が合ったのと、その更に奥にあった何か、がゆらりと動き出したのはほぼ同時だったように思う。

何かを察知したかのように突然、だが重々しく動き始めたソレは、窓から入る日差し、室内の光を遮るためか、或いはこの世界の全てを遮断するためなのか、すっぽりと覆われた上質そうな生地のその奥、深い底知れぬ闇のような深淵から鈍い二点の光を鈍く放つと、ゆっくりと立ち上がった。
ほんの数メートル離れたところからソレを見ていた僕はすんでのところで悲鳴を堪えた。

何アレ?!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

課長と私のほのぼの婚

藤谷 郁
恋愛
冬美が結婚したのは十も離れた年上男性。 舘林陽一35歳。 仕事はできるが、ちょっと変わった人と噂される彼は他部署の課長さん。 ひょんなことから交際が始まり、5か月後の秋、気がつけば夫婦になっていた。 ※他サイトにも投稿。 ※一部写真は写真ACさまよりお借りしています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

雪の日に

藤谷 郁
恋愛
私には許嫁がいる。 親同士の約束で、生まれる前から決まっていた結婚相手。 大学卒業を控えた冬。 私は彼に会うため、雪の金沢へと旅立つ―― ※作品の初出は2014年(平成26年)。鉄道・駅などの描写は当時のものです。

一億円の花嫁

藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。 父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。 もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。 「きっと、素晴らしい旅になる」 ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが…… 幸か不幸か!? 思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。 ※エブリスタさまにも掲載

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

処理中です...