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13:30と0と1の間の世界
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立ち上がったそれは、かつてダンテさんが登ったとかいう山の頂にも見え、足元からはそれこそコキュートスの冷気でも噴出させているんじゃないかしらと見まごうような、全てを凍りつかせ氷の彫像に変えてしまいそうな深く底知れない恐ろしく冷たい空気が漂い立ち上っている。それは腕らしきもので(……腕、きっと腕、腕に違いないです!)上半身をすっぽりと覆っていた濃い色の暗雲のごとき上着を、するりと取り払うと机の上に置き、ガラリと安っぽい金属が鳴る音に僕が慄いたことなど全く気にも留めない様子でそのまま机の引き出しの中から何かを掴みとった。
な、なにを取り出したの? まさか……断魂の鎌? 断罪の剣? ……とか?
あまりの情景にパニックに陥った僕は、この世界の一般的社会のどこにでもありそうな、今注文したらきっと明日には届けてもらえるほど凡庸且つコスパ重視の業務用机の引き出しから出てくるはずのない品々を想起し固唾をのんだ。そういえば、やはり引き出しにタイムマシンを隠し持っている一般家庭の調査依頼があったとかなかったとかそんなのが、ここに来る前に読んだ資料の間から一枚ひらりと舞い落ちて拾い上げたのを思い出した。
結局あれ、どうしたんだろう? 調査地域、この国でしたよね? 今から僕が調査に行ってもいいのかな。行きたいな。今すぐに。出来ればコンマミリ秒と待たずに出掛けたい。
……。
ダメ。
ダメダメダメダメ。逃げちゃダメ!
現実逃避に走りかけた僕は、心の内で激しく頭を振って気を取り直してもう一度その得体の知れない何かを確認しようと試みた。
結果。
うん。ダメ。やっぱり恐くて直視できない!(涙)
瞬間挫折。実際、僕にはその手に握られた何かも露になったはずの頭部も、足元から噴出している異様な冷気に覆われて霧がかかってよく見えず、頭部の奥に光る不気味な二つの光しか確認出来ない。ゆらりと机の前に出て前進を始めたそれは、一歩踏み出すごとに禍々しい空気を容赦なく立ち上らせている。古の解き放ってはならないと結界に閉じ込められた獣が眠りから覚めたばかりのようだ。
僕、もう限界かも……。と言うよりも、何よりも、驚くべきことはですね……ここにいらっしゃる人間の皆さんは、これがここにいてこの状況で大丈夫なんですか?!
大声で周囲に語りかけたくなったが微塵も動くことは許されない圧倒的な威圧感の前に、科戸さんへの緊急連絡を取りたくてもスマホに手が届かない。そして何より、僕の頭部と顔面にあるセンサーの極僅かな稼動範囲で見て聞く限り、隣にいる梅先氏と1メートルほどの通路隔ててすぐそこにいる男性は既に石化か氷彫のごとく固まっているが、数メートル離れた場所にいる他の人間たちは何も気にしていない。どころかこっちを見てもいない。
どういうこと?! 何で気付かないの?!
周りの視線があろうがなかろうが、進路を阻む者がいようがいまいが、関係なさそう、気にもしなさそう、だって運悪く進路にぶつかり冷気に触れて氷付けになった人間がいたとしても踏んづけて粉砕して進んでいきそう、そもそも気付きもしなさそうな獣の鈍く光る双眸は真っ直ぐと、だがどこを見るわけでもなく、しかし獣じみた生々しい足取りではなく測ったような歩幅で僕たちの間を抜けてドアを開けると廊下へとその姿を消していった。
な、なにを取り出したの? まさか……断魂の鎌? 断罪の剣? ……とか?
あまりの情景にパニックに陥った僕は、この世界の一般的社会のどこにでもありそうな、今注文したらきっと明日には届けてもらえるほど凡庸且つコスパ重視の業務用机の引き出しから出てくるはずのない品々を想起し固唾をのんだ。そういえば、やはり引き出しにタイムマシンを隠し持っている一般家庭の調査依頼があったとかなかったとかそんなのが、ここに来る前に読んだ資料の間から一枚ひらりと舞い落ちて拾い上げたのを思い出した。
結局あれ、どうしたんだろう? 調査地域、この国でしたよね? 今から僕が調査に行ってもいいのかな。行きたいな。今すぐに。出来ればコンマミリ秒と待たずに出掛けたい。
……。
ダメ。
ダメダメダメダメ。逃げちゃダメ!
現実逃避に走りかけた僕は、心の内で激しく頭を振って気を取り直してもう一度その得体の知れない何かを確認しようと試みた。
結果。
うん。ダメ。やっぱり恐くて直視できない!(涙)
瞬間挫折。実際、僕にはその手に握られた何かも露になったはずの頭部も、足元から噴出している異様な冷気に覆われて霧がかかってよく見えず、頭部の奥に光る不気味な二つの光しか確認出来ない。ゆらりと机の前に出て前進を始めたそれは、一歩踏み出すごとに禍々しい空気を容赦なく立ち上らせている。古の解き放ってはならないと結界に閉じ込められた獣が眠りから覚めたばかりのようだ。
僕、もう限界かも……。と言うよりも、何よりも、驚くべきことはですね……ここにいらっしゃる人間の皆さんは、これがここにいてこの状況で大丈夫なんですか?!
大声で周囲に語りかけたくなったが微塵も動くことは許されない圧倒的な威圧感の前に、科戸さんへの緊急連絡を取りたくてもスマホに手が届かない。そして何より、僕の頭部と顔面にあるセンサーの極僅かな稼動範囲で見て聞く限り、隣にいる梅先氏と1メートルほどの通路隔ててすぐそこにいる男性は既に石化か氷彫のごとく固まっているが、数メートル離れた場所にいる他の人間たちは何も気にしていない。どころかこっちを見てもいない。
どういうこと?! 何で気付かないの?!
周りの視線があろうがなかろうが、進路を阻む者がいようがいまいが、関係なさそう、気にもしなさそう、だって運悪く進路にぶつかり冷気に触れて氷付けになった人間がいたとしても踏んづけて粉砕して進んでいきそう、そもそも気付きもしなさそうな獣の鈍く光る双眸は真っ直ぐと、だがどこを見るわけでもなく、しかし獣じみた生々しい足取りではなく測ったような歩幅で僕たちの間を抜けてドアを開けると廊下へとその姿を消していった。
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