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昼休憩後の世界(8)
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松土さん、と仰られる方のデータは無情にもクリック一つで消え、工場出荷状態に戻ったパソコンが僕の前に現れた。データを残したままリカバリすることも可能らしいが、梅先さんは「絶対に鬼切さん、この端末、確認すると思う。松土さんのデータを残していることが知れたら、『俺の指示と違うようだが?』とか何とか言い出して何をされるかわからないから危険を冒すことは避けよう」と、恐ろしく真剣な眼差しと似ているような似てないような物真似で言うので、僕は無言でコクコクと頷いた。松土さん、どなたか存じ上げませんが、どうか僕にデータ消失の恨みや呪いをかけないで下さい。かけるなら、鬼切さんに。多分、相当の魔法や呪いでもないと、効果出ないと思いますけど。僕は心の中で呟いた。
「OSが起動したらネットワーク設定して、ソフト入れないといけないよね。ソフトはどこにしまってあるかな。物置にしまい込んだままっだっけ……」
梅先さんは、立ち上がってフロアの奥の方を眺めるが「新香さんまだ来てないのかなあ」と目当ての人間は見つからなかったようだ。
「鳴海さん、一緒にソフト探しに行こうか。ついでに物置も案内するよ」
物置? 資材庫とか物品室とかそう言うのではなく物置?
物置と聞いた僕は、やはり科戸さんから「世代と文化の勉強になるわヨ」と言われて半ば強制的に見るようになった毎週日曜日の夜6時30分から始まるアニメの主人公宅の庭にある物置を思い出していた。まさかこのビルに縁側でお茶を飲みながらのんびり光合成するご老人が憩えるような中庭があるとも思えないし、やはりその庭に置かれているような物置があるとも思えないけど……と、僕は梅先さんについて席を離れ、そして獣が出入りしたドアを抜け廊下に出ると、梅先さんは薄暗い廊下の先に向けて歩き、いつも逃げ出しているミドリ君が、これまた薄暗く灯っている重たいドアを開けた。
えっと。それ、開いて大丈夫な扉、ですよね。開けた途端に首がややこしいことになっている番犬さんたちが飛び出すとかないですよね? 大丈夫ですよね? 今までの数時間で相当打ちのめされていた僕は、疑心暗鬼もいいところ、ここが次元数の低い恐ろしく辺鄙な世界で僕のようなヨリナシですら、潜入調査させてもらえるような瑣末な世界だと言うことはすっかり忘れていた。もう何が起きてもおかしくない。僕は変な緊張感のまま、梅先さんの後を追った。
重たい扉は会社フロアと同じく蝶番が壊れているような音を立てて開き、大きな音を立てて閉まったので僕は驚いて肩を跳ね上げ、この世界ではない悲鳴を上げてしまったが梅先さんには聴こえなかったようだった。番犬さんも、ここに留まっている古い人たちも、別世界の人たちも出てこなかったが、薄暗い蛍光灯だけが点々と灯る、薄暗くて非常時に駆け出したら転んで怪我しそうな非常階段を、コツンコツンと足音を響かせながら梅先さんは降りていった。
「OSが起動したらネットワーク設定して、ソフト入れないといけないよね。ソフトはどこにしまってあるかな。物置にしまい込んだままっだっけ……」
梅先さんは、立ち上がってフロアの奥の方を眺めるが「新香さんまだ来てないのかなあ」と目当ての人間は見つからなかったようだ。
「鳴海さん、一緒にソフト探しに行こうか。ついでに物置も案内するよ」
物置? 資材庫とか物品室とかそう言うのではなく物置?
物置と聞いた僕は、やはり科戸さんから「世代と文化の勉強になるわヨ」と言われて半ば強制的に見るようになった毎週日曜日の夜6時30分から始まるアニメの主人公宅の庭にある物置を思い出していた。まさかこのビルに縁側でお茶を飲みながらのんびり光合成するご老人が憩えるような中庭があるとも思えないし、やはりその庭に置かれているような物置があるとも思えないけど……と、僕は梅先さんについて席を離れ、そして獣が出入りしたドアを抜け廊下に出ると、梅先さんは薄暗い廊下の先に向けて歩き、いつも逃げ出しているミドリ君が、これまた薄暗く灯っている重たいドアを開けた。
えっと。それ、開いて大丈夫な扉、ですよね。開けた途端に首がややこしいことになっている番犬さんたちが飛び出すとかないですよね? 大丈夫ですよね? 今までの数時間で相当打ちのめされていた僕は、疑心暗鬼もいいところ、ここが次元数の低い恐ろしく辺鄙な世界で僕のようなヨリナシですら、潜入調査させてもらえるような瑣末な世界だと言うことはすっかり忘れていた。もう何が起きてもおかしくない。僕は変な緊張感のまま、梅先さんの後を追った。
重たい扉は会社フロアと同じく蝶番が壊れているような音を立てて開き、大きな音を立てて閉まったので僕は驚いて肩を跳ね上げ、この世界ではない悲鳴を上げてしまったが梅先さんには聴こえなかったようだった。番犬さんも、ここに留まっている古い人たちも、別世界の人たちも出てこなかったが、薄暗い蛍光灯だけが点々と灯る、薄暗くて非常時に駆け出したら転んで怪我しそうな非常階段を、コツンコツンと足音を響かせながら梅先さんは降りていった。
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