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昼休憩後の世界(9)
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こんなところに物置、あるのかなあ。なんだかやっぱり出てきちゃいけない色んなモノを閉じ込めておく場所の雰囲気満載なんだけど……。幽閉されたアレとか、封印されたアレとか、目に付いたらいけないアレとか、調査通報しなきゃいけないアレとか、存在しちゃいけないアレとか……僕の予感は遠からず当った。ちょっと想像とは違う意味で。
薄暗い階段を1階と半分下りて、中二階の踊り場からドアを開けて僕たちはまた廊下に出た。廊下と言うには天井が低くますます薄暗い。洞窟か何かの巣穴かそんな場所にも見えなくはない。そこに並ぶ幾つかのドアの一つに鍵を差し込み梅先さんは「狭いから気を付けてね」そう言ってまた軋み音を立てながら重たいドアを開いた。
ドアを開け、照明を付けた梅先さんは、足元に気をつけながら部屋の奥へと進んでいく。部屋と言うより、確かに物置。金属の棚こそ並べられているが、そこにはもう兎に角押し込まれた色んなもの。何かの刻印のような僕には解読不可能な文字がマジックで書かれたダンボールが所狭しと積まれ、上を見れば乱雑に天井までびっしり詰め込んで押し込まれたファイルは、ははぁ、地震大国と言われるこの国ならではの工夫、突っ張り棒仕様なんだな、と感心した。そこに深く積もっているであろう堆積した誇りが、僕らがドアを開け部屋に入ったことで起こった空気の対流で浮き上がり、照明に照らされた埃の川が見えた。
情報省にある、証拠品や遺留品、押収物、サンプルと言った、形の無いものを含むあらゆる物を管理している部署が管轄する倉庫の、さして重要視されていない品々を詰め込んでおく通称ガラクタ庫の小部屋の一つみたい。僕はなんでもやる課で、そこのデータ登録に行ったことを思い出した。
それにしても、この擬態にホコリアレルギーとか技術部のマニアな人達のこだわりオプションがついてなくて良かった。
「この辺にまとめて押し込めたと思うんだけど」
僕が興味深々に、だが、まだ経費購入して間もないスーツ、そしてもう断線させたくないストッキングをこの埃にまみれさせるわけにはいかないと、気を付けながら辺りを見回していると「よっこらせ」とちょっとシニアな方みたいな声を出した梅先さんは、大きなダンボールを1つ取り出し、床に置いた。
「あ。やっぱりこれだ」
ダンボールを開いた梅先さんは、ガシャガシャと音を立てて中をかき回している。何が入っているのかと、僕もダンボールを覗き込むと、そこにはCDやらDVDやらの媒体がわんさか詰まっていた。
「梅先さん、これは……」
「うん。仕事で使うソフトの媒体。ちょっと、これ持ってくれる?」
「はぁ……」
これと、これと……と、梅先さんは次々と僕にその媒体を手渡していく。そのどれもが、表面に手書きでタイトルとその下にはプロダクトキーが書かれ、使い古された不織布や紙のケースに辛うじて入っている。
……これって。
「あの梅先さん、これって」
「うーん。ちょっと待ってね。あれ、アップデートの差分ファイルまとめたやつがないぞ? 紫野、この前、焼かなかったのかな? あいつのパソコンの中か?」
梅先さんは忙しそうだった。忙しいところ恐縮なのですが……これってアレですよね?
「一先ず、これでいいか」
ダンボールから顔を上げた梅先さんは、僕の手にある媒体を確認すると、ダンボールを閉じて、また「よっこらせ」の掛け声とともに埃を巻き上げながら元の場所へと押し込んだ。
「さ、戻ろうか。早くインストールして初期設定しちゃおう。定時までに間に合うといいんだけど」
手についた埃を払い落としながら、梅先さんは出口へと向かった。
「梅先さん。あの、これ」
「ん?」
「これってアレですよ」
「アレ?」
「あー……古いってこと? そうなんだよねー。相当古いソフトなんだけど、いまだにこれ使わないと開発できなくて」
いえ、そうではなくて。
「いえ……あの……コピーしてありますよね」
「そうなんだよ。もう代々使ってきたから、オリジナルがどっかに言っちゃってて。そもそもオリジナルがあるのかわからないのもあるかな。誰かがデータ落としてきたり拾ったりしたり」
ああ。そうなんですか。……いや、そうじゃもなくて。
「ささ、鳴海さん。出て出て。電気消すよ」
梅先さんに急かされた僕は、慌ててドアの外に出た。そのまま湧き上がる疑問をはっきりと口に出せないまま、鍵を閉めた梅先さんに「早く戻ろう」と言われその場を離れた。足早に階段を上る中、僕は手にある媒体を改めて眺めて確信した。
これって。これ全部、違法コピーな気がします。BSAとかACCSとかに情報提供出来るやつではないですか? うまくすれば(?)報奨金とかもらえちゃうやつなんじゃないですか??
確信したは良いが、見てはいけないものを見てしまったのではないかと、はたと気付いた僕に、それ以上口に出す勇気は出なかった。
そもそもこれは、新入社員の試練。空気を、社風を読めってことなのかな? だってあまりにも梅先さんの対応が普通すぎるし。先輩を見習い口を閉ざせってそういう風習なのかな? そう僕は半分無理やりに、郷に入りては郷に従え、なんだなと従順に従ってみることにした。だって潜入捜査ですもん。
二人が後にした閉ざされたドアの奥では、暗闇の中、部屋の奥底で鈍く発光する物体があったが、それは誰にも気付かれることはなかった。
薄暗い階段を1階と半分下りて、中二階の踊り場からドアを開けて僕たちはまた廊下に出た。廊下と言うには天井が低くますます薄暗い。洞窟か何かの巣穴かそんな場所にも見えなくはない。そこに並ぶ幾つかのドアの一つに鍵を差し込み梅先さんは「狭いから気を付けてね」そう言ってまた軋み音を立てながら重たいドアを開いた。
ドアを開け、照明を付けた梅先さんは、足元に気をつけながら部屋の奥へと進んでいく。部屋と言うより、確かに物置。金属の棚こそ並べられているが、そこにはもう兎に角押し込まれた色んなもの。何かの刻印のような僕には解読不可能な文字がマジックで書かれたダンボールが所狭しと積まれ、上を見れば乱雑に天井までびっしり詰め込んで押し込まれたファイルは、ははぁ、地震大国と言われるこの国ならではの工夫、突っ張り棒仕様なんだな、と感心した。そこに深く積もっているであろう堆積した誇りが、僕らがドアを開け部屋に入ったことで起こった空気の対流で浮き上がり、照明に照らされた埃の川が見えた。
情報省にある、証拠品や遺留品、押収物、サンプルと言った、形の無いものを含むあらゆる物を管理している部署が管轄する倉庫の、さして重要視されていない品々を詰め込んでおく通称ガラクタ庫の小部屋の一つみたい。僕はなんでもやる課で、そこのデータ登録に行ったことを思い出した。
それにしても、この擬態にホコリアレルギーとか技術部のマニアな人達のこだわりオプションがついてなくて良かった。
「この辺にまとめて押し込めたと思うんだけど」
僕が興味深々に、だが、まだ経費購入して間もないスーツ、そしてもう断線させたくないストッキングをこの埃にまみれさせるわけにはいかないと、気を付けながら辺りを見回していると「よっこらせ」とちょっとシニアな方みたいな声を出した梅先さんは、大きなダンボールを1つ取り出し、床に置いた。
「あ。やっぱりこれだ」
ダンボールを開いた梅先さんは、ガシャガシャと音を立てて中をかき回している。何が入っているのかと、僕もダンボールを覗き込むと、そこにはCDやらDVDやらの媒体がわんさか詰まっていた。
「梅先さん、これは……」
「うん。仕事で使うソフトの媒体。ちょっと、これ持ってくれる?」
「はぁ……」
これと、これと……と、梅先さんは次々と僕にその媒体を手渡していく。そのどれもが、表面に手書きでタイトルとその下にはプロダクトキーが書かれ、使い古された不織布や紙のケースに辛うじて入っている。
……これって。
「あの梅先さん、これって」
「うーん。ちょっと待ってね。あれ、アップデートの差分ファイルまとめたやつがないぞ? 紫野、この前、焼かなかったのかな? あいつのパソコンの中か?」
梅先さんは忙しそうだった。忙しいところ恐縮なのですが……これってアレですよね?
「一先ず、これでいいか」
ダンボールから顔を上げた梅先さんは、僕の手にある媒体を確認すると、ダンボールを閉じて、また「よっこらせ」の掛け声とともに埃を巻き上げながら元の場所へと押し込んだ。
「さ、戻ろうか。早くインストールして初期設定しちゃおう。定時までに間に合うといいんだけど」
手についた埃を払い落としながら、梅先さんは出口へと向かった。
「梅先さん。あの、これ」
「ん?」
「これってアレですよ」
「アレ?」
「あー……古いってこと? そうなんだよねー。相当古いソフトなんだけど、いまだにこれ使わないと開発できなくて」
いえ、そうではなくて。
「いえ……あの……コピーしてありますよね」
「そうなんだよ。もう代々使ってきたから、オリジナルがどっかに言っちゃってて。そもそもオリジナルがあるのかわからないのもあるかな。誰かがデータ落としてきたり拾ったりしたり」
ああ。そうなんですか。……いや、そうじゃもなくて。
「ささ、鳴海さん。出て出て。電気消すよ」
梅先さんに急かされた僕は、慌ててドアの外に出た。そのまま湧き上がる疑問をはっきりと口に出せないまま、鍵を閉めた梅先さんに「早く戻ろう」と言われその場を離れた。足早に階段を上る中、僕は手にある媒体を改めて眺めて確信した。
これって。これ全部、違法コピーな気がします。BSAとかACCSとかに情報提供出来るやつではないですか? うまくすれば(?)報奨金とかもらえちゃうやつなんじゃないですか??
確信したは良いが、見てはいけないものを見てしまったのではないかと、はたと気付いた僕に、それ以上口に出す勇気は出なかった。
そもそもこれは、新入社員の試練。空気を、社風を読めってことなのかな? だってあまりにも梅先さんの対応が普通すぎるし。先輩を見習い口を閉ざせってそういう風習なのかな? そう僕は半分無理やりに、郷に入りては郷に従え、なんだなと従順に従ってみることにした。だって潜入捜査ですもん。
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