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3日目の世界(5)
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目的階にたどり着いた年季の入ったエレベーターは左右上下にガクガクとカゴを揺らしながら止まると、今度はガコガコとすべりもへったくれもあったものではない開閉音を鳴らしてドアを開いた。しかも停車位置が微妙にずれ7階のエレベーターホールの床と数センチの段差が出来ている。
入社してからまだ数えるほどしか乗っていないエレベーターだが、すでに2回目の状態。初めて見たときは危機的状況の発生か敵の襲来の前触れかと携帯をにぎりしめエマージェンシーコールを発動しそうになったが、同乗していた総務の茶山と清涼の両名は気にすることも、気付いているのかしら怪しいほどの通常運転で段差を越えて出て行った。
え?お二人とも少々お待ちを!この、エレベーターの状態って常態なんですか?!
叫びたい気持ちをも、しかしたら見間違い、僕だけに見える現象?そしたら大騒ぎしたら僕が怪しまれてしまいます?
ぐっとこらえて、しかし慎重に履き慣れないヒールで段差につまづかないように、数センチ隙間から地下深くの奥底に潜む何者も、次元の狭間の向こうの存在も絶対に出てきてくれるなと願いながら二人のあとを追った。
そして今も生じた段差にぎょっとしつつ、このまま落下しませんよね……どうか、なにも出てきませんように……緊張しながら素早く脱出すると、背後ではなにかを挟み潰しでもしたいのかと思うほどの音を立てて扉は閉ざされた。
その音に肩を跳ね上げ「いつか噛みつかれそう……」小さく息を吐く。
「だいたい本当にこのエレベーターは点検を受けているのでしょうか。もし点検において問題なしというのでしたら、これはもう経年劣化とかそういう時間の流れを責任にしてはいけない問題があるのでは……いえ、そのまえにこの世界の出来事として発生しているのかどうかを確認するほうが先ですね。僕だけに起きている事象なら、調査依頼を……ダメですよね。擬態内空間における同盟の確認ならまだしも、この場の調査依頼なんて出来ません。だって極秘潜入捜査なんですから!」
極秘潜入捜査、自分で口に出してちょっと照れる。それが駄々漏れの盛大な独りごとだったとしても。
そ、そうですよ。初日から色々ありすぎてテンパってしまいましたが、そこはこの世界の新入社員の皆さんと同じということで僕の潜入先の身分、立ち居地としは問題ないはず。大丈夫、順調です。陛下と長官のご期待に応えるために、僕、今日も一日頑張ります!
「よし」
口元をひきしめ、黒縁眼鏡を押し上げると初心に立ち返った勢いで会社のドアを開く。
ガチャン!
開かなかった。
え?
ガシャ……ガシャガシャ……ガチャン!
何度か揺らしたところで無情に施錠された鍵に阻まれていては開くはずもない。
開かない?!え? なんで? なんで開かないの?
鍵がかかっているからだよね。それはわかります。なんで鍵が?
だって、どなたかいらっしゃるんでしょ?鍵、守衛室に戻ってないとのことでしたよ?
へっぽこ潜入捜査員、ナル、現在は鳴海月(なるみるな)は入社3日目の世界でもテンパっていた。
両手でドアに手をかけて、おでこがつくほどガラスにへばりつき施錠された向こうの世界を見ればフロアは常時点灯の明かりしか見えない。ゆっくりと左右を見れば廊下は薄暗く遠くに非難口誘導灯のいつもダッシュなミドリくんが見える。
お、落ち着け。
ちょっと僕、今、焦ってる。冷静に。冷静に。情報局局員たるもの、いつでもどこでも冷静に……って、これ前にもあった!しかもつい最近!
こ、これ、デジャヴというやつですね。うわぁ初めて体験しちゃった。すごい!予知みたい!
……。
感慨にふけっている場合じゃなかった。
早くドアを開けないと“新人やることリスト”そのいちから頓挫、初回で任務失敗です!
腕時計の秒針は止まることなくまわり続け、始業時間は刻々と迫りつつあった。
このあと、入社日に起きたこと……古津さん、八武さんとの邂逅!
今なら古津でも八武にでも対処できる気がする、いやむしろ現れてほしいと、予知の片鱗かもしれないデジャヴの勢いも相まって、とんでもなく稀有な望みを願ってみたが。
うう……やっぱり僕に予知や召喚なんて出来るわけない……凹
召喚術の初めての成功が八武さんでもいいって思っちゃっいました、僕↘↘↘
僕はおとなしく携帯を取り出して梅先さんにLINEを送ることにした。
入社してからまだ数えるほどしか乗っていないエレベーターだが、すでに2回目の状態。初めて見たときは危機的状況の発生か敵の襲来の前触れかと携帯をにぎりしめエマージェンシーコールを発動しそうになったが、同乗していた総務の茶山と清涼の両名は気にすることも、気付いているのかしら怪しいほどの通常運転で段差を越えて出て行った。
え?お二人とも少々お待ちを!この、エレベーターの状態って常態なんですか?!
叫びたい気持ちをも、しかしたら見間違い、僕だけに見える現象?そしたら大騒ぎしたら僕が怪しまれてしまいます?
ぐっとこらえて、しかし慎重に履き慣れないヒールで段差につまづかないように、数センチ隙間から地下深くの奥底に潜む何者も、次元の狭間の向こうの存在も絶対に出てきてくれるなと願いながら二人のあとを追った。
そして今も生じた段差にぎょっとしつつ、このまま落下しませんよね……どうか、なにも出てきませんように……緊張しながら素早く脱出すると、背後ではなにかを挟み潰しでもしたいのかと思うほどの音を立てて扉は閉ざされた。
その音に肩を跳ね上げ「いつか噛みつかれそう……」小さく息を吐く。
「だいたい本当にこのエレベーターは点検を受けているのでしょうか。もし点検において問題なしというのでしたら、これはもう経年劣化とかそういう時間の流れを責任にしてはいけない問題があるのでは……いえ、そのまえにこの世界の出来事として発生しているのかどうかを確認するほうが先ですね。僕だけに起きている事象なら、調査依頼を……ダメですよね。擬態内空間における同盟の確認ならまだしも、この場の調査依頼なんて出来ません。だって極秘潜入捜査なんですから!」
極秘潜入捜査、自分で口に出してちょっと照れる。それが駄々漏れの盛大な独りごとだったとしても。
そ、そうですよ。初日から色々ありすぎてテンパってしまいましたが、そこはこの世界の新入社員の皆さんと同じということで僕の潜入先の身分、立ち居地としは問題ないはず。大丈夫、順調です。陛下と長官のご期待に応えるために、僕、今日も一日頑張ります!
「よし」
口元をひきしめ、黒縁眼鏡を押し上げると初心に立ち返った勢いで会社のドアを開く。
ガチャン!
開かなかった。
え?
ガシャ……ガシャガシャ……ガチャン!
何度か揺らしたところで無情に施錠された鍵に阻まれていては開くはずもない。
開かない?!え? なんで? なんで開かないの?
鍵がかかっているからだよね。それはわかります。なんで鍵が?
だって、どなたかいらっしゃるんでしょ?鍵、守衛室に戻ってないとのことでしたよ?
へっぽこ潜入捜査員、ナル、現在は鳴海月(なるみるな)は入社3日目の世界でもテンパっていた。
両手でドアに手をかけて、おでこがつくほどガラスにへばりつき施錠された向こうの世界を見ればフロアは常時点灯の明かりしか見えない。ゆっくりと左右を見れば廊下は薄暗く遠くに非難口誘導灯のいつもダッシュなミドリくんが見える。
お、落ち着け。
ちょっと僕、今、焦ってる。冷静に。冷静に。情報局局員たるもの、いつでもどこでも冷静に……って、これ前にもあった!しかもつい最近!
こ、これ、デジャヴというやつですね。うわぁ初めて体験しちゃった。すごい!予知みたい!
……。
感慨にふけっている場合じゃなかった。
早くドアを開けないと“新人やることリスト”そのいちから頓挫、初回で任務失敗です!
腕時計の秒針は止まることなくまわり続け、始業時間は刻々と迫りつつあった。
このあと、入社日に起きたこと……古津さん、八武さんとの邂逅!
今なら古津でも八武にでも対処できる気がする、いやむしろ現れてほしいと、予知の片鱗かもしれないデジャヴの勢いも相まって、とんでもなく稀有な望みを願ってみたが。
うう……やっぱり僕に予知や召喚なんて出来るわけない……凹
召喚術の初めての成功が八武さんでもいいって思っちゃっいました、僕↘↘↘
僕はおとなしく携帯を取り出して梅先さんにLINEを送ることにした。
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