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第一楽章
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地上の公園に出た双子はひらけた場所まで一目散に走ると、昨夜のタクシー運転手がサプライズだといった風景を確かめるべくビル郡を探した。
「あれ、なに? あの緑のとんがりみたいなの。山?」
フレッドが指をさす。
「山っていうか……巨大な森みたい。なんかモサモサしてる。きのうタクシーからみたビルも同じなんだ……山じゃない。高層ビルが並んでるんだ」
双子は巨大な都市の中心街に突如として現れた仮想世界の構造物のようなそびえる緑に目を奪われた。
「驚いたか? あれな。モサモサの中身は東京都庁。ハイブリッドなツタでビルを覆ってるんだってよ」
「都庁? ツタ?」
「そ。ハヤマ特製のスーパーアイヴィ。登録商標は……なんだっけな? ま、とにかくスーパーでスペシャルなマシン―プラント(機械植物)、ハイブリッドなツタなんだと。太陽光発電と光合成でエネルギーを作り出し、二酸化炭素を減らして酸素を供給。ツタの葉でビルへの直射日光の照りつけ、反射による光と熱を緩和。道管を流れる水が断熱材として熱移動を防ぎ冷暖房エネルギーの効率を高め、冷暖房設備の削減と利用頻度の軽減を実現。頑丈なネットみたいなもんだから耐震にもばっちり。都市部の3Rエネルギー、大気浄化、気温降下に多大に貢献」
「ロン! すごーい! 良く知ってる!」
キラキラと目を輝かすフレッドに、えっへんとロンは胸をはった。
「だろぉ? 俺ってすごいだろ? 物知りだろ? それに、マシン―プラントなんてハイブリッド生物、ウロコフネタマガイみたいでロマンだよな!」
「うん! すごいね! ロン、いろいろ知っててすごい!」
「受け売りよ。パンフレットに書いてあっただけ」
「なんだ。ほめて損した」
「損てなんだ。損て」
「東京ってもっと機械っぽい無機質な都市かと思ってたから、実際にあれを見るとびっくりするね……」
誰ともなしにエリックは呟くとぐるりと辺りを見渡した。公園の茂った木々の向こうにそびえる巨大な木に時計の文字盤をつけた深い緑に覆われたビルのその周りを一群の鳥が大きく羽ばたいていった。
ひらけた場所から公園内の林道を歩くと鳥や小動物の声や姿にロンとフレッドは嬉々として、わざわざ二人は木陰に潜みながら移動していた。ロンがフレッドに言うにはニンジャトレーニングらしい。
「よくきけ。フレッド」
「うん」
「ここにはな、イヌワシやクマタカも来るんだぞ。コウノトリもくるらしい。すごいだろ?! 感動だろ! お前ならわかるよな!」
「うん! すごいね! イヌとワシとクマとタカ! それからコウノトリ!」
「ちげぇ……けど、お前の日本語変換なんかおかしいけど、って言うかいつもどっか飛んでっけど、可愛いから許す!!」
ロンに抱きしめられたフレッドのきゃーと言う笑い声が聞こえた。
はしゃぐ二人を視界の端に捕らえながら、少し離れて木漏れ日の下、地上の動かない道を歩くエリックとホリーの脇を涼しい自然の風が通り抜け、エリックの前髪を撫でた。思わず心地のよさにエリックは目を閉じる。リアルな風も植物も、鳥も動物も何もかもが新鮮でそして平和なひと時に感じられた。わかりやすいフレッドとは対照的にいつも静かなエリックが気持ち良さそうにしているのを見て、ホリーは自分も束の間の平和を感じた気がした。双子との時間は、自分に知らなかったものを与える。振り返って自分を見たエリックがきれいに笑い、つられるように自分の顔の筋肉が動くのを感じた。笑うとはこういうこと。いつの頃から現れ始めた自分の笑顔にエリックがその手を伸ばしてきた。まだ小さな手を握り返し、二人はその手の暖かさを感じた。
森林浴がてらの散歩をすませホテルへ戻ろうとする四人の前に、公園内のカフェがあらわれた。エリックが「待って」と言う前に、フレッドが店の前で給仕していたロボットに目を奪われて吸い込まれるように店に入ってしまった。仕方なくフレッドに続いて店に入った三人は、子供用のココアと大人分のコーヒー、それから「この近所の野菜を使っております」とロボットが紹介した “地産地消お膝元サンド” をフレッドが有無を言わさず人数分注文し、手土産いっぱいに四人はホテルへと戻った。
「ねぇロン。このサンドイッチ、お膝って誰のひざ?」
「そりゃおまえ、ショーグンとかテンノーとか。いやまてよ。ダイブツか? たしかにあいつの膝はでかい」
「ダイブツ? ダイフク?」
「そんなもんだ」
フロントでポーターロボットを見つけたフレッドは、買ってきたばかりの朝食を部屋まで運んでくれるようロボットに頼み、ついでに自分も乗せてもらってご満悦でブライアンの待つロンたちの部屋へと向かった。
ポーターロボットに「アリガト」と言ってハグして立ち去るのを見送り、勢いよくフレッドが開けたドアの向こうでは、ブライアンが双子の乱入とホリーとロンのひと暴れのあとを掃除しており、テーブルでは友軍ブライアンの救援要請にしぶしぶでも応じたのか柔らかな塹壕から抜け出したジムが部屋を移動して煙草をくゆらせながら宙に浮かべたニュースを眺めていた。
「ただいま!」
「……おかえり」
「あれ、なに? あの緑のとんがりみたいなの。山?」
フレッドが指をさす。
「山っていうか……巨大な森みたい。なんかモサモサしてる。きのうタクシーからみたビルも同じなんだ……山じゃない。高層ビルが並んでるんだ」
双子は巨大な都市の中心街に突如として現れた仮想世界の構造物のようなそびえる緑に目を奪われた。
「驚いたか? あれな。モサモサの中身は東京都庁。ハイブリッドなツタでビルを覆ってるんだってよ」
「都庁? ツタ?」
「そ。ハヤマ特製のスーパーアイヴィ。登録商標は……なんだっけな? ま、とにかくスーパーでスペシャルなマシン―プラント(機械植物)、ハイブリッドなツタなんだと。太陽光発電と光合成でエネルギーを作り出し、二酸化炭素を減らして酸素を供給。ツタの葉でビルへの直射日光の照りつけ、反射による光と熱を緩和。道管を流れる水が断熱材として熱移動を防ぎ冷暖房エネルギーの効率を高め、冷暖房設備の削減と利用頻度の軽減を実現。頑丈なネットみたいなもんだから耐震にもばっちり。都市部の3Rエネルギー、大気浄化、気温降下に多大に貢献」
「ロン! すごーい! 良く知ってる!」
キラキラと目を輝かすフレッドに、えっへんとロンは胸をはった。
「だろぉ? 俺ってすごいだろ? 物知りだろ? それに、マシン―プラントなんてハイブリッド生物、ウロコフネタマガイみたいでロマンだよな!」
「うん! すごいね! ロン、いろいろ知っててすごい!」
「受け売りよ。パンフレットに書いてあっただけ」
「なんだ。ほめて損した」
「損てなんだ。損て」
「東京ってもっと機械っぽい無機質な都市かと思ってたから、実際にあれを見るとびっくりするね……」
誰ともなしにエリックは呟くとぐるりと辺りを見渡した。公園の茂った木々の向こうにそびえる巨大な木に時計の文字盤をつけた深い緑に覆われたビルのその周りを一群の鳥が大きく羽ばたいていった。
ひらけた場所から公園内の林道を歩くと鳥や小動物の声や姿にロンとフレッドは嬉々として、わざわざ二人は木陰に潜みながら移動していた。ロンがフレッドに言うにはニンジャトレーニングらしい。
「よくきけ。フレッド」
「うん」
「ここにはな、イヌワシやクマタカも来るんだぞ。コウノトリもくるらしい。すごいだろ?! 感動だろ! お前ならわかるよな!」
「うん! すごいね! イヌとワシとクマとタカ! それからコウノトリ!」
「ちげぇ……けど、お前の日本語変換なんかおかしいけど、って言うかいつもどっか飛んでっけど、可愛いから許す!!」
ロンに抱きしめられたフレッドのきゃーと言う笑い声が聞こえた。
はしゃぐ二人を視界の端に捕らえながら、少し離れて木漏れ日の下、地上の動かない道を歩くエリックとホリーの脇を涼しい自然の風が通り抜け、エリックの前髪を撫でた。思わず心地のよさにエリックは目を閉じる。リアルな風も植物も、鳥も動物も何もかもが新鮮でそして平和なひと時に感じられた。わかりやすいフレッドとは対照的にいつも静かなエリックが気持ち良さそうにしているのを見て、ホリーは自分も束の間の平和を感じた気がした。双子との時間は、自分に知らなかったものを与える。振り返って自分を見たエリックがきれいに笑い、つられるように自分の顔の筋肉が動くのを感じた。笑うとはこういうこと。いつの頃から現れ始めた自分の笑顔にエリックがその手を伸ばしてきた。まだ小さな手を握り返し、二人はその手の暖かさを感じた。
森林浴がてらの散歩をすませホテルへ戻ろうとする四人の前に、公園内のカフェがあらわれた。エリックが「待って」と言う前に、フレッドが店の前で給仕していたロボットに目を奪われて吸い込まれるように店に入ってしまった。仕方なくフレッドに続いて店に入った三人は、子供用のココアと大人分のコーヒー、それから「この近所の野菜を使っております」とロボットが紹介した “地産地消お膝元サンド” をフレッドが有無を言わさず人数分注文し、手土産いっぱいに四人はホテルへと戻った。
「ねぇロン。このサンドイッチ、お膝って誰のひざ?」
「そりゃおまえ、ショーグンとかテンノーとか。いやまてよ。ダイブツか? たしかにあいつの膝はでかい」
「ダイブツ? ダイフク?」
「そんなもんだ」
フロントでポーターロボットを見つけたフレッドは、買ってきたばかりの朝食を部屋まで運んでくれるようロボットに頼み、ついでに自分も乗せてもらってご満悦でブライアンの待つロンたちの部屋へと向かった。
ポーターロボットに「アリガト」と言ってハグして立ち去るのを見送り、勢いよくフレッドが開けたドアの向こうでは、ブライアンが双子の乱入とホリーとロンのひと暴れのあとを掃除しており、テーブルでは友軍ブライアンの救援要請にしぶしぶでも応じたのか柔らかな塹壕から抜け出したジムが部屋を移動して煙草をくゆらせながら宙に浮かべたニュースを眺めていた。
「ただいま!」
「……おかえり」
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