雪原脳花

帽子屋

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第一楽章

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 LIVE BAND AIDのフェスティバル・エリアはいくつかの会場にわかれていた。超大型ステージが3台設置されたメイン・エリアは明日からのオープンを控えエリアにいるのは関係者ばかりで一般客の出入りはかったが、それ以外のエリアではオープン・エアなステージから、小劇場、テントなど大小さまざまな規模で各イベントがスタートしていた。平日とはいえ休暇目前のここにはすでに多くの客が集まり、まぶしく緑を輝かせる木々がつめかける人間たちに休息を与える木陰を提供していた。開催時期がもう少し早い季節であれば、この国の美しい桜が乱舞する光景がここで見られるらしい。ジムは目の前に投影された会場解説の桜吹雪から一歩踏み出すと白く淡く朱に色づいた無数の雪片を消しさり、目に眩しい鮮やかな緑光の現実へと戻った。
 桜は人を攫うときいたことがある。なんとも物騒な植物だ。
 入場者に配布される手首につけたリングパスから投影したマップを確認しながら双子とジムはイベントに興じる子どもと付き添いの父親として会場の偵察に出かけていた。フレッドの収穫、お膝元サンドとコーヒーを並べたミーティングのあと、ブライアンとロンとホリーはイベントスタッフとしての仕事に出かけていった。
 行き交う人々の世界を覗きながら、エリックは各所にあるフードエリアや物販ブースに誘われ、案内や警備に勤しむ民間警備や警視庁のロボットたち、ガードドックやぴぽまるくんと気付けば戯れはじめるフレッドの手を離さないように歩き、ジムは双子の後ろについて目の前に広がる現実世界を頭の中に取り込みながら、事前に渡されている会場情報を更新して歩いた。時折現れるゲリラ的に演奏を行うウォーキング・アクトには三人で足を留めた。
一通りこのエリアを見て回った三人は親子連れや子どもで賑わう一角の小劇場の前で立ち止まった。エリックやフレッドと同じくらいの背格好の子どもたちがすでに列をなして入場を待っている。
「お前たち。くれぐれも仕事を忘れるんじゃないぞ」
 ジムは膝を付いて四つの瞳の中にいる四人の自分に確認するように諭す。
「うん! 大丈夫!」
 満面の笑顔でフレッドが即答する。
「二人で一緒にいるから大丈夫」
 エリックが繋いだ手を見せる。
「ならいい」
 ジムは立ち上がり二人の頭を撫でた。
「イベントが終わったらここで待ち合わせだ。いいな。勝手にどっかへ行くなよ。フレッド?」
「なんで僕だけ言うの」
「父さんは心配してるんだよ」
 ちょっとふくれたフレッドにエリックはやさしく言い聞かせる。
「全然心配してる顔に見えないもん」
「それはいつものこと。ね、僕らのUnwavering Jim揺らがないジム
 兄らしい生意気な顔にジムは立ち上がりもう一度二人の頭を撫でると「行ってこい」と言った。動き始めた列に走って向かった双子が問題なく劇場へと入場するのを見届け、ジムは次の会場の偵察へと向かった。
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