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間奏曲
lamentazione(14)
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「アン……まずいって。そりゃまずいだろ」
カメラマンはほぼ溜息、だがほんのわずかばかりその根性に感じ入った感嘆をないまぜにした声音でアンをどうにか押しとどめようとしていた。
「なにがまずいのよ。警官におしとどめられて、野次馬に混じって眺めているだけなんてマスコミの人間として恥ずかしくないの?」
先程の倒潰騒ぎが起きるずっと前からすでに半壊していたと思われる崩れ掛けの壁、その隙間からは雑草が野放図に飛び出し、壁そのものを覆いつくしている。アンはその壁によじのぼり残骸と化した教会の敷地内への侵入を試みていた。
野次馬に混じることは恥ずかしくない。ハナから別に大した取材でもない。そのはずなのに、この駆け出しリポーターはなにをそんなにむきになって興奮しているのか……全くわからない。紅潮した頬を膨らましあまつさえミニスカートであることも忘れて壁にへばりついている子供じみたリポーターのお守をするほうが余程恥ずかしいとカメラマンは思った。
そのスカートからちらちらと見える太腿や下着のほうがよっぽどアレだぞ。いっそカメラ回してやろうか……こんな廃墟が崩れて瓦礫になった映像よりよっぽどお前のパンチラのほうが視聴率取れるぞ。
思わないでもなったが口には出さなかった。
「なにをそんなにむきになってるんだよ……」
「だっておかしいじゃない!なんでこんなところで爆発が起きるのよ!これは弱小ギャングの仕業なんかじゃない!絶対なんかもっと大きな何かがあるのよ!」
「あるってなにがだよ」
「なにって……チンピラじゃないギャングの仕業とか……大スクープに決まってるじゃない!」
「アン、スクープがほしいのはわかるけどな、それ根拠ゼロだろ?おまえの願望、いや欲求だよ。それに弱小だろうがなんだろうが、本当にどこぞの組織による仕業なら、おまえの言うチンピラだって爆弾の一つや二つ持ってたっておかしくないだろ?だいたい爆弾による爆破なんてごたいそうなものじゃなくって、単なる事故、地下にたまってたガスに引火したとかなんとか、そんなこと警官たちが言ってたの聞いたろ?」
「ガス爆発?本気でそんなこと信じてるわけ?この見事な倒潰っぷりがガス爆発や弱小ギャング、チンピラお手製の粗悪なIEDだって言うの?」
言うよ。信じてるよ。
やはり口には出さなかった。
「なによ。もういい。カメラ貸して!」
「へ?え?おい!」
アンはいったん壁から離れ、自分に向けて呆れを通り越して遠い視線を投げるカメラマンからカメラをひったくると踵を返し、ようやくみつけた足場を使って太腿を存分に晒し壁の向こうへと姿を消した。
「……マジかー」
ひとり取り残されカメラも失った男は今度こそ腹の底から呆れた声と盛大な溜息を吐き出し、肩も頭もまとめて落として背中を丸めた。
絶対なにかある。
根拠はないが自信はある。そんな予感に突き動かされ、アンは雑草に埋もれながら崩れた建物へと向かった。
今回の仕事はちっぽけな1セントなんかじゃない。何十万にも跳ね上がる1ビットのチャンスよ。このチャンス、逃すわけにはいかない。絶対にスクープを撮ってみせるんだから。
アンは新たな決意と高揚した気分に武者震いさえしそうで、行く手を阻む雑草がスーツを汚すことも気に留めず、素手で払いかきわけ進んで行った。
カメラマンはほぼ溜息、だがほんのわずかばかりその根性に感じ入った感嘆をないまぜにした声音でアンをどうにか押しとどめようとしていた。
「なにがまずいのよ。警官におしとどめられて、野次馬に混じって眺めているだけなんてマスコミの人間として恥ずかしくないの?」
先程の倒潰騒ぎが起きるずっと前からすでに半壊していたと思われる崩れ掛けの壁、その隙間からは雑草が野放図に飛び出し、壁そのものを覆いつくしている。アンはその壁によじのぼり残骸と化した教会の敷地内への侵入を試みていた。
野次馬に混じることは恥ずかしくない。ハナから別に大した取材でもない。そのはずなのに、この駆け出しリポーターはなにをそんなにむきになって興奮しているのか……全くわからない。紅潮した頬を膨らましあまつさえミニスカートであることも忘れて壁にへばりついている子供じみたリポーターのお守をするほうが余程恥ずかしいとカメラマンは思った。
そのスカートからちらちらと見える太腿や下着のほうがよっぽどアレだぞ。いっそカメラ回してやろうか……こんな廃墟が崩れて瓦礫になった映像よりよっぽどお前のパンチラのほうが視聴率取れるぞ。
思わないでもなったが口には出さなかった。
「なにをそんなにむきになってるんだよ……」
「だっておかしいじゃない!なんでこんなところで爆発が起きるのよ!これは弱小ギャングの仕業なんかじゃない!絶対なんかもっと大きな何かがあるのよ!」
「あるってなにがだよ」
「なにって……チンピラじゃないギャングの仕業とか……大スクープに決まってるじゃない!」
「アン、スクープがほしいのはわかるけどな、それ根拠ゼロだろ?おまえの願望、いや欲求だよ。それに弱小だろうがなんだろうが、本当にどこぞの組織による仕業なら、おまえの言うチンピラだって爆弾の一つや二つ持ってたっておかしくないだろ?だいたい爆弾による爆破なんてごたいそうなものじゃなくって、単なる事故、地下にたまってたガスに引火したとかなんとか、そんなこと警官たちが言ってたの聞いたろ?」
「ガス爆発?本気でそんなこと信じてるわけ?この見事な倒潰っぷりがガス爆発や弱小ギャング、チンピラお手製の粗悪なIEDだって言うの?」
言うよ。信じてるよ。
やはり口には出さなかった。
「なによ。もういい。カメラ貸して!」
「へ?え?おい!」
アンはいったん壁から離れ、自分に向けて呆れを通り越して遠い視線を投げるカメラマンからカメラをひったくると踵を返し、ようやくみつけた足場を使って太腿を存分に晒し壁の向こうへと姿を消した。
「……マジかー」
ひとり取り残されカメラも失った男は今度こそ腹の底から呆れた声と盛大な溜息を吐き出し、肩も頭もまとめて落として背中を丸めた。
絶対なにかある。
根拠はないが自信はある。そんな予感に突き動かされ、アンは雑草に埋もれながら崩れた建物へと向かった。
今回の仕事はちっぽけな1セントなんかじゃない。何十万にも跳ね上がる1ビットのチャンスよ。このチャンス、逃すわけにはいかない。絶対にスクープを撮ってみせるんだから。
アンは新たな決意と高揚した気分に武者震いさえしそうで、行く手を阻む雑草がスーツを汚すことも気に留めず、素手で払いかきわけ進んで行った。
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