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じゃあペンネームはこれだ
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綺羅の胸裏をよそにモジャおは真面目な顔して、ファンタジーなことを言い出した。
「俺、ルイス・キャロルの帽子屋尊敬してるから」
「意味がわかりません」
「なんだ。知らないのか?」
♪One Birthday ev’ry year♪
♪But threr are three Hundred and sixty four Unbirthdays ! !♪
♪That is why we’re gathered here … … ♪
「突然流暢な英語で歌い出すのやめてもらえます? 何かイラっとしますので。しかも歌うとき、目を閉じるとか気持ち悪いです」
気持ち悪いってなに!?
いや、目が開いてても気持ち悪いな。
「流暢かどうかは知らんが、デフォだ。何でイラっとするんだよ。カルシウムが足りてないんじゃないか? 小百合(仮)は亜鉛不足、お前はカルシウム不足、最近の若者はミネラル不足か……」
「余計なお世話です」
小百合? 誰だ? 主婦仲間か? まさか、モジャお。職場でもプライベートでも貴様、桜さんという人がありながら……。
目の前の男に “モテる” と言う現象が発生するとは夢にも思っていなかったが、世の中何が起こるかわからない。現にこの男は、この忙しい自分を呼び出した挙句に真顔で “小説家になる” と言い出している。
常人とはかけ離れた宇宙的発想の持ち主だから、前職では鬼切との情事、プライベートでは宇宙人の相手でも現れたのか……だが、宇宙人だろうが、地底人だろうが、許さん。
綺羅は「滅するのは今度にしてやろう」前言撤回、すみに隠れたほこりの seek and destroy、年末大掃除のついでに、巨大なわたぼこりのようなモッサモジャ頭もまとめて排除してやろうかと思いなおしていた。
ファンタジー男は、自分の頭の危機など気付く様子もなく、若者のミネラル不足についてブツブツと一人唱えたあと、ファンタジーネタに戻ってきた。
「なんでもない日を謳歌するなんて、素晴らしい人生観だ」
「そうですか? 時間を止められて仕方なくって気がしますけど。こじらせ感は似てますけどね。だいたい、その歌、映画版オリジナルですよね? 原作にはない」
綺羅の目の前の男は、重たい瞼をなんとか持ち上げて目を見開いたあと、綺羅からしてみれば、今日この場で見たどの顔よりも気持ち悪い顔、不敵な笑顔を浮かべた。
「おんやあ?」
「なんですか?」
「いやいやいや。れいきょうくん、さすが、綺羅 玲響くん。きらきらこうもり、知ってるんだね。詳しいね。もしかしてお前……枕元には、ねずみさんたちが大集合か?」
殺す。
マスター、その出刃包丁、即刻このモジャ頭に投げてください。
って言うか、この店にその包丁必要ですか? そうですか。きっとこのモジャ頭に突き刺すためですね。
綺羅の送った視線に、マスターはこくりと静かに頷き、地を這うような声でミーちゃんに店のドアに掛けてあるプレートを “CLOSE” にするよう伝えた。
そんな肩越しで行われている目論見は露知らず、頭部に付属するデカイ標的を左右に揺らしながら、ここに来て初めて綺羅からマウントを取った気がしたモジャおは、幸先の良いペンネームも決めたことだし、そろそろ珈琲も来る頃だし、奮発して爽やかな酸味の青森産紅玉で作ったタルト・タタン、いや栗の街中津川のモンブランでも追加で頼もうかと考えていた。
「俺、ルイス・キャロルの帽子屋尊敬してるから」
「意味がわかりません」
「なんだ。知らないのか?」
♪One Birthday ev’ry year♪
♪But threr are three Hundred and sixty four Unbirthdays ! !♪
♪That is why we’re gathered here … … ♪
「突然流暢な英語で歌い出すのやめてもらえます? 何かイラっとしますので。しかも歌うとき、目を閉じるとか気持ち悪いです」
気持ち悪いってなに!?
いや、目が開いてても気持ち悪いな。
「流暢かどうかは知らんが、デフォだ。何でイラっとするんだよ。カルシウムが足りてないんじゃないか? 小百合(仮)は亜鉛不足、お前はカルシウム不足、最近の若者はミネラル不足か……」
「余計なお世話です」
小百合? 誰だ? 主婦仲間か? まさか、モジャお。職場でもプライベートでも貴様、桜さんという人がありながら……。
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常人とはかけ離れた宇宙的発想の持ち主だから、前職では鬼切との情事、プライベートでは宇宙人の相手でも現れたのか……だが、宇宙人だろうが、地底人だろうが、許さん。
綺羅は「滅するのは今度にしてやろう」前言撤回、すみに隠れたほこりの seek and destroy、年末大掃除のついでに、巨大なわたぼこりのようなモッサモジャ頭もまとめて排除してやろうかと思いなおしていた。
ファンタジー男は、自分の頭の危機など気付く様子もなく、若者のミネラル不足についてブツブツと一人唱えたあと、ファンタジーネタに戻ってきた。
「なんでもない日を謳歌するなんて、素晴らしい人生観だ」
「そうですか? 時間を止められて仕方なくって気がしますけど。こじらせ感は似てますけどね。だいたい、その歌、映画版オリジナルですよね? 原作にはない」
綺羅の目の前の男は、重たい瞼をなんとか持ち上げて目を見開いたあと、綺羅からしてみれば、今日この場で見たどの顔よりも気持ち悪い顔、不敵な笑顔を浮かべた。
「おんやあ?」
「なんですか?」
「いやいやいや。れいきょうくん、さすが、綺羅 玲響くん。きらきらこうもり、知ってるんだね。詳しいね。もしかしてお前……枕元には、ねずみさんたちが大集合か?」
殺す。
マスター、その出刃包丁、即刻このモジャ頭に投げてください。
って言うか、この店にその包丁必要ですか? そうですか。きっとこのモジャ頭に突き刺すためですね。
綺羅の送った視線に、マスターはこくりと静かに頷き、地を這うような声でミーちゃんに店のドアに掛けてあるプレートを “CLOSE” にするよう伝えた。
そんな肩越しで行われている目論見は露知らず、頭部に付属するデカイ標的を左右に揺らしながら、ここに来て初めて綺羅からマウントを取った気がしたモジャおは、幸先の良いペンネームも決めたことだし、そろそろ珈琲も来る頃だし、奮発して爽やかな酸味の青森産紅玉で作ったタルト・タタン、いや栗の街中津川のモンブランでも追加で頼もうかと考えていた。
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