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第5章 中央編
第88話 黒龍
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「いけない、眠ってた!」
アルクスは疲労のあまり眠ってしまっていたが、目を覚ました時に周囲に特に変わった様子はなかった。
「もうあの靄は出てこないのか…?」
アルクスは眠ってしまったことで闘気解放による疲労も若干回復したため、また洞窟を進んで行った。
しばらく進んで行くと何かが動く物音がしてきたため、息を潜めて岩陰に隠れた。
少しの後、ゆっくりと歩く黒い靄に覆われた人型の塊が現れた。
(やっぱりあれで終わりじゃあなかったか、バルトロ兄さんと同じくらいの大きさだな…今度はバルトロ兄さんの形になるんだろうか…?)
何かを探している様な様子で歩き続けていたため、アルクスは背後から靄を振り払おうとした。
すると靄に刃が当たった箇所から出血していることが確認できた。
(今までの靄と違う…!?もしかして黒い靄が何かに取り憑いているのか…?)
黒い靄の中に人がいるかもしれないという事実に対してアルクスはどの様に戦うかを考えた。
動きは緩慢で特に攻撃をしてくるわけではなかったため、刃で傷つけるのではなく懐に入り込んで闘気を込めて鳩尾に掌打を叩き込んだ。
すると黒い靄は倒れて、口の辺りからどんどん黒い靄が溢れ出して霧散していった。
黒い靄が止まるとそこにはバルトロが倒れていた。
アルクスは気を失っているバルトロに持っていた薬などで手当をして、起きてくるのをしばらく待つことにした。
「いてててて…あれ、なんで腹が痛いんだ?」
「あっ、バルトロ兄さん起きたんだね。大丈夫?」
意識を取り戻したバルトロに気がつくと、アルクスは用意していた薬湯を渡した。
「おっ、すまないな。アルクスか、無事だったんだな。
俺は確か洞窟の中に飛ばされた後、スペルビアと出会った気がしたんだが…
気付いたら今ここにいるって感じだな。スペルビアはどうしたんだろうか、無事だといいが…」
アルクスはバルトロが出会ったスペルビアはおそらく黒い靄の偽物だろうと予測して、自身に起きたことを話した。
「そうだったのか、自分が考えた相手の姿になるかも知れないとなると油断してしまうな。
アルクスはよく無事だったな。」
「兄様と見た目はそっくりだったけど、中身が全然違ったからね。もしかしたら他のみんなも黒い靄に取り憑かれているかも知れない。急いで先に向かおう!」
アルクスとバルトロは急ぎ洞窟を進んでいった。
道中黒い靄は現れなかったが、しばらくすると戦闘音らしき音が聞こえてきた。
「誰かが戦っているのかもしれない、急ごう!」
「先頭は俺に任せとけ!」
音のする場所に辿り着くと、アリシアが何かから逃げ回っている。
よく見ると人型の黒い靄がアリシアに向かって魔術を飛ばして回っていた。
アリシアは逃げるのに必死でこちらに気づかない様子だったが、バルトロが飛び出して飛来した魔術を受け止めたタイミングにアルクスがアリシアを連れて岩陰へ飛び込んだ。
「アリシア、大丈夫?」
「アルクス!本物だよね!?無事だったんだね、良かった…」
アリシアはアルクスに気付くと抱きついて泣き出してしまった。
その間もバルトロは黒い靄から飛び交う魔術を受けていた。
「おーい、アルクス。これってどうしたらいいんだ?」
「ごめん、アリシアちょっとここで待っててね。」
アルクスはアリシアを岩陰に座らせて、バルトロの背後へと駆け出した。
「お待たせ!使ってくる魔術を見た感じだと、あの黒い靄はもしかたらクリオかもしれない。」
「俺の時もあんな感じだったのか?」
「いや、バルトロ兄さんはただ歩いてるだけだったよ。
なんとかなるはずだから、このまま魔術を受け止めててもらえるかな?」
「わかった!」
バルトロが魔術の防御に専念している間に、アルクスは黒い靄の背後へと近寄った。
「今だ!」
背中に当たる部分に両手を当ててアルクスが闘気解放を行なうと黒い靄は倒れた。
そしてバルトロの時と同じように口から黒い靄が溢れ出して霧散していき、後にはクリオが残された。
「アルクス、クリオは大丈夫…?」
「あぁ、バルトロ兄さんの時もしばらくしたら気がついたし、少し待つことにしようか。
その間に今までにあったことを教えてくれるかな?」
アリシアが語ったところによると、黒い靄を払いながら進むとしばらくしたらアルクスが現れたということだった。
アルクスの見た目をしているのに、何かが違うと思って問いかけたがはぐらかされたため、本物であればなんとかできるだろうと思い爆弾を投げつけたところ、顔面で爆発してその後黒い靄になって消えたとのことだった。
「お前はアルクスが出てきたら騙されると思ってたよ。」
「私はそんな偽物なんかに騙されないよ。」
「バルトロ兄さんはスペルビアの偽物に騙されたんだよね。」
「おいおい、それは秘密にしておいてくれよ!」
バルトロが黒い靄に取り憑かれていた話をするとアリシアは仕方ないという顔をしていた。
『んん、ここは…?』
しばらく話しているとクリオが気がついたらしい。
『クリオ、大丈夫?どこか痛いところはないかな?』
『あれ、ハイエルフ様は…?』
『ここは洞窟だよ。ハイエルフはおそらく黒い靄が見せた幻だ。』
『そうだったの、確かハイエルフ様に連れられて気を失ってたみたい…』
今まで何が起きていたのかを話し、クリオに何が起きていたのかを聞き出した。
クリオは黒い靄と何度か遭遇した後、憧れのハイエルフが現れたらしい。
おかしいとは思いつつもついていったところで意識を失った様だった。
『敵に取り憑かれてしまうなんて…まだまだ修行が足りないわね。』
『兄さんも取り憑かれてみたいだし、そんなに気にしないでいいと思うよ!』
『とりあえずみんなで集まってここから脱出しよう。あとはスペルビアとアーラか。』
『龍と竜人だし、あんな黒い靄に騙されたりしないんじゃないかな?』
『だといいけど…』
そして再度洞窟の中を進んでいく。
少しずつ道は広がっていったが、黒い靄は現れることはなかった。
道中魔獣が出ることもなく、安全な道程だったが今どこにいてあとどれだけ進めば良いかがわからなかった。
その間にアルクスはクリオを解放した闘気解放について聞かれたため、3人にやり方を教えていた。
溜めてから放つという感覚が分かりにくかったのか、3人共すぐに使える様にはならなかった。
そして定期的に休みは取るものの、時間の感覚がわからなかったため皆少しずつ疲れが出始めていた。
『ずっと洞窟の中にいると時間がわからなくなるね...』
『全員集まったら長めに休むことにしよう。スペルビアもアーラも無事だといいけど…』
そう思った瞬間に爆音が響いてきた。
『あっちで何かが起きている。スペルビアかアーラがいるに違いない。急ごう!』
アルクス達は駆け出し、少し広めの場所へと辿りついた。
そこには巨大な黒い靄で出来た黒龍が暴れ回っていた。
『これは近づけないな。どうしようか…』
アルクスは黒龍の暴走状態を見て迂闊に近寄ることができないと判断して様子を見ることにしたが、黒龍は何かと戦っている様子だった。
『御子様おやめください!』
黒龍の前方をよく見るとそこにはスペルビアがいた。
スペルビアもアリシアの時と同様に逃げ回りつつ、黒龍に話しかけていた。
『もしかして、この巨大な黒竜はアーラなのか!?』
『そういえば前に空を飛んだ時の姿と同じかも。』
アルクスは倒れていたため見ていなかったが、黒龍の姿はアーラが巨大化した時の姿とそっくりだった。
『巨大化するとこんな姿になるだなんて、原型を保っていないじゃないか…』
その時、黒龍がスペルビアに向かってブレスを吐き出した。
黒い炎がスペルビアに当たるかと思われた瞬間、既に走り出していたバルトロが盾を構えてブレスを受け切った。
『思ったよりも強いな…!スペルビア、大丈夫か?』
『バルトロか、助かった!御子様が黒い靄に取り憑かれたかと思ったら巨大化して暴れ回っていて困り果てていたところだ。アルクス達もいるのか?』
『あぁ。アルクスは黒い靄に取り憑かれた俺達を助けてくれたんだ。アーラもなんとかなるはずだ、安心していいぞ!』
スペルビアはその言葉にホッとしたのか、やる気が回復した様に目に気合いが入った。
『アルクス、私達はどうしたらいいか?』
『少しだけアーラの動きを止めてもらえるかな!』
『わかった!』
バルトロが黒龍の攻撃を受け止めつつ、アリシアとクリオとスペルビアは自分達の可能な攻撃を黒龍に向けて放っていた。
ダメージを与えられている様子はなかったものの、動きが緩慢になったのでその隙にアルクスは黒龍へと駆け寄って闘気開放で殴りかかった。
だが、黒龍からは少しだけ黒い靄が飛び出しただけで倒れることはなかった。
『さっきまではこれでなんとかなったのに…』
黒い靄からの解放に失敗したタイミングで黒龍は尻尾を振り回し、バルトロ意外は全員弾き飛ばされてしまった。
『いたたたた…』
『アルクス、攻撃は俺が受け止めておくからどうしたらいいか考えてくれ!』
『ありがとう、バルトロ兄さん!でもどうしたものか…』
アルクスが闘気解放でアーラを黒い靄から解放できなかったことで、どうしたものかと考えあぐねていた。
『ねぇ、アルクス。さっき教わった闘気解放って龍気で同じことはできないの?』
『んー、できないことはないと思う。ちょっと練習してみようか。』
アルクスが少しだけ自分の中にある龍気を込めて解き放ってみた。
闘気解放とは違い衝撃波は生まれなかったものの、龍脈の様な強い力の流れが感じられた。
『アルクス、なんとかなりそうか?うわっ!』
龍気を解放した後、黒龍は龍脈の流れと同じ力を感じとったためか、バルトロを振り払いアルクスへと近づいてきた。
『3人とも少し離れてて。』
アリシア達は頷いて、アルクスから距離をとるように散開した。
『アーラ、痛かったらごめんね!』
そしてアルクスは溜め込んでいた龍気を黒龍に叩きつけるように解放した。
目に見えない力の奔流が生まれ、黒龍は内側から黒い靄を弾き出して巨大化した時のアーラの姿になるとすぐに縮んでいつもの大きさへと戻った。
『良かった…!』
そして、力を使い果たしたアルクスはその場に倒れ込んだのであった。
アルクスは疲労のあまり眠ってしまっていたが、目を覚ました時に周囲に特に変わった様子はなかった。
「もうあの靄は出てこないのか…?」
アルクスは眠ってしまったことで闘気解放による疲労も若干回復したため、また洞窟を進んで行った。
しばらく進んで行くと何かが動く物音がしてきたため、息を潜めて岩陰に隠れた。
少しの後、ゆっくりと歩く黒い靄に覆われた人型の塊が現れた。
(やっぱりあれで終わりじゃあなかったか、バルトロ兄さんと同じくらいの大きさだな…今度はバルトロ兄さんの形になるんだろうか…?)
何かを探している様な様子で歩き続けていたため、アルクスは背後から靄を振り払おうとした。
すると靄に刃が当たった箇所から出血していることが確認できた。
(今までの靄と違う…!?もしかして黒い靄が何かに取り憑いているのか…?)
黒い靄の中に人がいるかもしれないという事実に対してアルクスはどの様に戦うかを考えた。
動きは緩慢で特に攻撃をしてくるわけではなかったため、刃で傷つけるのではなく懐に入り込んで闘気を込めて鳩尾に掌打を叩き込んだ。
すると黒い靄は倒れて、口の辺りからどんどん黒い靄が溢れ出して霧散していった。
黒い靄が止まるとそこにはバルトロが倒れていた。
アルクスは気を失っているバルトロに持っていた薬などで手当をして、起きてくるのをしばらく待つことにした。
「いてててて…あれ、なんで腹が痛いんだ?」
「あっ、バルトロ兄さん起きたんだね。大丈夫?」
意識を取り戻したバルトロに気がつくと、アルクスは用意していた薬湯を渡した。
「おっ、すまないな。アルクスか、無事だったんだな。
俺は確か洞窟の中に飛ばされた後、スペルビアと出会った気がしたんだが…
気付いたら今ここにいるって感じだな。スペルビアはどうしたんだろうか、無事だといいが…」
アルクスはバルトロが出会ったスペルビアはおそらく黒い靄の偽物だろうと予測して、自身に起きたことを話した。
「そうだったのか、自分が考えた相手の姿になるかも知れないとなると油断してしまうな。
アルクスはよく無事だったな。」
「兄様と見た目はそっくりだったけど、中身が全然違ったからね。もしかしたら他のみんなも黒い靄に取り憑かれているかも知れない。急いで先に向かおう!」
アルクスとバルトロは急ぎ洞窟を進んでいった。
道中黒い靄は現れなかったが、しばらくすると戦闘音らしき音が聞こえてきた。
「誰かが戦っているのかもしれない、急ごう!」
「先頭は俺に任せとけ!」
音のする場所に辿り着くと、アリシアが何かから逃げ回っている。
よく見ると人型の黒い靄がアリシアに向かって魔術を飛ばして回っていた。
アリシアは逃げるのに必死でこちらに気づかない様子だったが、バルトロが飛び出して飛来した魔術を受け止めたタイミングにアルクスがアリシアを連れて岩陰へ飛び込んだ。
「アリシア、大丈夫?」
「アルクス!本物だよね!?無事だったんだね、良かった…」
アリシアはアルクスに気付くと抱きついて泣き出してしまった。
その間もバルトロは黒い靄から飛び交う魔術を受けていた。
「おーい、アルクス。これってどうしたらいいんだ?」
「ごめん、アリシアちょっとここで待っててね。」
アルクスはアリシアを岩陰に座らせて、バルトロの背後へと駆け出した。
「お待たせ!使ってくる魔術を見た感じだと、あの黒い靄はもしかたらクリオかもしれない。」
「俺の時もあんな感じだったのか?」
「いや、バルトロ兄さんはただ歩いてるだけだったよ。
なんとかなるはずだから、このまま魔術を受け止めててもらえるかな?」
「わかった!」
バルトロが魔術の防御に専念している間に、アルクスは黒い靄の背後へと近寄った。
「今だ!」
背中に当たる部分に両手を当ててアルクスが闘気解放を行なうと黒い靄は倒れた。
そしてバルトロの時と同じように口から黒い靄が溢れ出して霧散していき、後にはクリオが残された。
「アルクス、クリオは大丈夫…?」
「あぁ、バルトロ兄さんの時もしばらくしたら気がついたし、少し待つことにしようか。
その間に今までにあったことを教えてくれるかな?」
アリシアが語ったところによると、黒い靄を払いながら進むとしばらくしたらアルクスが現れたということだった。
アルクスの見た目をしているのに、何かが違うと思って問いかけたがはぐらかされたため、本物であればなんとかできるだろうと思い爆弾を投げつけたところ、顔面で爆発してその後黒い靄になって消えたとのことだった。
「お前はアルクスが出てきたら騙されると思ってたよ。」
「私はそんな偽物なんかに騙されないよ。」
「バルトロ兄さんはスペルビアの偽物に騙されたんだよね。」
「おいおい、それは秘密にしておいてくれよ!」
バルトロが黒い靄に取り憑かれていた話をするとアリシアは仕方ないという顔をしていた。
『んん、ここは…?』
しばらく話しているとクリオが気がついたらしい。
『クリオ、大丈夫?どこか痛いところはないかな?』
『あれ、ハイエルフ様は…?』
『ここは洞窟だよ。ハイエルフはおそらく黒い靄が見せた幻だ。』
『そうだったの、確かハイエルフ様に連れられて気を失ってたみたい…』
今まで何が起きていたのかを話し、クリオに何が起きていたのかを聞き出した。
クリオは黒い靄と何度か遭遇した後、憧れのハイエルフが現れたらしい。
おかしいとは思いつつもついていったところで意識を失った様だった。
『敵に取り憑かれてしまうなんて…まだまだ修行が足りないわね。』
『兄さんも取り憑かれてみたいだし、そんなに気にしないでいいと思うよ!』
『とりあえずみんなで集まってここから脱出しよう。あとはスペルビアとアーラか。』
『龍と竜人だし、あんな黒い靄に騙されたりしないんじゃないかな?』
『だといいけど…』
そして再度洞窟の中を進んでいく。
少しずつ道は広がっていったが、黒い靄は現れることはなかった。
道中魔獣が出ることもなく、安全な道程だったが今どこにいてあとどれだけ進めば良いかがわからなかった。
その間にアルクスはクリオを解放した闘気解放について聞かれたため、3人にやり方を教えていた。
溜めてから放つという感覚が分かりにくかったのか、3人共すぐに使える様にはならなかった。
そして定期的に休みは取るものの、時間の感覚がわからなかったため皆少しずつ疲れが出始めていた。
『ずっと洞窟の中にいると時間がわからなくなるね...』
『全員集まったら長めに休むことにしよう。スペルビアもアーラも無事だといいけど…』
そう思った瞬間に爆音が響いてきた。
『あっちで何かが起きている。スペルビアかアーラがいるに違いない。急ごう!』
アルクス達は駆け出し、少し広めの場所へと辿りついた。
そこには巨大な黒い靄で出来た黒龍が暴れ回っていた。
『これは近づけないな。どうしようか…』
アルクスは黒龍の暴走状態を見て迂闊に近寄ることができないと判断して様子を見ることにしたが、黒龍は何かと戦っている様子だった。
『御子様おやめください!』
黒龍の前方をよく見るとそこにはスペルビアがいた。
スペルビアもアリシアの時と同様に逃げ回りつつ、黒龍に話しかけていた。
『もしかして、この巨大な黒竜はアーラなのか!?』
『そういえば前に空を飛んだ時の姿と同じかも。』
アルクスは倒れていたため見ていなかったが、黒龍の姿はアーラが巨大化した時の姿とそっくりだった。
『巨大化するとこんな姿になるだなんて、原型を保っていないじゃないか…』
その時、黒龍がスペルビアに向かってブレスを吐き出した。
黒い炎がスペルビアに当たるかと思われた瞬間、既に走り出していたバルトロが盾を構えてブレスを受け切った。
『思ったよりも強いな…!スペルビア、大丈夫か?』
『バルトロか、助かった!御子様が黒い靄に取り憑かれたかと思ったら巨大化して暴れ回っていて困り果てていたところだ。アルクス達もいるのか?』
『あぁ。アルクスは黒い靄に取り憑かれた俺達を助けてくれたんだ。アーラもなんとかなるはずだ、安心していいぞ!』
スペルビアはその言葉にホッとしたのか、やる気が回復した様に目に気合いが入った。
『アルクス、私達はどうしたらいいか?』
『少しだけアーラの動きを止めてもらえるかな!』
『わかった!』
バルトロが黒龍の攻撃を受け止めつつ、アリシアとクリオとスペルビアは自分達の可能な攻撃を黒龍に向けて放っていた。
ダメージを与えられている様子はなかったものの、動きが緩慢になったのでその隙にアルクスは黒龍へと駆け寄って闘気開放で殴りかかった。
だが、黒龍からは少しだけ黒い靄が飛び出しただけで倒れることはなかった。
『さっきまではこれでなんとかなったのに…』
黒い靄からの解放に失敗したタイミングで黒龍は尻尾を振り回し、バルトロ意外は全員弾き飛ばされてしまった。
『いたたたた…』
『アルクス、攻撃は俺が受け止めておくからどうしたらいいか考えてくれ!』
『ありがとう、バルトロ兄さん!でもどうしたものか…』
アルクスが闘気解放でアーラを黒い靄から解放できなかったことで、どうしたものかと考えあぐねていた。
『ねぇ、アルクス。さっき教わった闘気解放って龍気で同じことはできないの?』
『んー、できないことはないと思う。ちょっと練習してみようか。』
アルクスが少しだけ自分の中にある龍気を込めて解き放ってみた。
闘気解放とは違い衝撃波は生まれなかったものの、龍脈の様な強い力の流れが感じられた。
『アルクス、なんとかなりそうか?うわっ!』
龍気を解放した後、黒龍は龍脈の流れと同じ力を感じとったためか、バルトロを振り払いアルクスへと近づいてきた。
『3人とも少し離れてて。』
アリシア達は頷いて、アルクスから距離をとるように散開した。
『アーラ、痛かったらごめんね!』
そしてアルクスは溜め込んでいた龍気を黒龍に叩きつけるように解放した。
目に見えない力の奔流が生まれ、黒龍は内側から黒い靄を弾き出して巨大化した時のアーラの姿になるとすぐに縮んでいつもの大きさへと戻った。
『良かった…!』
そして、力を使い果たしたアルクスはその場に倒れ込んだのであった。
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---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
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