ネオ・アース・テラフォーミング〜MRMMOで釣り好きドワーフの生産奮闘記〜

コアラ太

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何をするにも道具から

叩きます!

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 明日が俺の成人の儀式、という段階になって鉈が完成した。
【劣化鉄の鉈-】この劣化がなかなか取れない。
 親方の話だとスキルを上げていくと純度が上がっていくらしい。現状でも純度が徐々に上がっていて、そろそろマイナスが取れそうだ。

 そして、例のアーツについて残念なお知らせだ。
 親方の『ランク1鍛造』は、鍛冶の行程全てを盛り込んでいたが、俺が使えたのは叩く行程のみ。
 そしてそのアーツを使う時に叫ばないといけないという残念さ。
 みんなにも見せてあげよう。

「毎回これを言うのか…」
「まぁ、早くなるんですから良いと思いますよ?恥ずかしさを耐えれば」
「やるか…。『ランク1鍛造:叩きます』おらぁ!」

 赤熱したインゴットが一打でナイフに変わった。
 だけど、『叩きます』って何だよ!せめて『叩く』じゃないのか?
 運営どうなってるんだ?えぇ?
 とりあえずログアウトしたら報告とクレーム投げておこう。さすがにずっと言うのは恥ずかしいわ。

「『叩きます』『叩きます』『叩きます』『叩きます』」
「ハッチさん。煩いから止めてもらえます?」

 涙が出そう。



 インベントリに大量のナイフをぶち込んで、アルデンさんのところにお邪魔している。

「今回はたくさん持ってきたねぇ。こっちも弟子が増えたから助かるんだけどね」

 何度も予備で渡していたナイフも、弟子が増えてから不足気味になっていた。
 俺だけじゃなく、ぶち猫さんも搬入していたが、なかなかストック出来なかった。今回の搬入で多少は余裕が出来るだろう。
 ちなみに、武具のナイフとはレシピが違うみたいで、個別に必要となっている。

「ハッチ君もかなり慣れてきたね。そろそろスキルレベルも5位になったかな?」
「ピッタリ5です。やっぱりわかりますかね?」
「そりゃあ弟子をとるくらいだからね。まぁ、ほとんどドワーフ以外なんだけどね」

 アルデンさんのところには、ポックル族の人達が多くきている。雑貨屋と武具にも来ているが、アルデンさんの人柄と…イケメンに釣られたんだろうな。
 後ろから蒸し暑い視線がギラギラと刺さってくる。

(やっぱり最高だわ。)
(長身で爽やか。)
(さらに優しくて仕事も出来て完璧!)
(ここがユートピアよ。)

 ちなみに彼女達は、エルフ達の集落に入ろうとして追い出された実績がある。それから、1年間出禁の呪いを受けたのでこちらにやってきた。
 そんな彼女達だが、かなり優秀な木工士に成長している。
 アルデンさんの指先の動き1つ見逃さない集中力、それをイメージして模倣する能力、全ての感覚を総動員してアルデンさんを脳に焼き付ける力。
 ここまで来ると尊敬しちゃうよね。

 俺が最初に教えてもらったということで『アルデンふぁんくらぶ』の木札をいただいた。
 使い道のない木札は、今のところ屋根裏部屋の肥やしになっている。
 むしろ使うことが無いことを祈っている。

「それで、鉈も出来たからアーツの試しに大量生産してみました」
「良いんじゃ無いかな。ただ、やっぱり性能落ちるからね」

 アルデンさんが柄を取り付けたナイフを眺めながら難しい顔をしている。

「明日成人だったよね?」
「そうですよ」
「それなら、その後に売れば良いか」
「ん?どういうことですか?」
「あぁ、明日になればわかるよ。今は言えないとだけ」

(アルデン様の秘密!)
(鼻血出そう)
(耐えるのよ!)
(あなたはヨダレ出てるわよ!)

「ふぅ。明日を楽しみにしておきます」
「そうすると良いよ」

 俺は耐え切ったぞ。
 木工工房から出てくると、謎の達成感と汗が出てくる。
 下手なことを言うと、怖い視線が四方八方から飛んで来る。今では木工工房に入る前に、1度気合いを入れないと足が進まなくなってしまった。

「魔窟になってしまったな。恐ろしや」

 雑貨屋に戻ると、見慣れた光景で安心する。
 3陣が来てからリリーさんも裁縫を教えてて忙しそうにしている。その甲斐《かい》もあって、雑貨屋の棚に靴下が並んだ。
【くず鉄の劣化ナイフ】【くず鉄の劣化ツルハシ】【毛糸のミトン-】
 ぶち猫さんの制作過程を見ると、そろそろ手斧とトンカチも並べられそうなので、充実するまであと少し。

 今では見慣れた鍛冶の様子だが、人が増えて賑やかになってきたな。

「鉱山行ってこーい」
「「「「「ドワ活行ってきまーす」」」」」

 後輩達を見送り中に入る。

「戻ったか。さっそくだが、武具工房から替えのトンカチを頼まれた」
「いくつですか?」
「20本。弟子用に劣化で良いらしい。今日中に納品だ」
「実家に帰らせていただきます」
「阿呆が!ハーフドワーフもここが実家だろうに!インゴットはあるから早くやれ」

 その日、工房から奇怪な叫び声が鳴り響いていた。

「はぁ、『叩きます』『叩きます』『叩きます』『叩きます』『叩きます』運営に苦情入れてやる」
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