ネオ・アース・テラフォーミング〜MRMMOで釣り好きドワーフの生産奮闘記〜

コアラ太

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何をするにも道具から

誕生日会

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 今、俺達は戦場へ向かっている。

「お?あの人誕生日じゃないか?祝ってあげよう」

「やめとけ!」

「なんでだよ。誕生日は祝うってルルブに載《の》ってたろ?」

「あれは『釣りカス連合』の奴だ」

「まさか…あれが釣りカス」

「俺達とは世界が違うんだ。そっとしてあげよう」

 俺ら『釣りカス連合』は、ラブ掘でもかなり有名になったものだ。
 俺らが向かっている場所は、校舎裏のプール。

 辿り着くと、すでに準備は整っているようだ。

「皆さんお集まりですね?本日はよろしくお願いします」

「主役が来たので説明しよう。スナイパーハッチ氏に頼む景品が決まった。」

 釣り会だと、誕生日の者が一品だけ提供するという習わしがある。それは金銭の絡まない商品。そのため、おのずとゲーム内のアイテムか、リアルの小物になってくる。

「今回は『寝テラ』の雑貨を要望する権利だ」

 まさかその方向で来たか!

「我々釣り人の中でも、ハッチ氏が一番生産出来るからな。全会一致で決まったぞ」

「そういうことなら良いでしょう」

 バッ!っと腕を突き出し、着ていたマントを旗めかせ、開始の合図。

「これより30分!数は関係ない!大きさのみを競う!さぁ、存分に釣りたまえ!」

「「「開始だぁーー!」」」

 参加者が一斉に飛び出し、配置に着くと、各々独特なフォームで釣り出した。
 このフォームが問題で、寝そべる者から箱に隠れて釣る者まで。
 独自の縁起を担ぎながら竿を投げ出している。
 そして、その日の最多釣果に権利がある大漁旗。
 この異様な光景を見た、一般プレイヤー達は、中に入ることなく回れ右。一応言っておくが、誰一人として拒否していない。むしろ新しい釣り人はニワカだろうと大歓迎だ。

 お?
 アランのそれ巨メダカ来たか!?

「アランがついに釣りやがったか!?」
「おぉ!このタイミングで、逃すんじゃねーぞ!」
「タモ持ってこいタモ!
「バカがこのゲームにそんなものは無いぞ」

 あちこちで騒いでいるが、手伝いも出来ないので見ているしか無い。
 良いぞ!あと少しで頭が出てくる!
 来た!

 …

「よ、良かったじゃないか!」
「そう…だよな!」
「いやぁ。ナマズが来ちゃったか」
「おい!」

 先日のアップデートで1種追加されたナマズ。こいつも一応レア枠だが、それなりの頻度で出るらしい。残念だったなアラン。
 どんどん目から光が消えていき、無言で釣り始めるアラン。
 周りも触れないように、持ち場に戻り釣り直し。

 結局誰も巨メダカは釣れなかったため、アランが優勝となった。

「まぁ、作れる範囲でがんばるから、気を取り直してくれ」

「あぁ。今度希望を伝えるよ」

「お、おう!」

 これで解散。
 と言っても次があるからな、アランは疲れたようでここで終わると言っている。

 次は『釣りゾンビ』か。

 ◆◆◆

 寂れた廃墟が乱立し、草木の生えない地面。
 この退廃世界が『釣りゾンビ』の世界。
 正式名称は『Riot to carry』暴動する菌。

「アラン。呆けてないで準備しろ。すぐにキノコ共がやってくるぞ!」

「わかってるよ」

 俺の愛用品は、SR-25。セミオートなので、狙撃厨にニワカと言われているが、そもそも釣り人なので気にして無い。
 これの便利なところは弾数20発と多くて便利なところ。狙撃中に近づかれても持ち替えずに撃てるところが良い。ただし、懐にダメージがでかい。
 持ち替えの余裕がある時は、ハンドガン。個別名称無しの初期装備。
 近接武器は軍用シャベル。何気にこいつを一番使ってるよな。弾代かからないし。

 近づいてくるゾンビ共を倒しつつ、目的地へ向かっていく。
 倒したゾンビからキノコを回収するのも忘れない。
 このキノコが現金に換えられるので、ゾンビ=キノコと呼んでいる。

「ハッチ!こっちこい!」

 そう呼んでくるのは、ユニオンリーダーの伊勢さん。

「みんないつ来るかと待ってたんだよ」

「お待たせしてすみません」

「今日は敵対ユニオンも参戦するから、平和なもんだよ」

 伊勢さんの指先には、俺達『ポセイドン』の敵対ユニオン『オーケアニデス』がいる。

「ハッチの誕生日パーティーって聞いて来てやった」

「「「「おー!」」」」

 2年程前から、なぜか誕生日だけは、互いに祝うという決まりが出来ていた。先ほどとは違って、今回は俺も参戦できる。
 ルールは簡単で換金額最多の者が優勝。
 優勝者の権利は、金額の総取りもしくは、願い事一つ。
 願い事は、内容によっては却下されることもある。

「ハッチ!お前が合図出せ!」

 伊勢さんが角笛を投げ渡してくる。

 プオォォォォ!

 一斉に走り出す…ことなく、各々の道具に仕掛けを作っていく。
 俺はシャベルの首にワイヤーを繋げて、途中に風船の浮き、先端に針をつける。人によりバールだったり、ハンマーだったり色々だ。
 釣り竿が無いので、代替品を使うのが基本。これが釣りのチュートリアルで、AIに教えられたやり方なんだよな。

 最初に釣り上げたのは敵のユニオンリーダーであるステュクスさん。

「まずは一匹!ランク1か…つぎぃ!」

 ランク5まであって、数字が高いほど高価になる。
 俺も頑張っているが、なかなか釣れない。
 沼地に投げる者、地面に投げる者、俺は空に投げている。
 沼は毒魚が釣れやすく、地面だとゾンビ魚と骨魚、空はエイが釣れる。

「ハッチも空なんか狙って!なかなか釣れんだろう!」

 そう、空は高ランクが多く釣れにくい。

「今日は記念だから良いんだよ」

 …

 残念ながら小ぶりなエイが1匹だけ。

「よっしゃあぁぁぁ!あたしが優勝だな!」

「くっそぉ。あとちょっとだったんだが…」

 今回はステュクスさんが高かったみたいだな。

「あたしの願い事は、『寝テラ』でハッチの村に招待してくれ」

「ドワーフ村に?そんな機能ありましたっけ?」

 最近の追加アップデートに入ってたらしい。自分のホームポイントに招待出来るが、1人招待すると1ヶ月間招待出来なくなる。
 まさかテレポートで飛んでこれるか?と思ったが、そこまで便利ではない。
 案内された者は、危険地帯も素通り出来て、安全に移動出来る。

「お前の配信見たら、人族の街じゃ成長遅いと思ってな。雑貨屋のリリーさんに弟子入りしたい」

「そういうことなら了解です。明日には招待送りますね」

「よっし!」

 こんなことで喜んで貰えるなら来て良かったよ。

「みんな誕生日釣り会参加ありがとー!」
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