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日本初イベント大会
フィッシングバトル
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我先にと水場を目指すガチ勢とライトなエンジョイ勢は、どこから見ても丸わかり。隣の伊勢さんなんて、鼻息だけで人を吹き飛ばせそうな勢いがある。
「みなさん。準備は良いですか? 3! 2! 1! スタートォォォ」
ダダっと走り出し、最初に目指すのは中央の巨大湖。ではなく、その隣に流れる支流。
そこからラン&ガン方式にルアーを投げ入れ、巻きとりながら上流を目指していく。
「考えることは同じか」
「オトシンさん!? ルアーは規定外ですよ!」
「使ってるお前に言われたくねぇ! それにこれは」
まさか!
露店に出した伊勢さん考案の特性ポッパーじゃないか!
しかも地味に良い動きを見せてくる。
「本日限りの簡易オケアーデスも結成した。あんたらには負けられないよ」
「くっ」
狙うポイントも似通っていて、ウィードやシェードに投げ入れる時に何度かルアーがバッティングしている。
「邪魔しないでください!」
「ヤナこった! それより……ヒット!」
「あぁ!」
汚い釣り方をする。
「スレで釣ると場が荒れるんですよ!」
「リアルなら配慮するよ? だが今だけはフリーダム!」
「くそぉ」
であれば、ランガンを捨てて先に上流のひょうたん池を目指すしかない。
ダメージを負うからあまり使いたくなかったが仕方ない。
「ヤマト! 水弾を連射だ!」
「そんなことで振り切れると……マジか!?」
しっかりとヤマトを抱え込み地面に水弾を撃たせると、体に浮遊間を覚える。限界まで魔力を注ぎ、数百メートルのアドバンテージを得ることができた。
魔力切れ寸前のヤマトは、水鉱石を食わせて格納。
ここからはひたすら走り続けるのみ。
残り半分のHPと少ないMPで支流を駆け上がると、ひょうたん池が見えてきた。
水の流れも緩やかで底が見えない。こういう場所なら最初はワームで攻めてみるか。
手早くルアーを外し、軽めのオモリと針に付け替えミミズを装着。
中央手前の杭あたりに放り込み、ずりずりと底を這わせる。
時々当たっているだろう小石に一喜一憂しつつ引いていると、大きめの抵抗を感じる。
まだだぞと自分に言い聞かせ、軽く竿先を振りながらアピール開始。走り込んでくるオトシンさんは後からやってきた鰻太郎さんとバトっている。行ける! 行ける!
コンコン。
ちょん。
コココ。
ココン。
ゴゴン!
ヒット!
「おっしゃ! なかなか悪くないぞ」
「ハッチ! そのまま行くっしょ!」
「ウナさん任せてくれ!」
ひょうたんの頭をウナさんが抑え、オトシンさんが俺の対面にやってくる。その後も続々と増えていき、ようやく岸辺に寄せたころには20人が辿り着いていた。
「いけ! あとちょっとだぞ!」
「はい!」
水辺に寄って持ち上げると、大きな大きなグッピーが釣れた。
【大グッピー:15cm、307g】
「あんなに引いたのに!?」
「……グッピーで15cmは大物だよな?」
「そ、そうだな」
周りの空気が冷めていくのを感じる。それとは対照的に対面の女だけはバカ笑い。
「あっはっはっは。さすがハッチだ!」
「そういうオトシンさんはどうだったんです!」
「あたしはちゃんとしたの釣ったさ。ディスカスもどき18cm」
「あまり変わらないじゃないか!」
「それでもあたしの方がデカい。重い。迫力がある!」
くそぉ。めっちゃ悔しい!
ここで負けたままは嫌だ。蚯蚓《メメゾ》から大会指定の練り餌に切り替え、水中の駆け上がり部分を狙う。
周りもちらほらと釣れ出し、水上に出た魚体は見えるが、どれも20cm未満のサイズ。ここはドカンと25cm超えを狙いたい。いや……重さ対決だったのを忘れてた。
居合斬りをするかのように、ジリジリと糸を引き、魚との間合いを図る。右へ、左へ、ちょんちょんと引く。己《はり》の間合《ばしょ》を確かめつつ、食らい付いてきたことがわかれば、刀《さお》を振り上げヒット!
当たったのはフグドラス。デカいコリドラスかと思っていたら、水揚げ瞬間に膨らみ出した。
先日の恐怖から悲鳴を上げてしまったが、しばらくするとオナラの音を出すようにプゥゥと空気を放り出し萎んでいく。
【フグドラス:17,5cm、412g】
「驚いた」
「ハッチ。さすがに悲鳴は……」
「いや、あれは驚きますって。というかこいつ屁こいた?」
「屁ッチ氏」と聞こえたが、誰が言ったかわかっている。俺はちゃんと見てたぞドリラー。お前だ!
周りでは釣れているが、人が増えたせいか相対的に釣りづらくなっている。場所としては悪くないんだが、さすがに50人を超えたあたりで、渋くなってきた。
これが回遊魚みたいにポンポコ釣れるなら良いが、ここの運営が池でそれをやらせるはずがない。
そうとなれば動き出すのは早い方がいい。
知り合いの釣りカスどもは、みんな似たような考えらしく、ひょうたん池から四方八方へ走り出す。各々の釣果を高めるため同じ方向に行かないところがプロ根性。というか、少しでも他人より良いのを釣りたいという意地汚い考えが大きい。
同じ考えで動く俺も意地汚いわけだが、だからこそその仲間たちも言っている。俺たちは釣りカスであると。
「みなさん。準備は良いですか? 3! 2! 1! スタートォォォ」
ダダっと走り出し、最初に目指すのは中央の巨大湖。ではなく、その隣に流れる支流。
そこからラン&ガン方式にルアーを投げ入れ、巻きとりながら上流を目指していく。
「考えることは同じか」
「オトシンさん!? ルアーは規定外ですよ!」
「使ってるお前に言われたくねぇ! それにこれは」
まさか!
露店に出した伊勢さん考案の特性ポッパーじゃないか!
しかも地味に良い動きを見せてくる。
「本日限りの簡易オケアーデスも結成した。あんたらには負けられないよ」
「くっ」
狙うポイントも似通っていて、ウィードやシェードに投げ入れる時に何度かルアーがバッティングしている。
「邪魔しないでください!」
「ヤナこった! それより……ヒット!」
「あぁ!」
汚い釣り方をする。
「スレで釣ると場が荒れるんですよ!」
「リアルなら配慮するよ? だが今だけはフリーダム!」
「くそぉ」
であれば、ランガンを捨てて先に上流のひょうたん池を目指すしかない。
ダメージを負うからあまり使いたくなかったが仕方ない。
「ヤマト! 水弾を連射だ!」
「そんなことで振り切れると……マジか!?」
しっかりとヤマトを抱え込み地面に水弾を撃たせると、体に浮遊間を覚える。限界まで魔力を注ぎ、数百メートルのアドバンテージを得ることができた。
魔力切れ寸前のヤマトは、水鉱石を食わせて格納。
ここからはひたすら走り続けるのみ。
残り半分のHPと少ないMPで支流を駆け上がると、ひょうたん池が見えてきた。
水の流れも緩やかで底が見えない。こういう場所なら最初はワームで攻めてみるか。
手早くルアーを外し、軽めのオモリと針に付け替えミミズを装着。
中央手前の杭あたりに放り込み、ずりずりと底を這わせる。
時々当たっているだろう小石に一喜一憂しつつ引いていると、大きめの抵抗を感じる。
まだだぞと自分に言い聞かせ、軽く竿先を振りながらアピール開始。走り込んでくるオトシンさんは後からやってきた鰻太郎さんとバトっている。行ける! 行ける!
コンコン。
ちょん。
コココ。
ココン。
ゴゴン!
ヒット!
「おっしゃ! なかなか悪くないぞ」
「ハッチ! そのまま行くっしょ!」
「ウナさん任せてくれ!」
ひょうたんの頭をウナさんが抑え、オトシンさんが俺の対面にやってくる。その後も続々と増えていき、ようやく岸辺に寄せたころには20人が辿り着いていた。
「いけ! あとちょっとだぞ!」
「はい!」
水辺に寄って持ち上げると、大きな大きなグッピーが釣れた。
【大グッピー:15cm、307g】
「あんなに引いたのに!?」
「……グッピーで15cmは大物だよな?」
「そ、そうだな」
周りの空気が冷めていくのを感じる。それとは対照的に対面の女だけはバカ笑い。
「あっはっはっは。さすがハッチだ!」
「そういうオトシンさんはどうだったんです!」
「あたしはちゃんとしたの釣ったさ。ディスカスもどき18cm」
「あまり変わらないじゃないか!」
「それでもあたしの方がデカい。重い。迫力がある!」
くそぉ。めっちゃ悔しい!
ここで負けたままは嫌だ。蚯蚓《メメゾ》から大会指定の練り餌に切り替え、水中の駆け上がり部分を狙う。
周りもちらほらと釣れ出し、水上に出た魚体は見えるが、どれも20cm未満のサイズ。ここはドカンと25cm超えを狙いたい。いや……重さ対決だったのを忘れてた。
居合斬りをするかのように、ジリジリと糸を引き、魚との間合いを図る。右へ、左へ、ちょんちょんと引く。己《はり》の間合《ばしょ》を確かめつつ、食らい付いてきたことがわかれば、刀《さお》を振り上げヒット!
当たったのはフグドラス。デカいコリドラスかと思っていたら、水揚げ瞬間に膨らみ出した。
先日の恐怖から悲鳴を上げてしまったが、しばらくするとオナラの音を出すようにプゥゥと空気を放り出し萎んでいく。
【フグドラス:17,5cm、412g】
「驚いた」
「ハッチ。さすがに悲鳴は……」
「いや、あれは驚きますって。というかこいつ屁こいた?」
「屁ッチ氏」と聞こえたが、誰が言ったかわかっている。俺はちゃんと見てたぞドリラー。お前だ!
周りでは釣れているが、人が増えたせいか相対的に釣りづらくなっている。場所としては悪くないんだが、さすがに50人を超えたあたりで、渋くなってきた。
これが回遊魚みたいにポンポコ釣れるなら良いが、ここの運営が池でそれをやらせるはずがない。
そうとなれば動き出すのは早い方がいい。
知り合いの釣りカスどもは、みんな似たような考えらしく、ひょうたん池から四方八方へ走り出す。各々の釣果を高めるため同じ方向に行かないところがプロ根性。というか、少しでも他人より良いのを釣りたいという意地汚い考えが大きい。
同じ考えで動く俺も意地汚いわけだが、だからこそその仲間たちも言っている。俺たちは釣りカスであると。
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