ネオ・アース・テラフォーミング〜MRMMOで釣り好きドワーフの生産奮闘記〜

コアラ太

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飛び出せ!

密会

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 ゆったりもったりと膨れた腹を抱えながら無機質な船内を歩いてると、笹森さんが呆れたような表情で話しかけてくる。

「よくそんなに食べれたね」
「味が良かったからついつい食べてしまった」

 気をつけないと胃から込み上げる空気が口から漏れ出てしまう。
 笹森さんが期待した返事じゃなかったようで、隣の船長から補足が入った。

「いやいや。何かわからないような物をよく気にせずあれだけ食べれたのかと」

 確かに何かわからなかった。
 現物を見せてもらっても謎野菜しか出てこなかったし、発光してる物体や臭い物もあったな。
 でも、深海魚の方がゲテモノっぽい見た目してて、気にするほどでもない。
 おそらくこの船長はそういう美味しいゲテモノを食ったことが無いんだろう。

「あれよりすごいの食ったことあるからかも?」
「え? あれよりですか!?」
「今度知り合いに頼んで取り寄せます! 是非是非食ってください。あ、もちろん毒とか無くてちゃんとした魚ですよ」

 めちゃくちゃ美味しいことも伝えたんだが、丁重に断られてしまった。
 笹森さんにも目線を向けると逸らされてしまい、これ以上話せなくなってしまう。
 その後はオーク星の船の話に移り、船長が饒舌《じょうぜつ》に褒める様子を見ている。
 どこの機能が良いとか、何の素材で作られているのかと船員と深く話し合っているが、正直言って単語がわからない。

「継ぎ目一つ無く、まるで生き物のようですな」
「素材が我々の星に無いのはありますが、技術力が違いますね」
「うんうん。これは一朝一夕で学べる技術ではないでしょう」

 数歩遅れて歩きながらその会話を聞いているものの、アーゴの上司が言っていた魚という話が気になって頭から離れない。
 オーク星人と魚の関係とは何だろう。
 その魚はどんなものだろうと頭を働かせていると、気づけば部屋の前まで来てしまっていた。

「ハッチ君。もう今日の予定は無いから、夕食までゆっくりしてて良いよ」
「夕食……食えるかな?」
「まぁ、そのお腹だとそうか。それなら夕食はキャンセルしておくね」

 その言葉をありがたく受け取って、今日はお腹を休ませることにした。
 24時間食堂は開いてて、サンドイッチ程度なら常に出せるみたいだから、困らないしね。

 笹森さんと別れて、部屋に入るとすぐに眠気が襲ってくる。
 ソファに座って時計を見ると、日本だと日が沈みかける時間。
 アンティーク時計がカチコチと鳴り、その音が心地良い。

 うとうととしながら目を閉じていると、扉をノックする音が耳に入る。
 目を開けて見たが、部屋まで訪れてくる人なんて宇宙船に乗ってから一度もない。

「気のせいかな?」
 コンコン

 独り言の直後にノックが鳴って少しビビる。

「おわっ!? い、今出ます」

 急いで扉を開けて見たものの、そこには誰もいない。
 念の為辺りを見渡してみても人っ子一人見られず。

「な、なんだったんだ?」

 扉を閉じて、またソファでゆっくりしようとしたところで、見覚えのある人物が立っていた。
 いや、機体と言った方が良いか。
 毛の抜けた胸に印が描かれている奴。

「お、お前!?」
「さっきぶり」
「ま、まさか仕返しか!? や……やるってんなら、俺だって抵抗す、するずぉ」

 見よう見まねのピーカブースタイルからシャドーボクシングで威嚇。

「ぷっ。一応こっちは軍人だから、その程度じゃ無駄さ。危害を加えに来たわけじゃないから安心しろーい」
「ほ、本当だな?」
「イタズラは好きだけど、本気《マジ》じゃ楽しめないだろ。それより座れよ」

 アーゴは着ぐるみから顔だけ出してベッドに座ると、対面の椅子を指差す。
 俺が心を落ち着かせながら椅子に腰掛けると、一息置いてから話し出した。

「それで、何の用だよ」
「そうツンツンするなって。お前に渡し忘れたものがあったんだ」

 そう言って細い紐を放り投げてきた。
 紐の真ん中あたりに小さな木の実がついている。

「これは……何?」
「うちの船長からお前にプレゼントだ。首につけてみろよ」
「呪いのアイテムとかじゃないよな?」
「はぁ……貸してみろ」

 アーゴがもぎ取って首につけると、紐の端が自然と絡まってネックレスみたいになる。
 それに驚いたのと『やっぱり変な物だ』と言おうとしたところで、繋ぎ目付近を引っ張って外すところを見せてきた。

「ほらよ。そいつは常に身につけておけ、呪いどころか祝福が掛かってる一品だぞ」

 エビス様に勝るものは無いと思っているが、外せるなら問題無いだろうと返されたネックレスを装着。

「おそらく明日役に立つ。ちゃんと着けておけよー」

 それだけ言うと、俺の返事を待つことなく部屋から出ていった。
 ちょっと目が霞んで、去っていく姿は見えなかったが、足音一つ無いのはさすが軍人といったところだと感心する。
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