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3章 国内小旅行。
第47話 薬師の修行
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「メサもオスクも。準備は良いか?」
プルプル。
くわぁ!
「じゃ、南東の村まで行くぞー」
俺たちはこれからイア師匠のところへ向かう。
王都の中だと出費が多い上に、人混みばかりで疲れてしまうんだ。
数日過したが、ずっと居るのは耐えられないな。
だから、用事のある時だけ王都に行って、普段は村周辺を拠点にすることにした。
師匠から村人に話を通してくれるそうなので、入れてくれないことは無いと思う。
その村は、王都の南門からも見える位置にある。
ほとんどが農家で、王都の住人も滅多に立ち寄ることはない。
買い物なら城下町で事足りるからな。
あっても税の取り立てくらいだろう。
「探索者のノールです。しばらくお世話になります」
俺が対面しているのは、この村の村長。
今までにいなかったタイプだが、キリッとした顔立ちで厳しそうだ。
「イア様からは聞いている。野菜にも詳しいらしいな? 暇な時にでも野菜談義しよう」
まずまずな対応をしてくれた。
「私も野菜の話は好きなので、是非お願いします」
「うむ。従魔については、何か目印が必要だな。村人が何かするとは思わないが、対策しておくに越したことはないだろう。イア様と相談しなされ。あちらの家に居る」
家の場所を手で示してくれている。
低めの石垣に囲まれた石壁で瓦屋根の平家。家の前は草がボウボウと生えているが、良くみるとハーブ類や安価な薬草だった。
地下にも生えていたが、ここでも育てているのか。
扉を開けて入ると、王都の建物と同じような作り。
メサとオスクまで入ると少し狭いな。
石壁と苔や蔦に囲まれた一部に、目印のルーン文字を見つける。
「草と棒」読めてないが、教えてもらった合言葉を唱える。
石壁が上がり階段が現れる。
この村からの階段は短く、すぐに到着した。
「良くきたのじゃ。迷いはしなかったか?」
「はい。前にしっかりと教えてもらってたので、わかりやすかったですよ」
「うむうむ。そやつらが従魔か? 良い子じゃなー」
師匠が撫でていく。
オスクも気持ちよさそうにしているが、メサは急に上ったかと思うと、天井に触れてプルプルしている。
何か気に入ったのかね?
「浮きクラゲか。特に気にしたことは無かったが、従魔なら新たな発見があるやもな。調べてみるのも面白そうなのじゃ」
興味深そうに眺めているなぁ。
やっぱり珍しいのか?
「師匠。それも良いですが、私の修行もお願いしますね?」
「わかっておる! それとノールは、私を名前で呼べ。あとその口調似合わんぞ?」
「教えてもらうのに、名指しはちょっと……」
「ふん。ペトラの奴から連絡があった。同じ長命なのじゃろ!? 敬語だと私が気持ち悪い!」
「じゃあイアさんで」
「まぁ、それで良い」
納得してくれたようだ。
その流れで、従魔の目印について話す。
イアさんは一瞬考えた素振りをすると、家から大きめの青い布を2枚持ってきた。
「魔鴨はこれで良い。クラゲは……本人の好きに持たせれば良いのじゃ」
オスクはスカーフの様に巻いてあげて、メサには手渡していた。
メサはどうするのだろうと見ていると、ネジネジして頭に乗せる。
ブルブル震えて近寄ってくる。
ドヤってる念を飛ばしてくるが、本当にそれで良いのか?
「屋台の親父みたいなのじゃ」
「本人はかなり気に入ってるみたいです」
「浮きクラゲの謎が増えたのじゃ。さぁ、少し休憩したら薬草学から始めるぞ」
そうして一緒に家へ入る。
今日は簡単な薬草の種類の説明から始まる。
薬草の種類を大きく分けると3つ。
1つ。
病気や痛みなどを和らげたり、体の治癒力を高める物。
俺が普段使っている物はこれに部類される。
いわゆる漢方系。西洋の薬もここに入る。
2つ。
生命力の多い物。
食べるだけで体力を回復したり、肉体の修復をする効果を持つ。
また、反対の効果を起こす物もある。
3つ。
魔力の多い物。
食べると体内の魔力を補充したり、魔力に影響して何らかの反応を起こす。
漢方系は正式に名前が付いてない植物が多く『どこどこに効く草』など、その地域で呼び方も異なるらしい。
だからこれまで名前がわからなかったのか。
この種類の草は、毒を持っていたりするので、物によっては毒草に分類されることもある。
薬の副作用のことだな。
2と3番目の物がポーションに使われる。
あえて物と言っているのは、植物だけでなく動物や鉱物も含まれている為だ。
俺が普段使いしている薬草は『癒し草』と言って比較的万能な薬草だ。微量の魔力を内包しているが、効果も弱く、どこにでも生えている。薬草と言われたら大体『癒し草』のことだ。
以前取ってきた『月光花』『月光草』は魔力の多い植物になる。アンデッドに対して強い効果を見せる。それで作られたポーションは一部の解呪にも使われる。
『太陽草』は生命力の多い植物だ。これから成分を抽出して、調合すると中級の回復ポーションになる。採取するのは面倒だが、数はそれなりに生えている。
イアさんが保管している薬草をいくつか見せてくれた。
『マナハーブ』広めの葉を持ち、爽やかな香りが強い。俺も前から見つけていたが、香草系ハーブとして使っていた。魔力回復用のポーションに使うらしい。
『パワーマッシュ』ゲンコツのような形のキノコ。乾燥させて粉末にした物を使って、下級ポーションの作成に使う。ジメジメした洞窟などに生えやすく、まとまっていて数が多く取れる。
『地竜草』竜種が近くにいると生えやすいと言われているらしい。魔力を多く含み霊薬の触媒になる。特殊な加工が必要な為、作れる人物は少ない。希少な薬草で、数十年に1度も見つからないこともある。生えている場所で名前や見た目、効果も少しずつ異なっていた。
『天竜草』『水竜草』『火竜草』は確認されている。
いくつか見せてもらった中で気になった物があった。
「イアさん。これは?」
「そいつは『節木《ふしき》』なのじゃ。節くれを作りながら上に伸びていく木でな。中が空洞になっている。風邪の薬にも使うことがあるな」
「まさしく竹だ……。こいつの生えかけを食べたりしないのですか?」
「聞いたこと無いのじゃ。硬いし歯に悪そうじゃぞ?」
筍を食べる文化は無いのかな?
こいつは欲しい、というかメンマが欲しい!
ニンニク、メンマ、うっ頭が……。
「欲しいなら、この国の南側にある山近くだぞ。そのうち行ってみると良いのじゃ」
良いことを聞いた。
「必ず行ってみます!」
「う、うむ。そうすると良い」
ちょっと引かれてしまったな。
だけど、メンマは見逃せないぞ。
その後も色々と見せてもらうと、思ったより見逃していた薬草が多いと気づく。
次、森に入ったら今までの倍以上見つけられる気がするぞ。
さすがに1日では覚えられないので、少しずつ覚えながら、植物以外はまた後日教えてもらうことになった。
「ところで気になっていたのじゃが。その服……」
「ん? 作務衣のことですか? 自分で作ったんですよ」
「どこかで見たことあると思ってな?」
思案顔で作務衣を観察している。
「いやぁ? 俺以外着てる人いなかったですよ? 故郷の服だしなぁ」
「この国のどこか……。確か人はあまり居なかったのじゃ。んー。これ以上は今は出て来ないのじゃ」
「そうですか。まぁ、同郷の人が来てたんでしょうかね?」
「うむ。ところでどこに泊まるつもりか?」
ちょっと考えてみたが、下手に宿とか探す必要も無いよな。
「村の外でテキトーにですね。ここらの夜も調査してみたいので」
「好きでやるなら良いが、ここに泊まっても良いと言っておくぞ」
「ありがとうございます。外が飽きたら来ますね」
雑談も終わり、外に戻る。
そろそろ、バートさんとの約束の日だな。
イアさんにも、明日は王都に行くと伝えておく。
「メサ。オスク。いくよー。」
2匹とも地面に何かしてたようだが、俺の声で一緒に戻る。
______________
「ししょー! ノールさん帰っちゃいました?」
「ついさっき行ったぞ」
「間に合わなかったかぁ。薬草採取頼まれたんだけど……。急ぎじゃないから良いか」
「それくらいなら言っておくのじゃ。何を頼むんじゃ?」
「パワーマッシュです」
「今日教えたやつじゃな。次来た時に言っておこう」
言い終える間際、少し考え出した。
「ふと思ったのじゃが、エリスはノールの着てる服見たことあるか?」
「ノールさんの服? あれって遺跡から出てきた古代人の服ですよね。あんなの着てるから最初は学者さんかと思いましたよー」
「そうか! 遺跡の服か……。どうりで見覚えあるわけじゃ。同郷とか言ってたが、……服が似てだけか? まぁ、良かろう。今日もシチューなのじゃ」
「やったー! 最近多くていいですねー」
「今日はノールが、シチューに合うと芋を持ってきてな。『じゃがいも』とか言ってたな、芽と緑の皮を取ればうまいらしいぞ」
ピーちゃんもシチューは好きなようだ。
アホーアホーと2人に向かって鳴いている。
プルプル。
くわぁ!
「じゃ、南東の村まで行くぞー」
俺たちはこれからイア師匠のところへ向かう。
王都の中だと出費が多い上に、人混みばかりで疲れてしまうんだ。
数日過したが、ずっと居るのは耐えられないな。
だから、用事のある時だけ王都に行って、普段は村周辺を拠点にすることにした。
師匠から村人に話を通してくれるそうなので、入れてくれないことは無いと思う。
その村は、王都の南門からも見える位置にある。
ほとんどが農家で、王都の住人も滅多に立ち寄ることはない。
買い物なら城下町で事足りるからな。
あっても税の取り立てくらいだろう。
「探索者のノールです。しばらくお世話になります」
俺が対面しているのは、この村の村長。
今までにいなかったタイプだが、キリッとした顔立ちで厳しそうだ。
「イア様からは聞いている。野菜にも詳しいらしいな? 暇な時にでも野菜談義しよう」
まずまずな対応をしてくれた。
「私も野菜の話は好きなので、是非お願いします」
「うむ。従魔については、何か目印が必要だな。村人が何かするとは思わないが、対策しておくに越したことはないだろう。イア様と相談しなされ。あちらの家に居る」
家の場所を手で示してくれている。
低めの石垣に囲まれた石壁で瓦屋根の平家。家の前は草がボウボウと生えているが、良くみるとハーブ類や安価な薬草だった。
地下にも生えていたが、ここでも育てているのか。
扉を開けて入ると、王都の建物と同じような作り。
メサとオスクまで入ると少し狭いな。
石壁と苔や蔦に囲まれた一部に、目印のルーン文字を見つける。
「草と棒」読めてないが、教えてもらった合言葉を唱える。
石壁が上がり階段が現れる。
この村からの階段は短く、すぐに到着した。
「良くきたのじゃ。迷いはしなかったか?」
「はい。前にしっかりと教えてもらってたので、わかりやすかったですよ」
「うむうむ。そやつらが従魔か? 良い子じゃなー」
師匠が撫でていく。
オスクも気持ちよさそうにしているが、メサは急に上ったかと思うと、天井に触れてプルプルしている。
何か気に入ったのかね?
「浮きクラゲか。特に気にしたことは無かったが、従魔なら新たな発見があるやもな。調べてみるのも面白そうなのじゃ」
興味深そうに眺めているなぁ。
やっぱり珍しいのか?
「師匠。それも良いですが、私の修行もお願いしますね?」
「わかっておる! それとノールは、私を名前で呼べ。あとその口調似合わんぞ?」
「教えてもらうのに、名指しはちょっと……」
「ふん。ペトラの奴から連絡があった。同じ長命なのじゃろ!? 敬語だと私が気持ち悪い!」
「じゃあイアさんで」
「まぁ、それで良い」
納得してくれたようだ。
その流れで、従魔の目印について話す。
イアさんは一瞬考えた素振りをすると、家から大きめの青い布を2枚持ってきた。
「魔鴨はこれで良い。クラゲは……本人の好きに持たせれば良いのじゃ」
オスクはスカーフの様に巻いてあげて、メサには手渡していた。
メサはどうするのだろうと見ていると、ネジネジして頭に乗せる。
ブルブル震えて近寄ってくる。
ドヤってる念を飛ばしてくるが、本当にそれで良いのか?
「屋台の親父みたいなのじゃ」
「本人はかなり気に入ってるみたいです」
「浮きクラゲの謎が増えたのじゃ。さぁ、少し休憩したら薬草学から始めるぞ」
そうして一緒に家へ入る。
今日は簡単な薬草の種類の説明から始まる。
薬草の種類を大きく分けると3つ。
1つ。
病気や痛みなどを和らげたり、体の治癒力を高める物。
俺が普段使っている物はこれに部類される。
いわゆる漢方系。西洋の薬もここに入る。
2つ。
生命力の多い物。
食べるだけで体力を回復したり、肉体の修復をする効果を持つ。
また、反対の効果を起こす物もある。
3つ。
魔力の多い物。
食べると体内の魔力を補充したり、魔力に影響して何らかの反応を起こす。
漢方系は正式に名前が付いてない植物が多く『どこどこに効く草』など、その地域で呼び方も異なるらしい。
だからこれまで名前がわからなかったのか。
この種類の草は、毒を持っていたりするので、物によっては毒草に分類されることもある。
薬の副作用のことだな。
2と3番目の物がポーションに使われる。
あえて物と言っているのは、植物だけでなく動物や鉱物も含まれている為だ。
俺が普段使いしている薬草は『癒し草』と言って比較的万能な薬草だ。微量の魔力を内包しているが、効果も弱く、どこにでも生えている。薬草と言われたら大体『癒し草』のことだ。
以前取ってきた『月光花』『月光草』は魔力の多い植物になる。アンデッドに対して強い効果を見せる。それで作られたポーションは一部の解呪にも使われる。
『太陽草』は生命力の多い植物だ。これから成分を抽出して、調合すると中級の回復ポーションになる。採取するのは面倒だが、数はそれなりに生えている。
イアさんが保管している薬草をいくつか見せてくれた。
『マナハーブ』広めの葉を持ち、爽やかな香りが強い。俺も前から見つけていたが、香草系ハーブとして使っていた。魔力回復用のポーションに使うらしい。
『パワーマッシュ』ゲンコツのような形のキノコ。乾燥させて粉末にした物を使って、下級ポーションの作成に使う。ジメジメした洞窟などに生えやすく、まとまっていて数が多く取れる。
『地竜草』竜種が近くにいると生えやすいと言われているらしい。魔力を多く含み霊薬の触媒になる。特殊な加工が必要な為、作れる人物は少ない。希少な薬草で、数十年に1度も見つからないこともある。生えている場所で名前や見た目、効果も少しずつ異なっていた。
『天竜草』『水竜草』『火竜草』は確認されている。
いくつか見せてもらった中で気になった物があった。
「イアさん。これは?」
「そいつは『節木《ふしき》』なのじゃ。節くれを作りながら上に伸びていく木でな。中が空洞になっている。風邪の薬にも使うことがあるな」
「まさしく竹だ……。こいつの生えかけを食べたりしないのですか?」
「聞いたこと無いのじゃ。硬いし歯に悪そうじゃぞ?」
筍を食べる文化は無いのかな?
こいつは欲しい、というかメンマが欲しい!
ニンニク、メンマ、うっ頭が……。
「欲しいなら、この国の南側にある山近くだぞ。そのうち行ってみると良いのじゃ」
良いことを聞いた。
「必ず行ってみます!」
「う、うむ。そうすると良い」
ちょっと引かれてしまったな。
だけど、メンマは見逃せないぞ。
その後も色々と見せてもらうと、思ったより見逃していた薬草が多いと気づく。
次、森に入ったら今までの倍以上見つけられる気がするぞ。
さすがに1日では覚えられないので、少しずつ覚えながら、植物以外はまた後日教えてもらうことになった。
「ところで気になっていたのじゃが。その服……」
「ん? 作務衣のことですか? 自分で作ったんですよ」
「どこかで見たことあると思ってな?」
思案顔で作務衣を観察している。
「いやぁ? 俺以外着てる人いなかったですよ? 故郷の服だしなぁ」
「この国のどこか……。確か人はあまり居なかったのじゃ。んー。これ以上は今は出て来ないのじゃ」
「そうですか。まぁ、同郷の人が来てたんでしょうかね?」
「うむ。ところでどこに泊まるつもりか?」
ちょっと考えてみたが、下手に宿とか探す必要も無いよな。
「村の外でテキトーにですね。ここらの夜も調査してみたいので」
「好きでやるなら良いが、ここに泊まっても良いと言っておくぞ」
「ありがとうございます。外が飽きたら来ますね」
雑談も終わり、外に戻る。
そろそろ、バートさんとの約束の日だな。
イアさんにも、明日は王都に行くと伝えておく。
「メサ。オスク。いくよー。」
2匹とも地面に何かしてたようだが、俺の声で一緒に戻る。
______________
「ししょー! ノールさん帰っちゃいました?」
「ついさっき行ったぞ」
「間に合わなかったかぁ。薬草採取頼まれたんだけど……。急ぎじゃないから良いか」
「それくらいなら言っておくのじゃ。何を頼むんじゃ?」
「パワーマッシュです」
「今日教えたやつじゃな。次来た時に言っておこう」
言い終える間際、少し考え出した。
「ふと思ったのじゃが、エリスはノールの着てる服見たことあるか?」
「ノールさんの服? あれって遺跡から出てきた古代人の服ですよね。あんなの着てるから最初は学者さんかと思いましたよー」
「そうか! 遺跡の服か……。どうりで見覚えあるわけじゃ。同郷とか言ってたが、……服が似てだけか? まぁ、良かろう。今日もシチューなのじゃ」
「やったー! 最近多くていいですねー」
「今日はノールが、シチューに合うと芋を持ってきてな。『じゃがいも』とか言ってたな、芽と緑の皮を取ればうまいらしいぞ」
ピーちゃんもシチューは好きなようだ。
アホーアホーと2人に向かって鳴いている。
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