サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道

コアラ太

文字の大きさ
64 / 165
4章 国の波乱

第63話 ニールセン探索者

しおりを挟む
 翌朝、いつも通り早く目が覚めたので、孤児達の畑を手伝ってやった。
 種類も増えて充実しているな。
 桃もいくつか取れたので貰っていく。
 それが終わったら軽く棒術と魔術の練習だな。
 以前よりも様になってきているな。
 食事が充実しているからか、筋肉も魔力もついているようだ。
 さて、俺はギルドに顔出しに行こうかな。



 探索者ギルドは以前と変わりないようだ。
 扉を開けて中に入ると、早くから依頼を探す同僚達がいる。
 みんな必死に探しており、こっちには目を向けない。
 昔から影が薄い方だから、こういう時はあまり気づかれないんだよな。
 注目されるのも好きじゃ無いから得してるんだよね。
 軽く辺りを見回してカウンターを見ると、いたいた。

「セルジオさん、お久しぶりです」
「ノールさん、お久しぶりです。7級になられたと伺っています。本日は依頼の受注でしょうか?」

 相変わらずの渋めイケボイスだな。

「いえ、一応戻った報告ですが、すぐに出立すると思います」
「それは残念です。ノールさんには受けていただきたい依頼もあったのですが」
「ちょっと時間が無いですね」
「仕方ないですね。そうそう、あなたが出てから面白い新人が来ましてね。今回も私が担当しているのですが、採取が上手なのですよ。数日前に7級試験を受けてたので、もうすぐ戻ると思いますが」

 話していると、大きめの音を出して扉が開いた。

「彼らですね」

 若手の有望株かな?
 まだ15歳くらいじゃないか?

(あいつらもう中級かよ。)
(こんなに早いのはいつぶりだ?)
(さぁな。だが、今は優秀な奴がいくらでも欲しい時期だろう。)
(俺らも気合い入れて取り組むとするか。)

 周りの声を聞くと、かなり優しい雰囲気になったな。
 俺の時はもっとギスってたと思うが。

「8人いますけど、あれ全員ですか?」
「いえ、あの中の4人ですね。他は別のチームですよ。私が担当しているのは、『ブルーオルファン』と名乗っています。ノールさんの知り合いだと聞いてますよ」

 え?
 あんな子達いたっけな。
 そう考えてるとこちらに向かってきた。

「「兄ちゃん、久しぶり!」」
「やぁ、久しぶり。元気にしてた?」

 とりあえず話を合わせておこう。

「兄ちゃんが出て行ってからも、修行続けてたんだぜ。後で手合わせしてくれよ!」
「おい! 話したいのはお前だけじゃないんだぞ! こっちも世話になってたんだ!」
「じゃあお前も手合わせしてもらえば良いじゃ無いか!」
「それもそうだな」

 元気な子達だが、俺は強く無いから他の人が良いと思うぞ?
 そこでセルジオさんが間に入ってきた。

「ベン君、中級試験の報告を済ませなさい。ジャン君、君も早めに終わらせるんだ。その後でも時間はあるだろう」
「「はーい」」

 セルジオさんの言うことは素直に聞くようだ。

 報告が終わった後、話してみるとブルーメンの卒業した孤児達だった。
『ブルーオルファン』はベン君、他に少年2人と少女1人がいる。
 このギルドで俺の名前を出したら、セルジオさんが担当になってくれたとか。
 薬草系の依頼も多くこなしていて、教えたことが役立ったようだ。
 そこでオーインに言われたことをふと思い出す。

「そういえば、オーイン達から伝言なんだけどさ、一度ブルーメンにきて欲しいってさ。なんでかは知らないけど」
「来てくれってんなら行くよ。仲間だからな。それより今は手合わせしてくれ」
「私も!」
「俺も!」
「僕も!」

 そんなに期待されてもねぇ。

「いやぁ。俺ってそんなに強く無いから他の人が良いんじゃ無い?」
「ここらの人って棒術使う人少ないのよ」

 そうなのか?
 便利なんだけどね。

「俺は徒手が見たい」
「徒手は見せたことあったっけ?まぁ、期待はずれでもガッカリしないでくれよ?」

 そう言ったところでふとさっきの子達が気になった。

「さっきの子達はまだ戻ってこないね?」
「あいつらの担当、ちょっと煩いんだよね」
「「「ねー」」」

 その言葉にセルジオさんが反応する。

「それは大事なことを伝えているからです。話をしっかり聞いて、理解できることも評価のうちですよ?」
「「「「はーい」」」」

 そういうことなら。

「先に訓練場に行っとこうか」

 そう言って地下へ向かう。
 地下へ着くと、他の探索者達もいた。
 そこでかすかに話し声が聞こえる。

(あいつら、有望ルーキー達じゃないか?)
(本当だ。一緒にいるのは?)
(さぁ?)
(あいつ草取りだよ。)
(え?あいつが?子供達に教えてもらうのか?はは!)
(まさか!?でも草取りだしな。)

 俺が教える方なんだ、申し訳ない。
 強く無いからあんまり見ないでくれよ?

「じゃあ、みんなの棒術を見せてくれ」

 みんな突きが鋭くなっている。
 払いと叩きもブレ無く出来ている。

「棒術はそれをずっと続けるのが良いよ。だんだん無駄が無くなって、威力が増していくんだ」

 そう話していると、さっきの子達が降りてきた。

「ジャン! 遅かったな。もう始めてるぞ!」
「くっそ! 俺たちも見てくれー」

 混ざってくる。
 地下に降りる時に、ベンに聞いていたが、ジャン達は孤児院の子達だった。
 子供達って1年見ないとすぐ大きくなるから、わからなくなるんだよな。
 うん。

 ジャン達も同じレベルなので、ベン達に言ったことを繰り返す。
 そこで試しにと突きを見せてあげる。

「こう真っ直ぐ構えて、滑るように体重移動して突く」

 俺が突くと少し風が舞った。

(やっぱ草取りか。)
(全然威力無さそうだな。)

 そんな程度かと、興味なさそうに去っていく。
 俺はそれを見て、やっと落ち着けた。

「なんで、そんなに砂埃が立たないの?」
「反復練習かな? 無駄が無くなると風も起きないんだ。俺もまだまださ」
「マジかよ。威力上げようとして思いっきり風出してた。」
「それも間違ってないよ。ただそれだけの威力が欲しいなら、鉄棍作れば良いだけじゃない?」
「確かに」
「じゃあじゃあ! 次は徒手!」

 そう言って各々が動きを見せてくれた。

 力強く体当たりしたり、べた足で殴る者、フットワーク軽くボクシングする者いろいろだった。
 少女達は力が無いから苦手なのか、あまりやらないと言う。
 何を教えたものか。

「今日しか時間無いから、崩拳だけかな。ちょっと見ててね」

 腰を沈めて打つ!
 丸太に寸止めで見せてあげた。

「ただ殴ってるだけじゃないのか?」

 答えてあげよう。

「そうだよ」
「なんだよそれ! もっとすごい技とか無いの?」
「無いね。あったら俺が知りたい。だけど、これもちゃんと技だよ。今度はわかりやすく、ゆっくりやるよ」

 もう一度型を作って説明する。

「腰を沈めて、体の回転と踏み込む力を、拳に伝える。棒術と同じで無駄を無くすんだ。これを続けてダメなら他の人に習いな」
「ちぇっ」
「まぁ、続けてみよう」
「「「「そうだな」」」」

「さて、女の子達に教えるのは、緊急時の撃退法かな」
「あ、何も無いかと思ってた」
「何かあるだけラッキーね」

 さいですか。

「こっちも難しく無いよ。ただ音がすごいのと、やり方によってはかなり痛い」
「え? 痛いのはちょっと」
「私も痛いのは嫌ね」

「まぁ、言ってしまうと究極のビンタだね」
「それなら良いかも」
「私も」

 ころころ変わる子達だな。
 まぁ、見せてみよう。
 丸太の前に立って構える。

「大事なのは相手に痛いと思わせることだ。通常は手の平だけでビンタするが、腕も使って広い面積に痛みを与える。俺は慣れてるから良いけど、皮製で長めのグローブをつけても良いかもね」

 腕をブンブン振りながら慣らす。
 右腕を目一杯後ろに振りつつ一歩前へ、腕の内側から手までを貼り付けるように叩く。
 ピッシャーン!
 甲高い音が鳴り、丸太が震えていた。

「何今の音」
「腕もげそう」
「音は凄いんだけど、中心部にはダメージが行きづらいんだ。丸太に傷はほとんど無いでしょ?」

 打った箇所を見せてやる。

「本当だ。以外と弱いのかな?」
「ダメージの違いかな。今の技は体の表面にダメージを与えるんだ。人相手だとかなり腫れるかもね?」

 そう説明していると、周りの探索者がみんなこっちを見ていた。
 ちょっと煩かったかな?

「煩くてすみませーん。すごいのは音だけなんで気にしないでください」

(あれはダメな奴だ。)
(食らったら一生残りそう。)


「明日、一緒に皮のグローブ探しましょ?」
「良いわね。行く行く!」
「気に入ってもらえたかな?」
「「はい!」」

 訓練はここまでにして、俺は一足先にギルドを出た。

 今日厩舎に行くって言ったな。
 次は厩舎だ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

もる
ファンタジー
 剣を扱う職に就こうと田舎から出て来た14歳の少年ユカタは兵役に志願するも断られ、冒険者になろうとするも、15歳の成人になるまでとお預けを食らってしまう。路頭に迷うユカタは生きる為に知恵を絞る。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

処理中です...